第七話 友だち 2
「それで、私あまり覚えてないんだけど、何か言ったみたいなの」
「覚えてないって何。優乃、変なことされてないでしょうね。何かされたらすぐ警察よ。あぁいうのはすぐつけ上がるし、エスカレートするんだから、甘い顔見せちゃダメなのよ。ホントに大丈夫なの、一緒に行こうか、警察」
冬美もなかなか思い込みが強い。この辺は付き合いの長い優乃も手を焼く所だ。
「それは大丈夫なの。ホントに何もされてないから」
念を押してくる冬美を何とか納得させて、優乃は続けた。
「私ね、一緒に行った二人の女の人に何か悪いこと言っちゃったみたいなの。あなたとは仲良くしたくないとか、何かそんなこと。二人とも悪い人じゃなかったのに、飲んでるうちにそんなこと言っちゃって」
安の話をしたかったのだが、冬美があまりにも安のことを悪く言うので、違う話が出てしまった。
雪と矢守の方は、自分でも多分何とかなると思っていた。
「そりゃ仕方ないじゃない。お酒が入ってたんでしょ。よくある話よ。向こうだってきっと悪いのよ。お互い様でしょ。今度会ったら謝っておきなさい。それでも向こうが嫌味な態度とったら、付き合うのやめればいいわ」
「そうだね。きっと許してくれると思うし、そうする」
「それで、打ち上げ会は楽しかったの?」
冬美がイキナリ話の核心をついてきた。
優乃の心臓の鼓動が激しくなった。ここで楽しくなかったと言ったら、涙が出てきそうだった。
「何、楽しくなかったの?」
優乃が返事をしあぐねていると、冬美は「最初から話してみて」、と急に優しく聞いてきた。
きっと泣きそうな顔してるんだ、と優乃は思った。
「引越しの打ち上げ会だったの。冬美がこの前会った安さんと山川さんの二人と、女の人で雪先生と矢守さんって言う五人で行ったの」
冬美はうんうんと頷いてくれた。
優乃は冬美に話している内に、当日のことをだんだんと思い出してきた。
打ち上げ会で、矢守とうまくいかなかったこと。
山川の話が長かったこと、でもすぐ寝たこと。
安と雪がずっと一緒に飲んでたこと。
「それでね、打ち上げ会が終わって、みんなで帰ったの。安さんったら、私にあれだけ優しくして、気があるようにしてたから、私もいいなって思ってたの。なのに、安さん、私に言ったの。僕には付き合ってる人がいるから、君とは付き合えないって、私、フラれちゃった」
ボロボロボロっと涙がこぼれた。
冬美は、「だから言ったじゃない」とは言わなかった。
「行くわよ」と一言言うと、真剣な顔で優乃の手を引張って店を出た。




