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無名の剣士  作者: むー
第一章
17/31

16

更新おそくて・・・ごめんなさい・・・


 マスターの熱烈な誘いによってオフ会に参加することになった渚だった。


 しかしその内心は複雑なものだった。

 けして安請け合いをしたわけではないし、自分で決めたことなのだから割り切れると思ったのだが、こうやって当日になると……。


「めんどくせぇ……」


 そう思ってしまうのだった。

 行くと言ってしまった手前行くしかないのだが、やはりめんどくさいことに変わりはない。 

 仕方なく準備をして電車に飛び乗ったのだった。


 集合場所はみんなが集まりやすいと言った都心で、自分の家からは二時間近くかかる場所だった。

 あまり遠出をしない渚ではあったが、香奈と遊びに来るときはここを利用したりするので慣れたものだ。


 さすがに人前に出るというだけあっていつものようなラフな格好は避けたが、それでも『ピンクのヒラヒラ』みたいな気合入った女の子の格好ではなく、ジーンズにパーカーと簡素なものだ。

 髪も肩に掛かるか掛からないくらいの短めだから下手をすると小学生くらいの男の子と間違えられるかもしれないが、それでいいと思っている。



(今日は結局15人くらいくるって話だしどうやって逃げるかな……)


 根本的な話になるのだが、喋り方がこんな感じでチャットでも多少柔らかくしてはいるが、同じような喋り方をしているので男と思われているのだ。

「男同士、朝まで飲み交わしましょう」と言われたが、相手が自分の姿を見たらどんな反応をするか大体予想ついてしまう。

 結論、ろくなことがないだろう、である。


 さてはて、そんなこんなで目的地が近づいてくる。

 さすがに逃げることばかりではなくマスターに頼まれたこともあって、戦術論を話すために自分の頭を整理する。


 おおよその目標地点は決まっている。

 今のAOの仕様を考えて新戦術を取り入れることができるのであれば、倍の人数に攻められたとしても耐えることができると踏んでいた。

 実際のところ机上の空論にすぎないが、ソコを目指したいと思っている。


 今回話すのは具体的な動きというよりも、あくまで新戦術のための土台作りといったところになるはずだ。

 そこに至るまでの経緯をざっくりと話、集団戦の意識や陣形の取り方だったりを共有できれば良いと思っている。


 こうして考え事をしているとあっという間に駅に到着したのだった。

 

 集合場所はこの駅の改札を出たところ、ということになっている。

 駅が広く、人も多いので見つけるのは大変かもしれないが、15人で集まる集団はそうそうないだろうから見つからないということも無いだろう。


 そうして、辺りをきょろきょろと見回す渚だった。

 背が低いというのはこういう時に不便だったりする。人垣のせいで探すのも一苦労だ。

 とりあえず一通り見回してみたが、それらしい集団はいなかった。

 時計を見てみると、なるほど。集合時間にはまだ少し時間があるようだ。

 仕方ないので、改札のそばにある柱に寄りかかろうと足を向けたのだった。


 人垣の間を縫って柱まで向かう。

 さすがの渚でもこれだけ密集していると身動きがとりづらいが、それでも人とぶつかるという事はない。

 やっとのことで柱の前に付いたのだったが、先着がいたようだ。

 ふっとその人と目が合ってしまう。


「…………」


 その人物は身長の高い女性だった。

 いや、女性というにはまだ若い、少女と言ったほうが適正だろう。しかも美がつくほどだ。


 目が合った瞬間、驚きに目を見開き、声が出なくなってしまった渚だった。

 それは相手も同じようで、いつも(・・・)よりもしっかりメイクをした美人顔に驚きの表情をつけてこちらを凝視していた。

 「場が凍る」「時が止まる」とはまさにこのこと。と、いってもいいくらい二人の間に静寂が訪れたのだった。

 周りの人も、この二人の異様な雰囲気にチラリと目を向けるほどの空気だ。

 

