第十五話 忘れられぬ誓い
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「ごめんなさい」
「…ふん。妾を忘れてずっと放置とはなかなかやってくれるではないか」
そう、忘れていたのはイサナの事だ。ご機嫌ナナメである。
「罰として妾のお願いを叶えるなら許してやろう!」
すげえ面倒臭そう…どうしよう…いっそ断ろうかな。
「まあまあイサナ、そんな怒…」
「おーいソウ!久しぶ…」
…バタン。
うおおいケンタこのやろう!なんてタイミングで入ってきやがる!
ちなみに状況を客観的に見てみると、見知らぬ幼女に土下座する俺というとても危ない図が完成する。どうしよう。
ガチャ…
「よ、ようソウ!久しぶりだな!」
その気まずそうな顔はやめてくれ。
「あー、ケンタ?お前何か誤解を…」
「いや、いい!皆まで言うな!俺は何も見てない!うん!」
いや、もう隣にいるから手遅れだけどね?
「誰じゃ」
「こいつは親友のケンタだ。ケンタ、こっちはイサナ」
「えっ…お、おう…お前すごいな…よろしく…」
ケンタが今までになく戸惑った複雑な顔をしている。やっぱ何か誤解してないか?
「あ、ケンタちょうど良かった、これからちょっと出るから付き合えよ」
「え?いいけど…」
「妾も行く!妾の望みは外の世界を見ることじゃ!しばらく一緒に生活するのじゃ!」
「え、まじで言ってんの?」
思ったより大分めんど臭かったが、これも天命なんだろう、諦めることにした。
出るというのは他でもない、ドルーさんのところに行くことだ。長い間待たせてしまったからな、申し訳ない。
イサナはなぜか俺の肩に肩車状態で乗っていた。なぜかびっくりするぐらい軽い。俺がロリコンじゃなくて本当良かったと思う。
その間ずっとケンタが、というより道を行きかう人が微妙な目で俺を見ていた。まるで危ない人を見るような目で。やめて。
「こんにちはー。ドルーさんいます?」
「やあ、ソウくん。…遅かったねえ。待ちくたびれたよ、いやほんとに」
「あ、いや、ごめんなさい…」
心なしか笑顔がブラックな気がする。怖い。
「どうも、ケンタです」
するとケンタが気を利かせて名乗り出た。珍しく空気を読んだ発言だ。
ドルーさんは相変わらずの物腰ですぐに仲良くなっていた。
「じゃあはい、これ」
「あ、ありがとうございます」
丁重にお礼を言って腕輪を受け取る。
正直素晴らしいできだった。こんなのをタダでやってもらって良いんだろうか。
そのことを聞いてみると、
「うーん、そうだなあ…あ、じゃあ代わりにその腕輪に掘ってあった言葉について教えてよ」
「ああ、これは親友との…約束なんです」
そうだ。昔、今はどこにいるか分からないけれど、親友がいた。心友と言えるほど仲がよかった、親友。
細かい理由は忘れたけれど、あいつがどこか遠くへ行くことになって。大泣きしたのを覚えている。今になってみると恥ずかしいことだけれど。
そんな俺たちが誓い合った、約束。同じ腕輪に同じ言葉を刻んで別れた。またいつか再会することを夢見て。
そこに刻まれた、お互いにどんな障害があっても自分が正しいと思ったことを貫こう、というかっこいいのかただかっこつけただけなのか分からないような言葉はーーー
“心の声に従って、運命に抗え”




