第十七話 不可視
戦闘まではいれませんでした…
次こそは!
「話がある」
ごまかしたりは苦手なので、単刀直入に話をはじめることにする。
その言葉を聞いて真剣な話だと察してくれたのか、三人とも真面目な表情になる。
俺はイサナに聞いた話を皆に話し、意見を求めた。
「ということらしいんだ、こいつが言うことには。皆はどうすべきだと思う?もっとも、どうやってその情報を知り得たのかはまだ聞いていないんだけれどーー」
この際どうやって知ったのかは後で聞くことにしようと思い、まず皆に聞いた。
すると三人は戸惑った顔で顔を見合わせる。そりゃあそうだろう、唐突に信じられないことを伝えられて戸惑うのも分かる。それも情報源が見知らぬ幼女ときた。俺ならまず疑うだろう。
すると神妙な顔でロイがといかける。
「あの、ソウ?話が見えないんだが、それは一体誰が言ったんだ?」
「いや、だからこいつだよ、こいつ」
そう言って俺はイサナを指し示す。どうもロイの質問が的を得ない。
ロイはさらに訳の分からない質問を重ねる。
「だから一体、こいつって言うのは誰なんだ?」
意味が全然分からない。
だが、この後のケンタの言葉は更に俺の予想外の言葉だった。
「俺は前見て不自然に思ってたが、今ので確信した。…ソウ、お前がイサナ?とか読んでる存在が、お前以外には見えないんだよ」
「…は?」
えっと、何言ってるんだこいつは?
見えない?
今ここにいる、このイサナが?
「もう…隠せんの。妾は…幽霊なのじゃ」
イサナは言いづらそうにそう告げた。
幽霊。
つまり。
ケンタが前俺の部屋にきた時、俺は『見知らぬ幼女に土下座する危ない奴』ではなく、『何もない空間に向かって一人で土下座している危ない奴』になっていたということになるし、街の人からしたら『街中で幼女を肩車している珍しい奴』ではなく、『頭上の何もない空間と会話している危ない奴』になっていたというわけだ。
うわああああああ死にてえええええ!
まあ、後者はともかく前者は危ない奴にかわりはないんだけれど。
そういうことはもっと早く言えよ!とか言いたいことは色々あったけれど、その時やっと俺はイサナがどうやって情報を仕入れ、なぜ俺にしか伝えなかったのかを理解した。
見えないのなら。
何の事は無い、ただ当然のように皇居に入って行けば良いだけの話。
しかしながら。
それを誰かに伝えることは許されなかったのだ。
誰にも知覚されないということがどれだけ辛いことなのだろうか。
だからイサナとどまり続けた。言い換えれば、成仏できなかった。
イサナ成仏できないのはとりあえず今はさておき、イサナが幽霊だという事実はここで一つ重大な問題をもたらす。
「じゃあ、イサナが幽霊ってことはつまり、先生達に説明しても戦力を割いてもらえないどころか信じてもらえないってことか…!?」
「そうなるわね。仲の良い私たちですら半信半疑なのに、大人が信じるとは到底思えないわ」
そんなの手の打ち様が無いじゃないか。でもこのままじゃあマギロデリアがーーー
「俺が行くしかない」
俺は意を決してそう言った。
「やっぱりお前馬鹿なのか…」
「はぁ…そう言うと思ったよ」
「そうね、じゃ早く準備しないと」
三人は口々にそう言った。だってそれ以外に良い方法がないじゃないか。
「誰かがやれば良いことなら他の『誰か』がやってくれるかもしれない。でも今回は違う。俺にしかできないことは俺がやるしかないんーーーん?ちょっと待て。なんでお前らまで準備してるんだ!?」
折角良いことを言ってたのに台無しだよ!何やってんだこいつら!?
「お前とつるんでる時点でもう覚悟済みだよ。ったく…」
ケンタはそう言ってニヤリと笑う。ロイ、ルナも同様だ。
「お前ら…ったくしょうがねえな!足ひっぱんなよ?」
こうして俺たち四人による皇居侵入作戦が実行されることとなった。