 驚愕の表情で固まっていた渚が、そこでたっぷり時間を使って何とか復活し、その相手に声を掛けたのだった。


「おい、何でお前がこんなところにいるんだ……?」


 そう聞いて相手もはっと我に返り、答えるのだった。


「え、えっとぉ……その言葉をそっくりそのままナギさんにお返ししますが……」

「オレの事はいいんだよ! オレが質問してんだから先に答えろ!」

「えーっと……なんと説明したらいいか非常に困るんですが……」


 そう言いつつ、本当に困っているようだった。

 相手に何と言ったら伝わるのか逡巡している様子だ。


「もういいわ……。こっちが訊くからそれに答えろよ。いいな?」


 最後のは疑問というよりも、強制的な圧力があったがこの際仕方ないだろう。

 この美少女の歯切れが悪さはいつものことだ。


「お前もしかしてここで、人を待ってるか?」


 本当はもしかしてもいない、直感だがあっているだろう。


「はい……」

「それは大人数、例えば……15人くらいか?」


 例えば、と言っているがやけに具体的な数字である。


「……はい」

「お前何かしらゲームやってるか……?」


 何かしら、といったが訊かなくてもわかっている。


「や、やってます! どうしてわかったんですか? あはは……」


 わからいでか!

 叫びたくなった渚だったが、それを飲み込む。

 

「そ、それは今話題の新作とか、か?」


 言いよどむ渚だった。


「ち、違います!」

「じゃああれか? 昔からある名作とか?」

「えっと……それも違います」

「なら……」


 それ以上言葉にできなかった。

 ソレを訊いてしまったら、この少女と今後どう接したらいいかわからなくなってしまう恐れがあるからだ。


「…………」

「…………」


 気まずくなる二人だった。

 だが、この空気を払拭したのは意外にも相手のほうだった。


「あ、あのぉナギさん? ナギさんはここで何をしてるんですか?」

「…………」

「カナさんも一緒だったりするんですか?」

「…………」

「えっとー……ナギさん?」


 もともと気の強いほうではない少女は、無言の渚にどんどん意気消沈していくのだった。

 こちらも同じく最後の言葉が出てこない感じであった。

 お互いに「相手が何故この場所にいるのか」大体わかっているからこそ、認めるのが恐ろしいのだ。

 しかし、いつもこういう空気を払拭するのが渚だった。

 しびれを切らしたかのように一気にまくし立てる。


「あぁもう!! お前AOやってんだろう!?」

「ひゃ、ひゃい!」


 いきなり怒鳴られて驚いたのか、呂律がおかしくなっている。


「んで、第一サーバーなんだろ!?」

「そ、そうです!」

「所属連合はDT連か!?」

「はいっ!」

「キャラ名はなんだよ!?」

「えっと! LaLiLuLeLuLiLiです!」

「ラリルレルリリ、ルリリ、ルリ、ルリ子かよ!! そうか、わかった! じゃあオレは帰る!!」

「ちょ、ちょっとナギさん待ってくださいよ!」


 最後にバイバイとそう言って本当に帰りそうな渚を必死に止める。

 相手は、朝川瑠璃子だった。 

 長身の瑠璃子を引きずる勢いで帰ろうとする渚と、それを必死に踏ん張って引き止める瑠璃子の図は周りからしてみたら面白いコメディーを見ているようだった。

 奇異の目を向けられる有様だったが、周りのそういう目に敏感な渚はいち早く気づいて、諦めたように瑠璃子のほうへ向き直るのだった。


「なんだよ!?」


 半ばキレ気味になってしまったのも仕方ないだろう。

 そんな勢いをぶつけられた瑠璃子は、いつもであったらゴメンナサイと言って下がるのだが、今回はもう少しだけ粘った。


「ナギさん! ナギさんはどうしてここに?」

「もうわかってんだろ!? いちいち訊くなそんなこと!」

「わ、わたしだって言ったんですからナギさんも言ってくださいよっ!」

「……フ…に…きた」

「え……?」


 はっきり物を言う渚にしては珍しく、ぼそぼそと喋ったのだった。

 近くにいる瑠璃子ですら聞き取れないほどに。


「今なんて言ったんですか……?」


 そうやって訊きなおすが、やはり何を言ってるのかわからない。

 そんな問答を何度か繰り返すが、さっきと同じような展開になる。


「あーもう! 分かって訊いてんだろう!? いいじゃねーかよどうでも!!」

「よくないですよー! はっきりさせましょうよ。ね?」


 体はでかいが子犬のような瑠璃子にしては頑張ったほうだろう。

 一方渚のほうはあーとかうーとうんうん唸っている。


「オフ会に参加しに来たんだよっ!」


 半ばやけくそで叫んだのだった。



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