第十話 雨もり 4
「一人でやること覚えた方がいいわよ、あの子」
「そうだな。袖振れ合うも多生の縁か。んー、明日予報通り晴れだったら手伝ってくれるか。ちょっとやってみるよ」
安は自分に言い聞かせるように小さく頷いた。
山川が何しましょうと聞いてきた。
「山は明日、この前みたいに頼む。それと補修剤とかどういうのがいいか、教えてくれ」
安はそう言って山川といくつか打ち合わせをした。雪には冬美ちゃんが来たらよろしくと頼んだ。
「言って分かればいいけど、まだそんな感じじゃなさそうだしな。明日何か分かってもらえればいいけど」
「あんたって、結構おせっかいね」
優乃は部屋で後悔していた。
どうしてあんな事、言っちゃったんだろ。あんな風に言うつもりじゃなかったのに。あんな風に言っちゃったから、安さんも山川さんもみんな私のこと軽蔑したに決まってる。私、私…。
言葉にならない悲しさと悔しさが胸を締め付けた。
ひとしきり泣いた後、優乃は遅い朝食をとり、小さな雨音を聞きながら、お芝居のテキストを読んで一日を過ごした。
翌朝。天気予報通りのいい天気になった。
朝食を食べ終えて今日は何をしようと考えていた所に、安がやってきた。
「優乃ちゃん、いる」と戸を叩く。
どことなく怒ったような口調に聞こえた。
優乃はどんな顔をしていいか分からず、のろのろと戸を開けた。
「おはよう。朝ご飯食べた?」
意外にも怒ってはいない。
「食べましたけど」
優乃は自分が恥ずかしくなって、困ったように答えた。
「今日空いてる?」
「はい。空いてますけど」
「じゃ、窓の所直すから、補修剤とか買いに行くよ」
連れ出されるように外に出た。安はいつものように話しかけてきたが、なんとなくしっくりこなかった。
欲しい補修剤は近くの店にはないようだった。電車に乗って町の中心近くのホームセンターまで行った。店に入ると安は自分でカゴを持ち優乃に、「これ取って」とか「どの色が窓枠の色に近いかな」などと聞いてきた。優乃は昨日のお詫びのつもりに精一杯応えた。
買物を終えると、安は優乃に「重たいけどこれ持ってって」と買い物袋を持たせて真っ直ぐに帰った。
安さん、自分だけ手ぶらで、どうして私に持たせるんだろ。やっぱり昨日のことまだ怒ってるのかな。
優乃は不安げに安を見たが、安の気持ちは読み取れなかった。




