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無名の剣士  作者: むー
第一章
13/31

12

「おーいカナ。今日は悪いんだが、入れ替わっていいか?」

「どうしたの急に。前に入れ替わったとき『もーこりごりだ!!』って怒鳴るくらいだったじゃん」

「好き好んで入れ替わりたいわけじゃねーんだよ。実験だ実験」

「実験? どういうこと?」

「内緒」

 

 そうして本日のお勤めである学校へ向かうのだった。

 

 さすがに内緒と言われると気になるが、秘密にしておきたいのだろう。

 そう思って香奈は『そのうち教えてくれるだろうからいいかー』くらいの気持ちでいた。

 

 というわけで、道中で見られてないことを確認してからヘアピンを渡す香奈だった。

 受け取った渚も周りを注意して自分の髪に付ける。

 これで大人しくしていれば渚は香奈だと思われ、香奈が黙っていれば渚だと思われる。


「ってことでコレでいいんだよねナギ姉?」

「おいこら! ナギ姉って呼んだらオレだってバレちまうだろ!」

「あっ! やばっ……ってナギね、じゃなかったカナも間違えてんぞ」

「うげ……」


 二人してブハッと笑い合うのだった。

 お互い多少の不安はあるが、これでも芝居っけはある方なのでなんとかなるだろう。


「それじゃあナギ姉、ウチはこっちだからまたお昼にー(ヘマすんじゃねーぞ!)」

「あいよ、んじゃーな(そっちこそ、バレて叱られたりしないでよ!?)」


 そうして入れ替わることに成功したようだ。

 すんなりとA組の授業に参加する……のだが、早くも後悔する渚だった。

 いくら実験したいことがあるとはいえ、やはり授業前に入れ替わるんじゃなかった、と。


(ぐああああああ……暇だ。とてつもなく……)


 ちょっとした実験のつもりだから4限目前に変わればよかったのだが、後の祭りだ。


 ちなみに、渚の成績は、一応、悪くない。とだけ言っておく。


(あーちょっとくらい寝ちゃってもいいんじゃね?

 あぁでも、入れ替わったのバレちまうか……。

 いやいや、大丈夫だろちょっとくらいなら、ほんの5分くらい、

 やっぱダメか……? あ、そうだ! 保健室行けばいいのか、我ながら名案だぜ!

 ってだめだ!! 授業終わったあとにカナの取り巻きがいっぱい来ちまう……そっちのがやばい

 ぬうううううう……!)


 授業中ずっとこんな感じで、うんうん唸っていたのだった。


「――――と、言うわけでこの問題を黒神香奈さん、前に出てやってください」

「ほあっ!?」

「く、黒神さんどうしましたか?」


 数学の女教師がちょうどよく香奈(中身は渚)を指名したのだった。

 脈絡もなくいきなりだったため、心の準備ができてなく、変な声を出してしまった。


(っく! 一生の不覚。カナすまん、今後は『ほあっ』って驚くようにしてくれ……)

 などとテレパシーで送っても返事が返ってくるはずもなく、一人で冷や汗を垂らす渚だった。


「あ、え、えっと……すみません先生。その問題わかりません……」

(う、うまく誤魔化せたか?)

「黒神さん大丈夫? この程度の問題が分からないはずないでしょうに、さっきの奇声といい、どこか体の具合が悪いのですか?」

「い、いえそんな、ことはありません。本当にすみません。分からないんです」

「そう……ですか。まあいいでしょう、もし本当に体調が悪いんだったら言ってくださいね。それじゃあ後ろの子やってくれる?」


 自分の後ろの子が変わりに指名されたのだった。「うぇー私ですかぁ?」と嫌そうに声を上げていた。


(ふぅ、なんとか誤魔化せたか……。すまんな後ろの某さん、今度埋め合わせはするぜ……カナが……。って違う!!)

