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第三話 二日目 3

 トントン


 「安さん、いますか。優乃です」


 戸を叩くと、中からどうぞと声が聞こえてきた。


 はいと返事をして戸を開ける。


 「優乃ちゃん、丁度いい所に。足元気をつけてね」


 部屋はまるで優乃の部屋と同じ様だった。段ボール箱が何箱も積んである。引越してきたような状態だ。優乃の部屋と違うのは、下に段ボールが敷いてある所だった。


 「今日中に畳が乾かなくてさ、とりあえず段ボール敷いてみたんだ。滑るから気をつけて。ま、座って」


 安が明るく言う。


 畳大丈夫なのかな、と思いながら優乃は滑らないように気をつけながら、中に入って座った。


 部屋には山川もいた。二人で話していた所なのだろう。


 「んーっとね、山からの話も合わせて話そうか。今日、大家と話したんだけど」


 安が切り出した。


 「このアパートどうするのかって聞いたら、いい機会だから建て替える事にしたって言うんだ」


 「えーっ、じゃすぐ引越しですか」


 半分は予想していたが、すぐでは困る。


 「それで、あまりにも急じゃないですかって言ったら、一応は三ヶ月から半年後を目安に取り壊すって言うんだ」


 半年先なら何とかなりそうだ。


 優乃はほっとした。


 「で、建て替え中は、朝言った「元祖 で愛の荘」なら空いてるから、そこ使っていいって。ただ取り壊しも含めると建て替えにお金が予想以上にかかるみたいで、引越し代は出せないって」


 何だか話が怪しくなってきた。


 「その代りと言ってはなんだけど、『元祖』に行ってくれるなら、三ヶ月分の家賃は無料(ただ)。その後も、半額でいいって」


 「えーっホントですか。イキマス、いきます。すぐ行きます。ここの家賃払わなくていいってことでしょ。キヤーッ、ツイてる」


 家賃無料三ヶ月間、その後は家賃半額。どれくらい学費の足しになるか分からない。


 ひゃっほー。優乃は飛び上がった。

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