第二話 第一夜 4
「うわっ」
山川が自分の部屋の戸を開けると、叫んだ。
「しまった。窓開けてたからなぁー」
部屋の中が結構濡れている。これでは寝るところがなさそうだ。
「あっ」
と、安も慌てて走って行き、自分の部屋戸を開けた。
「…しまったぁっ」
山川と同じ言葉を言う。
安はとぼとぼ戻ってくると、山川と目で会話をし、お互いに小さく頷き合った。
「ごめん、優乃ちゃん」
二人は本当に申し訳なさそうに、頭を下げた。
「部屋、見ての通りなんだ」
と、山川。
「見てきてもらっていいけど、僕の部屋も同じなんだ。さっき出来る事あったらって言ってくれたけど…」
安は言葉を切った。
その後の言葉は何となく想像できる。
「早速で悪いんだけど、今夜一晩だけ山川と僕、泊めてくれないかな」
言った手前、ダメですとは言い難かった。
「大丈夫、何もしないから」
山川がつけ加える。
「いいですけど…」
優乃が一応の許可を出すと、ありがとうと言うが早いか、二人は自分たちの部屋に戻り、毛布を持ってきた。そして勝手知ったるように、優乃の部屋に入る。
もう二人とも何よ。レディの部屋よ。今日来たばっかりだけど。
可愛げに頬をふくらます優乃。
部屋では二人がもう何か始めている。
「山川、雑巾取って」
「はい」
もう、と怒って部屋に入ると安が雑巾で畳を拭いている。
山川は水道から花瓶に水を入れている。
あ。
優乃は気が付いた。
私、部屋出るときに、花瓶からこの花束抜いたんだ。その時に花瓶が倒れて水がこぼれちゃったんだ。
「はい。優乃ちゃん」
山川が水を入れた花瓶を持て来てくれた。
「あ、ありがと」
怒るタイミングを消されてしまった。
花瓶を持って立っていると、二人は優乃の布団を部屋の片隅に寄せ、自分たちの寝る場所を作っている。




