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imagic  作者: みげるん
第三章 旅立ち編
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第五十二話 信頼に背を押されて

第三章最終話です

やっとこさ…w

 


 俺は今マギロデリアの中を駆け回っていた。

 できるだけたくさんの意見を聞くために。

 だが、結果は芳しくない。


 誰に聞いても「わからない」という答えばかりが帰ってくる。

 誰か一人位知っててもいいだろうに。


 こうしているうちにもイサナは消えて行っているというのだ。

 何とかしなければ。

 俺は最後の手段として師匠とガドルシアさんのところへ赴くことにした。

 おそらくあの二人に分からなければもうどうしようもないだろう。

 俺は覚悟を決めてノックをして中へ入る。



「おお、どうかしたかね?」


「実はーー」



 俺はできるだけかいつまんで今起きていることを話した。

 そして何か解決法がないかを尋ねた。



「ううむ…すまんがワシは力になれそうもない。知識には疎くてな」


「俺も同じだ。成仏を止めるなんざ聞いたこともねえしな」


「そう…ですか…」


「へこんでる暇があったら急いで側にいてやったらどうだ。できることをしろよ」



 その言葉にうつむいていた俺はハッとする。

 確かにそうだ。

 俺はお礼を言って急いで部屋をあとにする。



「ずいぶん優しいんじゃな、鬼のお前が」


「あいつはなんか知らねーが一人で全部重荷を背負おうとしてるからな。見てていらいらすんだよ」


「昔の自分を見ているようで…か?」


「…っせえ」



 そんな会話が閉じた扉の後ろで交わされていたことなど俺は知る由もない。

 俺が慌てて自室の扉を開けると、ベッドには今や全身が半透明になってしまっていたイサナが横になっていた。

 俺はゆっくりと近づき告げる。



「あの…さ、イサナ。実は…」


「駄目…だったんじゃな。もうよい。よく頑張ってくれた」



 イサナは俺の口調を察してか、現状を把握したようで俺の台詞を先取りしてきた。

 その声には諦めが滲んでいる。



「俺が最後まで側にいるから」



 そう言って俺はイサナの手に自分の手を重ねようとした。

 だが、俺の手は虚しく空を掻くだけだった。

 触れることすらできなくなっていたのだ。


 俺の脳裏にあの天幕の中での出来事がフラッシュバックする。

 目の前でイサナが消えていっているのに、それを黙って見ていることしかできない。

 途方もない無力感。


 あの時はアクセルという助けがあった。

 でも、今回はそれは起こらない。

 そう考えれば、あの時の出来事は良かったことなのだ。

 自分が何もできなかったとはいえ、結果的に見ればうまくいったのだから。



「蒼、自分を責めるな。少なくとも、妾は蒼に出会えて幸せだったぞ」


「でも…だけど…っ!」


「仕方ない…蒼、よく聞いて。私はーー」


「聞きたくねえよそんなこと!まるで遺言みたいじゃねえか!」



 イサナは否定しようとしたが、俺はその言葉を掻き消した。

 湿っぽいのは嫌いだ。

 それが自分に起因しているならなおさら。



「何が“抗う”だ!偉そうに安っぽい言葉だけ重ねてよ!こんな腕輪(ブレスレット)ーー」


「…?」



 俺は苛立ち、誓いの腕輪(ブレスレット)がまるで自分の不安や怒りを煽っているように感じられた。

 そしてその苛立ちをぶつけるべく腕輪(ブレスレット)を睨みつけた。

 そしてその時、一つの物に目が止まる。

 そうして俺の中に一つの考えが浮かんだ。

 うまくいく確証はないが、このまま黙ってイサナが消えるのを見過ごすくらいなら試してみる価値はある。



「イサナ。俺を信じてくれるか」


「…勿論じゃ」



 イサナは笑ってそう言った。

 この時彼女は不安だったに違いない。

 俺が何をしようとしているかも知らなかっただろう。

 それでも、彼女は頷いてくれた。

 その眼の奥に確かな信頼を覗かせて。

 それだけで迷いの心を吹き飛ばすには十分だった。


 俺が目をつけたのは召喚石。

 任意の精霊や魔物と契約できるこの石なら、イサナを留めておけるかもしれない。

 それにはただの霊が精霊だとみなされなくてはならない。

 そこが賭けだ。


 頼む…!


