第三十八話 その理由
色々立て込んでて更新遅れました
すみませぬm(_ _)m
凄まじい。
二人の戦闘は正にその一言に尽きるものだった。目で追うのが精一杯というところだ。
ヴァルガンの動きも先程とは比べものにならない程だが、アクセルさんの動きもそれに勝るとも劣らない。実力がほぼ拮抗しているどうしだからだろう。
それにしてもヴァルガンさんはどうやってここまでの動きを手にいれたのだろうか。どう見ても魔術師のそれではない。それに今彼が使っているのは杖ではなく、長い斧槍だ。それを縦横無尽に振るい、ヴァルガンと応戦している。何故魔法を使わないのか。
その答えは、もうすぐ知ることになる。
ーーーーー
(なかなか強いな…)
アクセル・ドラグニルは相対する敵を見据えて思った。勿論並の人間と比べたら、ということだが。
先程ギリギリまで見ていたが、ガドルシアのお気に入りのあの小僧は正直弱すぎると彼は思っていた。
だがこうして戦ってみるとそれは見当違いだと分かったのである。この目の前の男は、強い。ヴァルガンが手加減していたとしてもこれとランク5であそこまで渡り合っていたというのなら、大したものだ。そう認識を改め、ガドルシアが気に入るのも分からんでもないと感じていた。
この時アクセルの頭の中はヴァルガンを倒す戦略で一杯…なんてことはなく、むしろ戦略に関して何も考えていなかった。
臨機応変。
戦場では何が起こるか分からない、というのが傭兵である彼の持論であった。そしてそのことが彼を傭兵たらしめていたとも言える。
だがそれは理由の半分であり、もう一つの理由は自分は絶対に負けないという自負があったからである。
歴戦の猛者というものは考えるより先に体が反射的に動くものなのだ。
そしてアクセルも例外なくその通りであり、ヴァルガンの怒涛の攻撃を全て奇跡とも言える反射で受けきっていた。
そして、しばらくの間金属音が鳴り響いていた天幕の中から唐突に音が消えた。両者が距離を取り、そして。
間。
「どうした、終わりか?」
「そうやって私の体力切れを待っているのでしょう?」
「…ばれたか」
アクセルは本当は狙いなど何もなかったのだが、相手の勘違いに便乗することにした。現金な男である。
「今度はこっちから行くぞ」
「…何故魔術を使わないのですか?」
「…あ?」
ヴァルガンの言葉にまさに飛び出さんとしていたアクセルの動きが止まる。その質問の答えを聞こうと、ヴァルガンだけでなくソウやコウの視線がアクセルへと集まっていた。別に答えずにこのまま戦ってもいいのだが、ここまで注目されると無視するのは気が引ける。そう考えたアクセルはあっさりと疑問に答えた。
「別に…気分の問題だが」
「「「は?」」」
予想外の答えにアクセルに注目していた面々は間抜けな顔を晒す結果に終わった。だが、No.1魔術師が魔術を使わないのは気分の問題だ、という理解不能な事実に言葉を失うのは当然だといえる。逆に納得の顔をしろという方が無理な話だ。
「気分なんて…貴方は魔術師でしょう!?」
「別に魔術師なだけじゃねえよ」
「…?」
「俺は魔術師であり、剣士であり、銃使いであり…きりがねえがそういうことだ。面倒くせえからまとめて傭兵ってことにしてるが」
「ですが貴方の称号は…」
「俺は世界各地を回ってあらゆる戦闘手段を学んだ。それこそ拳闘でもなんでもだ。戦いでは何が起きるかわからない。その過程でマギロデリアにも寄った。それだけだ」
ではなんで他の国や施設の称号が残っていないのか、という疑問が残る。それをヴァルガンは口に出そうとしたが、自分で気づいたアクセルは先を続けた。
「なんでマギロデリア限定なのかって?そりゃ、ガドルシアと仲良くなったからに決まってんだろ」
決まってねえよ!と突っ込みそうになりながらも耐えたソウがため息を漏らす。この調子だと数々の伝説も本当かもしれない。ソウはそう思い始めていた。
アカデリアNo.1の魔術師がまさかこんなぶっ飛んだ人間だとは誰も思うまい。誰もが呆れていいやら驚いていいやら困っているのを他所にして、アクセルは話は終わりだとばかりに武器を構える。
戦闘の再開であった。
ヒロイン不在ですね




