第二十三話 怪獣と懐柔
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「ふおおぉぉぉ……!」
戦争前にも関わらず、ここに目をキラッキラに輝かせている男が一人。
そう、何を隠そうこの俺である。
「これ全部セルシアの親父さんが作ったの!?」
道中色々話したのだが、彼女の名前はセルシア・ルウと言う。店を離れなかった親父さんと二人で武具屋を経営しているらしい。
話し込んでいた結果、言葉が崩れたのは仕方ないだろう。
決して興奮でとっさに言葉が崩れたわけではないのだ。
今俺の目の前には杖や防具、剣まで色々な武具が並べられていた。素人目に見ても、一つ一つが最高の逸品であることが分かる。
「ええ、凝り性なこともあって。それなりに値ははるんですけどね」
予想をはるかに上回る品々に圧倒されていると、噂をすればなんとやら、親父さんが出てきた。
「おう、セルシア帰ったか。早く店の奥の倉庫に素材をーー…誰だてめえ」
と思ったらすごい勢いで睨まれた。ぶっちゃけさっきの悪漢(?)の二人より確実に怖い。
「お父さん!私を助けてくれたからお礼も兼ねてって来てもらったんだから!一応お客さんでもあるんだよ?」
「どうも、ソウ・スメラギです」
「ああん?助けただあ?」
それからしばらくの間父と娘の問答が続いたが、そこは割愛させていただく。
「で、何の用だ」
やっと溜飲を下げた親父さんがぶっきらぼうに聞いてきた。
え?まだ怒ってるじゃないかって?
いやいや、すごい柔らかくなったよ、うん。さっきまで胡散臭いだの目的はなんだだのぶっ殺すぞだの…心が折れそうだったよ。
最後のは流石におかしい…
「別にこれと言った用があるわけでは…あ、そういえばここの武具って全部親父さ」
「オイ!俺の名前はゼギだ!」
「…ゼギさんが造ったんですよね?」
「…おう」
「めちゃくちゃかっこいいっすね…!」
その後からゼギさんの態度が目に見えて軟化した。
あれ、意外とチョロいぞこの人。
その後しばらく武具について話し合ったのだが、これが予想以上にアツくなってしまった。気づいた時には時間が迫っており、俺がアカデリアへ変える時間になっていたのである。
「…おめえ、なかなか見所あるじゃねえか。それに…剣も魔術もなんてぇ欲張りな野郎だ。…嫌いじゃねえがな」
「ゼギさん…!」
これ以上は俺と老爺のフラグが立ちそうなのでやめておく。俺にそんな趣味はない。
俺が店を後にしようとした時、ゼギさんが声をかけてきた。
「おい、ソウ。てめえこれから戦争に参加するんだよな?」
「ええ、そうですね。まあ実際に始まるのは明日あたりだと思いますが」
「しかしてめえまだアカデリアの初級杖しか持ってねえみてえじゃねえか」
「まさか…」
「特別に造ってやるよ、てめえ専用のをな。ちょうど客もいなくて暇してたとこだ。3時間後に店に来い」
「ですがお金が…」
「セルシアの礼だ。金はいらん」
…危ねえ。ゼギさんおそるべしだな。本気で落ちそうだったぜ、イケメンすぎる。
何はともあれゼギさんにお礼をいい、セルシアと挨拶をかわしてうきうきしながらアカデリアへ帰還した。
「ただいま戻りまし」
「遅い!」
満面の笑みで帰ってきた俺がワタヌキ副長に叱られたのは言うまでもない。
なんやかんやで時間は過ぎ、俺はゼギさんの店へ出向くことにした。
しかし俺含むアカデリアの面々の想定外のことが起きることとなる。
俺がのんきに店へ行っているまさにその最中。
早くても動くのは明朝だと踏んでいたヴェーリエの軍隊が、重い腰をあげて進軍を開始したのである。
開戦は、もうすぐそこまで迫っていた。
異世界ものだったらこういうのはだいたいドワーフなんですよね




