第二十話 完全無欠の兵団
やっと二十話です!
「ロイ…うっ!」
「ひどい…」
皇居にもどって俺たちが目にしたのは見るに耐えないロイの姿だった。
進行は本当に遅いようだが、ロイの腕は確かに毒に蝕まれていた。
左腕の肘当たりまで真紫になっている。相当強い毒らしい。
「早くマギロデリアに戻って治癒術師の先生に…」
「…無駄じゃな。やめておいた方がよいぞ」
声のした方を見ると、忘れていたようにイサナが立っていた。
「なんでだよ」
ロイの状態を見て焦っていたのと、人を殺すという極度の緊張状態の名残もあいまって、俺は苛つきながら言った。
「妾はこの周辺、マギロデリアは当然見回っておる。しかしそのような毒を治せるような治癒術師はおらんかった」
「お前が知らないだけって可能性は?」
「…まあ無駄足を運んでその毒を進行させることになっても良いのなら妾は止めぬが」
その言葉が決定打だった。
確かにイサナは今日あったばかりのロイのために親切心で教えてくれたのだ。従うべきだろう。
ではどうするか。俺は一つの結論しか思い浮かばなかった。
みんなも良い案がなさそうだったので、告げることにする。
「……切ろう」
みんなも薄々そうするしかないと気づいていたようで、反論はなかった。
切った後のことを多少打ち合わせして、作業に入る。
っとその前に。
「ロイ、壊死部分を切断しようと思うんだが、いいか?」
「仕方ない…だろう…任せる…」
本人の了承も得たところで、早速切断に入る。
まず俺の雷魔法で弱い電撃を流し、麻痺させる。麻酔の代用みたいなものだ。
次にルナが持っていた狩猟ナイフのような刃物を熱し、ロイの腕をできるだけ早く切り落とす。
最後にケンタの治癒魔法で傷口を応急処置した後、俺の氷魔法で傷口が悪化しないようにマギロデリアに着くまで傷口を冷凍保存する。
できることはした。
俺達はできるだけ急いでマギロデリアへ戻るのだった。
あ、そういえば戻る直前にカザート皇にびっくりするくらいお礼を言われ、何か困ったことがあったらと連絡先を教えてくれた。
皇族は皆傲慢な奴だというイメージがあったが、認識を改める必要がありそうだ。
ーーーーーー
その頃、ダリエラはーー
「ぐ…死ぬ…」
ヴェーリエの城内へと逃げおおせていた。
非常用の転移魔法陣を使用したのだ。幹部以上の者にしか与えられてない、城への転移を可能にする一度きりの切り札だ。
ボロボロの身体を引きずりながら彼は王への謁見を急ぐ。
「…ダリエラか」
「ハッ…ここに。申し訳…ありません…任務を完遂できません…でした…」
ダリエラは内心恐れでいっぱいだった。
この王には何といえば良いのか、えもいわれぬ威圧感というものがあるのだ。
まさに王だと主張するかのような。
絶対的な貫禄が。
「よい。よくやった。さがれ。…ゆっくり休むがよい」
ダリエラは王の慈悲に感謝した。
だが。
王は情をかけたのではなかった。
情は情でも。
この時王がかけたのは。
非情の方だった。
非情をかけ、手をかけた。
それが彼の掲げる正義だったのだ。
「ありがとうごさいまーー」
お礼を言いかけたダリエラの首が落ちる。
ドサリ、と音をたて倒れる身体。
その後ろに立っていたのは、若い青年だった。
「もー…ゆっくり休めって言ってるじゃないスか」
「ギクか。遅かったな」
「でもこれで正式に任命スよね?」
「…ああ。ようこそ、新幹部よ」
こうしてヴェーリエの幹部以上の者は常に最善、無傷の状態で欠けることはないのである。
ギクと呼ばれた男は王を見据え、そしてニヤリと嗤った。
まだまだですがこれからもよろしくお願いします!
一つ心配なのは伏線を自分で忘れそうで…w
がんばります