 俺は祈りながら召喚石に魔力を流し込む。

 しばらくの後、召喚石が光を帯びてきたので魔力の供給を止める。

 そして石を軽くイサナの身体へ接触させる。

 触れないけれど。


 すると、一筋の光がイサナと召喚石を繋いだ。

 そして次の瞬間光が強くなり、まぶしさで視界がぼやけた。


 次に目を開いた時、イサナは忽然と姿を消していた。



「まさか…失敗…?」



 俺は咽び泣きそうになったが、耳に届いた声で冷静になる。



 蒼!



「…イサナ?」



 これはまごうことなきイサナの声だ。

 だが、肝心の姿が見えない。

 まさか見えなくなってしまったのだろうか。



 ここじゃ、ここ!



 相変わらず声だけははっきりと聞こえる。

 いや、聞こえるというより感じると言った方が近いだろうか。



 石じゃ、石!



 石?石なんてここには…

 そう思いかけてさっきまでの自分の行動を思い出す。

 石、つまり召喚石だ。

 俺が恐る恐る自分の腕に視線を下ろすと、透き通るような銀色に輝いている召喚石があった。

 以前には見られなかった現象だ。

 ということは…成功?

 信じられない思いで召喚石に今一度魔力を通ずると、目の前に見覚えのある姿がはっきりと現れた。



「…蒼、ありがとう」


「こちらこそ」



 こうして俺たちは喜びを分かち合った。

 この件で、俺たちは名実ともにお互いを分かり合える本当の相棒(パートナー)になれたのだ。



 少なくとも、この時の俺はそう思っていた。


 それが大きな勘違いだとも知らずに。



 ーーーーー




「…は?」



 今回の件で大きく変わったことが一つ。


 イサナが皆に見えるようになった。

 理由は推測だが、おそらく召喚石で契約されたことで精霊へと昇華したからではないかと思う。

 それが正しいかどうかは定かではないが。

 ともかくこれで全員のしがらみは無くなり、出発が可能になったのだ。


 それならば長居する理由はない。

 ということで翌日はそれぞれの準備、それから挨拶に回ることになった。

 仲の良かった生徒は勿論、お世話になった先生や街の店主などにも。


 そして更にその翌日。

 遂に出発の朝が来た。

 何人かは見送りにまで来てくれたようだ。

 ロイ、ルナ、ガドルシアさん、副長だ。



「僕らはここに残るけど、頑張れよ」


「ええ、また皆で…あ…」



 ルナが言いかけて途中で言葉を途切れさせる。

 あいつのことだろう。



「大丈夫だよ、あいつも連れて帰ってくるから。そしたらまた皆で色々しよう」



 俺の言葉に二人は大きく頷いた。

 次に、副長が声をかけてくれる。



「おそらくまた会うこともあるでしょう。その時は所属団体が違うかもしれませんがね」



 苦笑しながら副長はそう言った。

 俺たちも笑って握手を交わす。


 最後に言葉をかけてくれたのは校長だ。

 何だか今生の別れみたいになってんな。

 別に帰ってくるつもりなんだけど…。

 まあいいか。



「これを持って行きなさい」



 校長が差し出したのは小さな水晶だった。

 俺はこれによく似た物をあちこちで目にする。

 そう、簡易型連絡用魔水晶だ。

 設置型より性能は劣るが、持ち運びには便利なことこの上ない。

 何かあったら連絡するように、と校長は連絡先もつけてくれた。



「頑張れよ」


「…はい」



 校長の言葉はとても短く、それでいて重い言葉だった。

 ちゃんと伝わる、それだけで十分な言葉。



 こうして俺たちはマギロデリアを後にしたのだった。




ここまでお付き合いありがとうございます

やっとひと段落です^ ^


これから蒼たちがどのように成長するのかを暖かく見守って頂ければと思いますm(_ _)m



ちなみにこんな街、場所を出して欲しい!なんて案があれば感想などでいれてもらえるともしかしたらその中から熟考した上で使わせていただくかもしれません!


よろしければ!



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