「ご、ごめんね……ウチが分からないばかりに……変わりにやってくれるかな?」


 そう、中身が渚であれば後ろに回った時点で我関せずを決め込めるのだが、今は香奈だ。

 香奈であればこうやって気配りフォローを忘れない。あぶない、あぶない。

 そんなこんなで必死に取り繕い、授業を終えたのだった。

 しかし、その頃には体力お化けの渚も疲労困憊状態になっていた。

 香奈の振りをして授業を受けるなど、もう二度と、本当にもう二度と懲り懲りだと思ったのだった。



 一方、香奈の方はと言うと、今歴史の授業を受けているところだった。

 歴史の教師は男で何故か筋肉ムキムキの先生だ。


(ナギ姉の振りで授業でてるけど……ど、どうすればいいんだろ……?)

 こっちはこっちで困っていた。


(えっと、とりあえず寝れば、いいのかな……?)

 そう、普段授業で寝る習慣がないため、『授業中に寝る』という行為にとてつもない罪悪感を感じてしまい、実際に行動に移せないのだった。


(うー……。無理だァ! 授業中にそんなことできないよぉ!! ってそうだ! 保健室! 保健室行こう!)

 奇しくも姉妹で同じ答えに行き着くのだった。


「あーセンセ。わりぃ体調があんまよくねーから保健室行きたいんっすけど、いいっすか?」

「黒神ぃ、またお前か。先生の授業がそんなにお前の体調に影響を及ぼすのか?」

「いやいやいや、そ、そんなわけじゃないんですけど……。」

「なんだよ気持ち悪い。お前が敬語なんてらしくないぞ、本当に体調悪いのか?」

(し、しまったつい!)

「悪いほんとに辛いんっすよ、頼むから行かせてくんないっすか?」

「ふむ……そうかわかった。行ってこい。おーい誰か付き添ってやれぇ」

「あぁいいっていいって。保健室くらい一人でいけるって」

「そうか、まぁ最近お前たるんどるぞ、後で喝入れてやるから職員室にくること。いいな?」

「りょーかい」

(ナギ姉ごめん。後でいっぱい怒られてください。これウチの責任じゃないんでっ!!)

 

 そんなこんなで4限目の終了を告げるチャイムが鳴ったのだった。

 こちらもなんとか凌いだ?ようで、チャイムが鳴る5分前にはD組に戻ってきたのだった。


(さて、と。いつものウチだったらお昼はナギ姉呼びに行ってから食べるから、今日はここで待ってればいいか)

 

 いつものようにお昼を一緒に食べようと約束しているので、待つ香奈だった。

 

(おっとまずい、ナギ姉らしく振舞わないとね……)

 

 そうして渚がいつも自然と出している、他人を近づけさせない雰囲気を出す香奈であった。


(ナギ姉はよくこれをずっと展開できるよねぇ、普通に疲れるんですけど……。早く来て欲しいもんだわ)


 そうやって内心ため息を吐くのだった。

 実際、そろそろ実験の内容を教えてもらいたいところだ。

 お昼を一緒にする理由の半分以上は、入れ替わった説明についてである。

 秘密のままずっとこの状態で授業を続けるのは精神衛生上よろしくない。

 そうして待つこと数分、のほほんとした声で自分を呼ぶ人間が現れた。

 

「渚さーん、一緒にご飯食べましょうー!」


 瑠璃子だ。

 最近はいつも一緒に食べてるから当然のように渚のところにくるのだった。


(そうか、朝川さんは隣のクラスだからナギ姉より早く来るのか。まぁ今のこの状態じゃ説明できないから、誤魔化しちゃえ)

「おー瑠璃子か。もうちょっと待ってくれ、多分すぐにカナも来るはずだから、三人で食おうぜ」

「はい! ってあれ?」

「ん? どうし……」


 どうしたんだ瑠璃子。と、最後まで言えなかった。


「香奈さんどうしてこんなところにいるんですか?」

「っ!?」


 驚いた香奈だった。

 驚きすぎて口が回らないとはまさにこのことで、必死に頭では『まずい否定しないと周りにバレる!』と、考えているのに頭が正常に作動しない。

 固まってる香奈に対して、瑠璃子は当然のように質問を繰り返す。

 その言葉に一切の迷いが無い。確実に中身が香奈だと確信しているようだった。

 そして、ついに……。


「何で渚さんの振りをしてるんです?」

「それ以上言うなああああああああ!!」


 先日のように叫ぶのだった。

 辺りがざわつき始める。


 ちょっと、どうしたのかしら?香奈さんって言ってるけど本当かしらね?

