第六話「弱火でじっくり」
「……えっ?」「なにこれ……!」
「「やばっ♡」」
二人の女性客は、一瞬口をぽかん。
カウンターの横で光をまとって立つ天女——ミャウリ。
その姿は、まるで流行りのゲームのワンシーンのエフェクトみたいだった。
白銀の髪に、光沢のある巫女風の装束。
それなのに、どこかモード感があって、都会的にまとまっている。
腰の帯には金のライン、袖口には透明な素材が組み込まれて、
LEDのように淡く光っていた。
「え、めっちゃ可愛い……」「なにその衣装、欲しい……!」
もはや一瞬にして占いどころじゃない。
一瞬で空気は“女子会モード”に変わった。
「それ、どこのブランド?」「髪の色すごい!地毛?エクステ?」
「アイメイク、ラメ細かくて綺麗〜!それ、どこの?」
ミャウリはにっこり笑い、
「ふふっ、教えてあげよっか♡」とウインクする。
あげよっか♡
じゃないよ。
なんでそうなる?
——完全に女子トークが始まった。
話題はファッションからメイク、
秋冬物、話題のニョース、ドジャース優勝。
クリスマスバージョンのアフヌンこと
ヌン活。
やがてヒソヒソと変なテンションで話してる
内容詳しく聞こえてこないが
男性が聞かないほうが良いであろうトークだろうと思う。
僕はカウンターの端へそっと移動し、
彼女たちの楽しげな声をBGMのように聞いていた。
(たぶん、絶対に聞いてはいけない内容だった)
ミャウリの指示に従い、
僕はタイミングを見てハイボールを作り、ビールを注ぐ。
まるで天女が店のママになったみたいに、
場を完全に掌握していた。
三人の笑い声が重なり、
夜はゆっくりと流れていく。
ーーーー
やがて、二人はほろ酔いし
満足げに席を立った。
会計を終え
「今日も楽しかった〜また来るね!」
「今度、占いちゃんとお願いするね!」
ミャウリは軽く手を振り、
「うん、またね♡」と笑顔で見送った。
僕は静かになったカウンターを片付けながら、
天女コスプレヤーが
彼女たちに
何をどう占っていたのか
……が、まったく聞こえていなかった。
笑い声と香水の匂いだけが残っている。
そのとき——
「ねえ、焼肉定食は?」
ミャウリがいつの間にか
スパークリングを開け、
冷えたグラスに注ぎながら言った。
グラスの縁には泡が静かに立ち、
金色の液体がきらめいている。
「……?、結局食べるんだ」
僕がそう返すと、ミャウリは頬を少し膨らませて、
「約束したでしょ。弱火でじっくり、ね♡」と微笑んだ。
——現実と幻想のあわいで、
今夜も、銀座の夜はゆっくりと更けていく。
ハンバーグを出して
少しぶーたれてが
美味しいと言って
ペロリと
食べ終わり
満足そうにして
パッと消えた。
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ごちそう様が聞こえない




