第二十九話 再会と投合
やっと初期設定からいたキャラがだせた…
「ソウ…なのか…?」
突然すぎて訳が分からない。
敵国の男と殺し合いをしていたら相手は俺の名前を知っていた。
どういうことだ?
今は開けた場所にいるので顔ははっきりと見える。確かに見覚えはあるが、思い出せない。
だが、その疑問は一瞬で解決されることになる。
俺が男を上から下まで見ていると、俺の視線は一点で止まった。
奴の手首だ。
その手首には。
赤い龍の装飾がされた腕輪がはめられていた。
そう、俺と同じ。
「まさか…コウ…か…!?」
昔別れた幼馴染に今、再会したのであった。
ーーーーー
コウ・スメラギ。
彼こそ、ソウと共に幼少時代を過ごした親友である。
否、親友というよりは家族であろう。
共に食べ、共に住み、共に寝た二人の間柄はそう表現するのが最も正しいと言える。
彼らが育った施設では、全員がスメラギかシラヌイの名があてがわれ、家族だということになっていた。
そんな家族と再会した二人は、戦争中にも関わらず話に花を咲かせていた。
「なつかしいな、おい!」
「はは、ソウは随分荒っぽくなったねえ」
そう言い合って俺とコウは笑いあう。懐かしすぎてつい話し込んでしまいそうになったが、戦争中なのを思い出す。とりあえずヴェーリエ側の考え方も聞いてみようと思い、コウに今回の件について聞いて見ることにした。
「とはいえ、コウ。今回はどう考えてもお前らが悪いぞ?そっちはどういう考えなんだ?」
その言葉に、コウは表情を曇らせる。そして言いにくそうな表情で現状を説明してくれた。
「ヴェーリエは完全絶対王制なんだ。だから、今回の件も王の発案。流石に下級兵士には嘘でごまかしてるみたいだけど…」
話を聞くところによると、雑兵には士気に関わるため名目上の嘘ーーマギロデリアによこした書状と同じ内容だーーをでっちあげ、コウ達七幹部以上の者には事実がつげられているらしい。ちなみに、ドルマとピノも七幹部の一人だ。
「…本当はね、反対派の幹部達もいるんだよ」
一部の戦闘好き、あるいは過激派を覗いて大体の幹部達は反対していたらしい。が、王の意志は国の意志だというヴェーリエの信条により、従わざるを得なかったそうだ。
「ってことは、その王を倒せばこの戦争は終わるってことか?」
「まあそんな簡単な話じゃないだろうけど…理屈上はそうだね」
難しいだろうけど、と続けるコウ。
俺は考える。
望んでもないのに殺し合いをさせられている人がいる。
それどころか嘘で振り回され、真実を知らぬまま殺し合いをさせられている人もいる。
これが許せるか?
ノーだ。
だが、だからといって単騎で王を討ちとれる力が俺にあるか?
ノーだ。
そして俺はコウを見据える。
「この戦争は、間違ってる」
今の俺には、仲間がいる。
そして、最も頼れる家族が目の前にいる。
「覚えてるかよ、コウ?俺たちの誓いを。…“心の声に従って”」
「…“運命に抗え”、か。国に背くことになるけど、家族の頼みならしょうがない、な」
「この戦争を、終わらせよう」
そう二人で決めた後、コウは付け加えるように衝撃の言葉を告げた。
「そういえばその、浮いてる女の子はどちら様?」
「ああ、忘れてた、こいつはイサーーーーえ?」
コウの目は、確実にイサナを、幽霊である彼女の姿を捉えていたのであった。
ーーーーー
「…楽しかったんだけどなあ」
「あん?あんたそんなセンチなこと言う人だったっスか?」
「いろいろあるんだよ」
「まあ、遂に出会ってしまったんスから。もう、止まれねえっスよ」
「…ああ」
長髪でローブ姿の男と短い髪の毛を全て後ろへ流している男。
二人の声が静かに響く。周りには、数十人の屍が倒れていた。
「俺たちは、傍観するだけだ」
二つの影が、闇へと消えた。