 どうだろう、さすがに違うんじゃないか?

 えーでもあの背の高い子、きっぱり言い切ったわよ?

 まじでー?じゃあそうなのかなぁ。でもどうやって見分けたんだろう?

 それよりも、もし本当に入れ替わってるとしたら、苦手教科いつも変わってことよね?

 ああそうか! それはずるい!!

 

 と、まぁこんな感じで野次馬が集まってくる。

 しかも変に邪推してるから手に負えない。

 それを横目で見やって香奈は頭を抱え込んだのだった。

 瑠璃子は叫ばれたことに驚くが、今更になって気づくのだった。

 

(しまった何か理由があって入れ替わってるんだ……今それを私がバラしちゃったから……)


 そう気付いたが、もう遅い。

 周りはお弁当そっちのけでこちらに気を向けていたのだった。


「ア、アハハ。ワタシノ、カンチガイダッタナァ。テ、テッキリ、カナサンダトォ……」


 くっそ演技が下手な瑠璃子だった。

 セリフ全てが棒読みでカタコトになっているのだ、これではいくら否定しても意味がない。

 もはやこれまでか、と香奈が諦めた時だった。

 渚が顔を出すのだった。


「ナギ姉、朝川さん何この騒ぎ? どうしたの?」

「カナ!」

「渚さん!」


(……ん?)

(えっ!?)


 と、顔を見合わせる二人だった。

 瑠璃子には心底がっかりした香奈だった。


「(ちょっとおおおおおおおおお、せっかく演技してんだから合わせてよおおおお!!)」

「(ごめんなさあああああああい!!)」


 この瞬間だけ、何故か香奈と瑠璃子はテレパシーで会話できたのだった。

 あながち演技でも無いため息を吐いて、渚は言うのだった。


「と、とりあえずここじゃなんだし、いつものとこでお弁当食べよ! 朝川さんも一緒に来て! 絶対に!!」

「はいぃ!」


 その場からとんずらこく三人であった。


 そんなこんなで、先日に集まった空き教室に集まるのだった。


「ふう、ここならもういいだろう」

「もう、ひどい目にあったよ……」

「ご、ごめんなさい私のせいで……」

「ったくしょうがねー奴だな。あそこでわざわざバラすなんて。よっとカナ、これ返す」


 渚はそう文句を言いながら、ヘアピンを香奈に返すのだった。


「これがナギ姉の言ってた実験てやつ? つまりナギ姉はこうなるって予想してたの?」

「ああ、そうだよ。まさかここまでとは思わなかったけどな」

「……?」


 二人で納得し合う双子だったが、瑠璃子はなんのことかわからないようだった。


「お前何でオレ達が入れ替わってることがわかった? 自分たちで言うのもアレだが、オレたちを見分けることが出来る奴なんて、めちゃくちゃ少ないんだぜ」 

「なんでって言われても……見た瞬間に香奈さんだって思ったんですけど……」


 思わずため息を吐く双子だった。

 

 過去にどれだけ間違えられて、どれだけ苦労してきたかなんて分からないのだろう。

 ましてや、自分たちのことを見分けることができるのは両親を除けば、この世に一人しかいないのだ。

 瑠璃子は自分がどれだけ非常識なのことができるのか気付いていないのだ。

 まさかこんな形で知り合った奴が、自分たちを認識できるとは思わなかった。


「ナギ姉どういうことなの? いつからこんな予感してたの?」

「あー。まぁ違和感はずっと前からあったんだけどな、具体的におかしいと思ったのは体力測定した時なんだよ」

「ふむふむ?」

「最初からコイツさ、一度もオレたちのこと間違えないんだよ。おかしいなとは思ってたんだ」

「えー? でもそれって……」

「そう、別にオレはいつも通り好き勝手させてもらってるし、カナだってヘアピンつけてるから、それで間違えないのかなって思ってたんだよ。だけどこの前、カナがヘアピン落としたろ?」

