第二十六話 ギャップ萎え
ルナはかませ(小声
「なんであたしのところなのよ…」
ルノア・リリックはその長い髪をいわゆるツインテールにまとめ、多くの人が見て『凛々しい』という感想を抱くだろう姿でそう呟いた。
目の前には大男。
か弱い乙女が相対するには少々荷が重い相手である。
「…己もこの戦争に乗り気ではないのでな…心苦しいが…」
「声小っさ…」
この男、見た目に反して声は小さく寡黙というギャップがあるのだ。
余談だが、後日無謀にもルノアに「貴様はあいつと中身入れ替えた方がいいんじゃないか?」と言ってしまい、案の定ボコボコにされた男がいる。誰とは言わないが。
閑話休題。
「…己は…ドルマ…。…恨みはないが…死んでくれ…」
「いやよ、バカじゃない?」
「…」
かくして、ルノアとドルマの戦いは幕を開けたのである。
先手をとったのはルノアだ。ルノアの武器は、杖と兼用している鞭だ。
その鞭を、一撃で決めるとばかりに火魔法を纏わせて最大限に振るった。
それを真正面からくらったドルマは、大きな火傷とともに致命傷とはいかずとも並以上のダメージを負うーーー筈だった。
しかし実際はドルマの体には少し痕があるものの、その顔には余裕の笑みが浮かぶほどの軽傷だった。ほとんどノーダメージと言っていいほどだ。
それを見たルノアはなす術もなく戦意喪失…なんてことはなく、
「はあ!?何なのよ!頑丈すぎでしょ!」
と、怒鳴る始末。
ここで逆ギレする辺りは実にルノアらしいと言える。
ここでルノアは戦術を変えた。
鞭の特徴を最大限に活かした戦術。周囲の木や突起など、あらゆるところを鞭で引っ掛け高速移動をしながらヒットアンドアウェイを繰り返す。最善の選択と言っていいだろう。
彼女の誤算はただ一つ。
ヒットアンドアウェイで倒しきるには、ドルマの体は頑丈すぎた。
しかもドルマは物言わぬ銅像などではない。歴戦の猛者だ。
当然ルノアがとった戦術のような相手とも戦った経験もある。きっちりと対応できることは言うまでもないだろう。
決着は一瞬だった。
ドルマは闘気を大剣に十分に纏わせ、一気に振りかぶった。
「…ぬぅぅ…『破壊の鉄槌』…!!」
その一撃は大砲の如し。地を抉り、砂を巻き上げ、通り道にあるものをすべて巻き込み、ルナの元へと一直線に進んでゆく。ギリギリで回避できるかに思われたルノアの体は、若干引き込まれるようにしてその一撃の餌食となった。それだけにとどまらず、ルノアもろとも木々をなぎ倒し、十数メートル進んだところでようやくその勢いは衰える。
そんな一撃をくらった少女の体などひとたまりもない。
動けなくなっているところに、容赦なくその影は近づく。
「…悪いな…」
そうして振り上げられた大剣がルノアの命を刈りとろうとしたまさにその時。
「『爆発』!」
颯爽とソウが登場したのだ。
まるで狙っていたのではないかという絶妙なタイミングだが、本人はいたって真面目だった。
「大丈夫か、ルナ」
その言葉に、張り詰めていた気が崩れた。安堵に、涙がこぼれる。
いかに強気なルノアといえど、死は怖かったのだ。
心配そうに顔を覗き込んでき英雄に、乙女が焦がれてもそれは仕方ないだろう。
もともと気になっていた存在であったが今回の件でそれは確信へ変わった。
『気になる存在』から『焦がれる存在』へと。
もともと顔は悪くはなかったのだ。今ルノアには3割増しに見えていることだろう。
そんなことは露知らず、ソウはドルマへと向き直る。
第二ラウンドが始まった。
ーーーーー
いやー、危なかった。
なんか神がかり的なタイミングで間に合ったが、ロイに続いてルナまで傷つけるとこだった。
それにしても頑丈すぎるだろう、あいつ。先刻の攻撃もきいてないみたいだし。
だがまあ、新しい杖の試し撃ちには丁度いい。
その手には漆黒の杖。
ゼギさん渾身の一振りだ。
魔術が比べ物にならない程強化されているのが分かる。
それに俺専用のおまけ機能もつけてくれてるみたいだし。
思う存分この力を振るおう。
傷つけられた仲間のために。
「悪いがお前は…実験台だ」
ロイの分とルナの分はきっちり仕返しさせてもらおう。
今更ですが魔術と魔法という単語に差はほぼないです
単に言い回しの問題ですのでw
ざっくりした設定ですみませんm(_ _)m




