第五話 三日目 引越し編 5
「どこに置こう」
二日前やったことをもう一度やる。まるでデジャヴだ。間取りは、で愛の荘と同じ1K。水回りやガスの設備が少し古い感じを受ける。畳は日に焼けて黄色くなっているが、ボロボロではない。意外と状態はいい。最近になって誰かが掃除してくれたようで、ホコリはなく小ぎれいになっていた。
優乃がそこにお願いしますと言うと、山川は荷物を置いていった。
一時間も過ぎると荷物はすっかり優乃の部屋に入った。前よりもずっと早い。
「ガスも電気も水道もみんな通ってるから。冷蔵庫と洗濯機は一番最後に持ってくるからね。これ、お昼ご飯。俺と安さんは戻って食べるから、何かあったら矢守か雪先生に言って」
山川はそう言うとスナックパンと牛乳パックを置いていった。
「…」
荷物を運んでくれたお礼を言うのも忘れて、目が点になる優乃。
どうして、スナックパンと牛乳パックなんだろ。山川さんも安さんも、これしか食べないのかな。もしかしたら夕食もこれかも…。
荷物の整理と明日からの学校の準備をしているうちに、午後はあっという間に過ぎていった。
一時間に一回のペースで優乃の隣の部屋で、荷物を運び入れる音がした。最初に山川の部屋、次に安の部屋の順だった。
午後五時も過ぎ日も暮れようとする頃、優乃の部屋の戸が鳴った。
コンコン
「優乃ちゃんいる」
はいと出て行くと山川と安が、冷蔵庫を持ってきていた。
「これはどこに置こう」
二人でよいしょと運び込む。優乃の指定した場所に冷蔵庫を入れる。
安の腕が震えていた。今日いっぱい大八車を引いて、疲れたのだろう。山川も疲れているのだろうが、きっと安の方が疲れているんだと優乃は思った。
疲れているせいか、二人とも表情が硬い。
「あ、あの、お昼ご飯ありがとうございました」
黙々と手伝ってくれる二人に、優乃は何だか悲しくなって声をかけた。
「いいよ。あんなものでごめんね」
安がにっこりと微笑む。
「今度は違うもの買ってくるね。それから後で裏に来て。洗濯機そこにおいてあるから」
山川も笑顔で言った。
きゅんっと優乃は胸が苦しくなった。
どうして、二人はこんなに優しくしてくれるの。二人ともこんなに疲れているのに、そんな素振りも見せないで私のために手伝ってくれる。雪先生のはお金をもらうから手伝ってるかも知れないけど、私二人に何もあげられない。私自分で言いたくないけど、やっぱり二人とも私のこと狙ってるんだ。私の可愛さがそうさせるんだ。これは罪、罪なことなの?
自分に酔いしれる優乃を放っておいて二人は出て行った。
しばらくしてハッと気付くと、宝塚よろしく、ポーズを決めている自分に優乃は気が付いた。
カーッと顔が赤くなる。二人に見られたかと思うと恥ずかしくて死んでしまいそうだった。
「優乃ちゃーん、裏に来てー」
外から声がした。
「はーい」と返事をして、優乃はあわてて外に出た。
裏に行ってみると、夕日に照らし出された洗濯機が五台。全自動が二台、二槽式が三台あった。
どうしてこんなに。
水道口は二つ。二つとも最初からあったに違いない二槽式につながれている。新しく持ってきた三台の分はない。
「あのこれ…」
優乃が声をかけた。
「うん、これね。二台は最初からここにあった奴。で、優乃ちゃんと雪先生の全自動が二台と僕の二槽式の一台は新しく持ってきた訳だから、その分の蛇口がないんだ。どうしようかなぁって」
安が言った。
「どうしようかなって、ここにしか置けないんでしょ。だったら使う時に、ホースをつけ替えるしかないじゃない」
一緒にいた雪がはっきりと言う。
確かにその通りではある。
「まぁ、そうですよね」
山川も相づちを打つ。
「うん、それしかないよな。そう言うことで優乃ちゃん、よろしく」
安が仕方がない様子で言った。
「そうですね」
無駄に多い洗濯機を見つめて、優乃は頷いた。