「あーあの時ね。確かにあれは焦ったよー気づいたら髪に付いてないんだもん。ナギ姉拾ってくれてて助かったけど」


 渚がプレゼントしたヘアピンだ。香奈にとって大事な物なのだろう。

 渚からしてみれば、いつも間違われるのがうざったいし、自分でヘアピンするのは嫌だから渡したに過ぎないのだが、それでも香奈は嬉しそうに受け取ってくれて、今までずっと付けてくれていたのだった。

 本当に拾ってくれてありがとうと、そう言ってにっこりと笑う香奈だった。

 そんな笑顔にちょっとドキリとしながらも話を続ける。


「そんときオレも無くしそうだったからさ、自分の髪に付けたんだよ。そうしたら瑠璃子がなんて言ったと思う?」

「朝川さん、何て言ったの?」

「え、えっと……?」


 いきなり話を振られて考える瑠璃子だった。


「自分で言ったこと忘れたのかよ、まったく……。まぁコイツな『それ付けてると、ほんとそっくりですね……』って言ったんだよ」

「えっそれっていつものことじゃん?」

「あぁ、いつものことだな。でも裏を返すと『そっくりだけど間違えません』って聞こえたんだよ」

「…………」

「ニュアンスが違ったんだよ。いつもの奴だと、『そっくりでわかんなーい』って感じなんだが、コイツの場合はそう聞こえたんだ。すげー違和感を感じたんだぜ、その場で訊いても良かったんだけどな。邪魔が入ったのと、こうやって実験した方のがわかりやすいと思ったんだ」

「…………」

「まぁそれが最悪のほうに転がっただけなんだけどな」


 そう言って渚がジロリと瑠璃子を睨んだのだった。


「ほ、本当にごめんなさい。まさかあそこまで大事になるとは思わなかったんです……!」

「こっちも驚いたよーまさかあんなハッキリ『香奈さん?』って訊かれるとは思わなかったからさ。こっちもごめんねー」

「そのことはもういいだろう。とりあえず瑠璃子、このことがどれだけすごいことかわかってるか?」

「え、どういう、ことですか……?」 

「お前、この世界にオレとカナを見分けることが出来る人間て何人いると思う?」

「え、えっとぉ……。そういう言い方をするって事は、少ないんですよね……?」


 それはもう、とてつもなく少ないと思うぞ、とは言わなかった。

 無言で話を進めさせる。


「んー……分かんないですけど、十人くらいですか?」

「おしいな」

「じゃあ二十人!」

「逆だ逆! お前で四人目だよ。親を除けばめでたく二人目だ」

「ええええええっ!?」

「まぁそれくらい驚いてくれなきゃな。こっちだって驚いてんだから」

「ホントだよね。朝川さんと知り合ってから多分一年分くらいは驚かされたと思うよ」

「まったくだ。お前ときたら本当にどういうことなんだよ?」


 そうやって双子でしみじみと問うのであった。

 しかし、瑠璃子はそれどころではなかった。『二人しかいない』ということが衝撃だったのだろう、未だに立ち直っていなかった。


「ふ、二人……たったの、二人……?」

「ああそうなんだよ。たった二人だ」

「な、なんでそんな!? どうしてみんな分からないんですか!?」

「本当だよな! どうして分からないんだろう? そして、どうしてお前は分かったんだ?」


 どうしても気になるところだった。

 今まで、見分けて喋ってくれる人はいなかった。

 ひどい時には、渚を相手に香奈と喋ってる気でいるしまつだ。 

 挙げ句の果てには、『まぁどっちでもいいや、とりあえず話しちゃえ』という態度で喋ってくる人間もいるくらいだった。

 その度に、

「オレはカナじゃねぇ!!」

 と、怒鳴るのだった。


 そんなことばかりの過去だ。

 夏美さんと出会って、自分たちを見分けて喋ってくれる人が現れて多少救われたが、それまでは自分たちを本当の意味で認識出来る人はいないのではないか?と、不安をかかえて過ごしていたのだった。

