第四十六話 譲歩
少し遅かったですかね…?
フフ…これで何とか体裁を保つことができそうだ。ずいぶん前から探していたが愛娘フィオナをようやく見つけ出す事ができた。
街中で見つけた時は逃げられてしまったが…近衛兵団には敵わなかったようだな。
ところで…後から二人男がついてきているが誰だ?まあ正直どうでもいいのだが。つまみだしてしまおうか?…いや、一応確認はしておこう。
「…よく戻ってきたな、フィオナ。ところでそちらの二人は?」
「別に僕は戻ってきたわけじゃない。二人は友達だ」
高圧な態度で応答するフィオナ。生意気な、少し黙らせてやろうか。
だがまあ何をしようと所詮は小娘。どうせ私には何もできんのだ。ならば寛容な心で接するのも大人の余裕と言えるだろう。
「ふむ、戻ってきたのでないのなら何をしに?」
「あなたに決別を言い渡しに」
面白い冗談を言う。連れてこられた分際で何を言っているのだろうな。
「戯言を…私がそれを許すとでも?」
「あなたの意志は関係ない。私が勝手に出てゆくだけだから」
なぜこんなにも当然のように話しているのだ、この娘は。今の自分の立場を分かっていないのだろうか。近衛兵に連れてこられ。私の目の届く屋敷の中に不用心に入り込み。その上で出てゆくと言う。全く的を得ない発言だ。…もしかするとその友人たちとやらが強いのだろうか。護衛か何かか?いや、それほど強そうには見えんな。我が軍にかかれば取り押さえることは造作もないだろう。
「この屋敷から私が出すわけがないだろう」
「僕たちを止められると思ってるの?」
「そちらこそ三人で足りるのか?」
「十分」
自信満々にフィオナは言いきる。
では本当にそれだけのためにここへきたとでも?
「クッハハ…面白いな。たかがそれを言うためだけにリスクをおかしここまでくるとは…つくづく馬鹿な娘だ」
「それと、娘って言うのもやめてくれる?僕はもう少し自分のやりたいように生きたいんだよ。だからこの家とは縁をきる」
「…その縁をきると言っている家のことを忘れたのか?ここは有力貴族テオライズ家だぞ?お前たちが暴れたと言えば国が敵にまわる。出国などできるわけがないだろう!そのお友達共々な!」
ここで初めて今まで毅然とした態度だったフィオナの表情が揺らいだ。今の今まで忘れていたようだな。私の権力を甘く見過ぎだ、馬鹿め。とりあえず勝手に逃げられないよう監禁しておくか。
「全くもって滑稽だ。だから何をやっても駄目なのだよ。むしろ育ててやる私に感謝することだな、愚図が!…そうだ、そこの二人。どうせ護衛か何かだろう?私の方がいい値を払うがどうだ?」
その瞬間、それまでずっと黙りこくっていた男二人が怒りの表情を見せた。
ここで私は何故かこの二人を恐れてしまったのだ。だから思ってしまったのだ。
なんだ、関係ない二人を巻き込むとそれはそれで面倒だな。ふむ。ここは一つ希望を見せておいてやるか、と。
「しょうがないな…分かった。君たちの熱意に免じて一つ条件をやろう。これをクリアすれば無事私とも縁を切れる。どうだ?」
半分焦りながら私は提案する。くいつけ!そして我が策に落ちろ!
「…分かった」
馬鹿め!内容も聞かずに了承するとはやはり馬鹿の極みだな!戻ってきた暁にはついでにおまけ二人も含めてもう少し賢く育てなければ…
「よし、では内容を説明しよう。ここ最近一つの盗賊団の活動が活発になっていてな。手を焼いているのだ。その盗賊団を討伐してきて欲しい。簡単だろう?」
「それだけ?」
私が頷くと、三人で何やら話し合っているようだ。
フィオナがこちらに向き直ると、了承の意を示した。私はふと気づき、ここで追加条件を出す。
「ああ、勿論ここの三人でやってくれて構わんぞ。だが、四人以上は駄目だ。それが破られるなら今回の話はなしだからな」
しぶしぶを言った風に首肯するフィオナ。もっと強い専門職の奴らに依頼でもされたら敵わんからな。これで我が家の地位は安泰だろう。
私は安堵のため息をつき、フィオナたちを見送った。
ふふ、例の盗賊団は精鋭の近衛兵の一部隊ですら手を焼く厄介者なのだ。ただ腕に自信がある程度じゃ倒せんのだよ。それも三人だけときた。
フフ、泣きながら謝ってくる日が楽しみだ。
ーーーーー
何だ、あいつ。
くそ腹立つな。
フィオが愚図だと?笑わせるな。どれだけ凄いか親のくせに分かってないのか。
殴ってやろうかと思ったわ。
「フィオ、あいつのいうことに従う必要ねーぞ?ああ、でも犯罪者で国を追われたりはちょっと嫌か…」
俺が一人で自己完結しようとしていると、フィオはそれを否定した。
「僕はいいんだけど、二人を巻き込んじゃうからね…」
なんてことを言い出した。またそんなこと言ってんのか、こいつは。
だがまあ例の条件をクリアすればいいってところまできたんだ。…少々裏がありそうだが、まあフィオもいるし大丈夫だろう。
「じゃあ早速乗り込むか?」
乗り込むとは勿論盗賊団のところに、である。するとフィオはまたも素っ頓狂なことを言い出した。
「それはそのつもりなんだけど…今回もできるだけ僕一人にやらせてくれない?二人はサポート位で」
「はぁ!?」
「でもでも、盗賊団だよ?一杯いるんだよ?」
紅も驚きながら確認をとる。だが俺たちの心配をよそにフィオは、
「一応僕もランク10魔術師だしね。二人にもちゃんと戦い見せておこうと思って」
そう答えて妖しく笑うのだった。
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