 だが夏美さん自身も、どうして見分けることができるのかまでは分からない様子だった。

 曰く、『何でかわからないけど、自分には分かるんだ』と、いうことらしい。

 

 それ以来、未だに見分けられず来ていたのだが、ここに来て瑠璃子という存在が現れたのだった。

 見分け方があるのだったら、今後の人生を大きく変えるかもしれない。

 先ほども言ったが、どうしても気になるのだ。


「えっと、わかりませんっ!」


 がくっとコケた渚と香奈だった。


「てめぇ! それで通ると思ってんのかっ!」

「朝川さんそれはひどいと思う!」


 思わず怒鳴ってもこの場合仕方ないだろう。  


「そ、そんなこと言われてもっ!? だ、だって渚さんは渚さんだし、香奈さんは香奈さんだし。むしろ何で他の人たちって分からないんですか!?」

「…………」


 逆に訊き返されて、顔を見合わせる双子だった。


「たしかに……」

「どうしてだろうね……?」


 瑠璃子はさらに続ける。


「別に、私は見分けてるつもりじゃないんです。ただ分かるだけです。渚さんだって、私を見れば私だってわかるでしょ? それと同じことです」


 説得力が有るんだか無いんだかよくわからない説明を受けた。

 つまるところ、いくら双子でそっくりだとしても、同一人物ではないのだからわかるはずだと。そういうことらしい。

 結論から言うと、当てになる話ではなかった。

 

「ったく、せっかく貴重な体験なのになーおっしいよなぁ」

「ほんとだねー。これで原因わかれば、今後知り合う人に見分け方教えてあげれたのに」

「だなぁ。ま、それはまたの機会ってことで。こうやって瑠璃子がいるんだ。他にも絶対いるはずだぜ」


 そう、瑠璃子に出会えてこうやって区別されて話しているのである。

 夏美さん以来の衝撃で貴重な体験ができた。ということがこの双子にとっては掛け替えのないものなのだ。

 

「あぁ、そうだ瑠璃子」

「はい、なんでしょうか?」

「今度からオレの事、ナギって呼んでいいぞ」

「ナギ姉?」

「渚さん?」


 渚がこうやって言ったことに驚いた香奈と、どういうことか不思議がる瑠璃子だった。

 

「別にいいだろ? オレたちを見分けれるんだそれくらいの特権あったってさ」

「そう、だね。じゃあウチの事も呼び捨てで呼んでよ。いつまでさん付けだと何か変だしさ」


 そう言われて瑠璃子のほうは目をパチクリさせていた。


「名前の呼び方を変えるんですか? 何か意味でも?」

「んー別に深い意味はないけどな。オレたちを区別できる人にはそう呼んでくれたほうが嬉しいと思っただけだ」

「そうなんですか……。ちなみに他の人がその名前で呼んだら?」

「別に? どうもしないと思うが、ただ止めろとだけは言うと思うぜ、親しいと思う奴にしかその名前を名乗ってないしな」

「そうなんですかー。分かりました。では、ナギさんとカナ……んー呼び捨てだと私が呼びづらいんでカナちゃん!」

「おっけーウチも今度からルリちゃんって呼ぶね!」

「オレも呼び捨てでいいんだけどな」


 こうして本当の意味で友達になった三人だった。

 今までいじめられていた瑠璃子は、友達と呼べる存在がいなかったのだろう、えへへと嬉しそうに笑っている。

 カナちゃんと呼ばれた香奈はどこか照れくさそうに笑っているし。

 そんな二人を見やって渚も笑ったのだった。

 

  

 

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