閑話:「私はただの酒好き」
ああ、もう嫌だ。
私の優雅な休暇はどこへ行った?
天界の雲の上で、最高級の蜜酒を傾け、静かに書を読み、自由な日々。
それが私、ミャウリの日常だった。
ええ、私?
あの人間が勝手に呼んでいた
「猫耳天女風の女性」ことだ。
面倒だから、天女でも猫耳でも、好きに呼ぶがいい。事の発端は、あのバカ神の所為だ。
バカ神呼ばばり、テンマこと、天界でも指折りの実力者だが、とにかくエンジョイ主義。
「地球の銀座という街が面白い」と、フラリと下界に降りたと思ったら、遊園地のゴーカート気分で車を運転していたらしい。
「いや〜、ブレーキよりアクセルの方が楽しいだろ?」後で天界に戻ってきたテンマは、そう言って笑っていた。そのエンジョイ運転の結果、運悪く轢かれたのが、あの仮面のバーテンダー、芦原の主人だったというわけだ。
「おい、ミャウリ。ちょっとミスった。魂が外に出てしまったから、身体に戻して無理やり蘇生させたが、どうも次元の縫い目に歪みが出たらしい」
「はあ? 蘇生させたなら、それで終わりでしょう」
「いや。このままじゃ、アイツの魂が不安定で、いつかまた変な転移を引き起こす可能性がある。ついでに、アイツを轢いたショックで、お前の眷属を少し借りて魂を補強したんだ」
「……私の眷属?」
私の眷属といえば、猫だ。
天界の猫は、時空を超えた幸運を運ぶ生き物で、彼らの力は神にも匹敵する。
それを勝手に人間に埋め込んだだと?
「ああ、お前を彼の加護として付けてやったから。しばらく下界で監視しとけ」
――これが、私の優雅な休暇が終わりを告げた瞬間である。
だからか
蘇生の影響で冒険者たちの転移にも影響して
巻き込まれ転移魔法中にバグが出て
冒険者3人組との遭遇になるのか。
私はテンマの命令通り、人間に憑依……もとい、「加護」としてついて行った。
彼らの転移テストの失敗というか、神のせいで次元の裂け目が広がりかけている。
このままでは芦原の主人が、どこかの異世界に飛ばされてしまうのか?。それともまた冒険者来るのか?
私が現れたのは、占いで
ディードという魔法使いがカードを引いた、あのギリギリのタイミングだ。
なぜカード経由?
「幸運のバフがかかるにゃん、これで元の世界戻れるにゃん、よかったにゃん、」
あの時、私がわざわざ猫耳で
「にゃん」口調を演じたのは、ひとえに目立たないように、現実の事象だと誤認させるためだ。まさか、あの見た目の女性が、神から派遣された巫女だとは、誰も思うまい。(あのバーテンダー、私のビール代を伝票に書いていたな……まったく失礼な奴だ)あの世界のビールは、天界の蜜酒よりも遥かに美味い。特にサーバーから注ぐあの冷たさ。最高だ。
あーあ
あの呼ばれた瞬間、私の優雅な休暇は、彼の命綱と引き換えに、
「異世界バーと次元の狭間の監視」という面倒な仕事に変わってしまった。
「お前はもう、ただの人間じゃない。私がお前さんに力を貸すんだ。『加護』だ」
そう言って、私はまた消えた。
そしてまた天界に戻った。
天界からでも監視はできるし。
彼の顔に、疑問が浮かんでいるのが面白い。
チート?
もっとわかりやすい力?
フン。
私という最高級の天女の加護を得ておきながら、何を贅沢な。
だが、あの神のせいで、彼の身体や次元は
不安定だ。いつ、また異世界の誰かを引っ張り込んでしまうかわからない。
私の仕事は、彼の命を繋ぎ止め、次元の暴走にならないよう監視すること。
それと、ついでに、うまいビールを飲み続けることだ。ミャウリはそう決意し、再び人間を観察し始めた。彼の顔をじっと見つめる。次は、どんな異世界客を連れてくるのか。そして、何の酒や食事を出すのか。
「はぁ。まったく、面倒で、ビールと美味しい食事付き?な仕事になってしまった」
独り言をつぶやき、ミャウリは静かに欠伸をした。
ゆっくり連載できたらと思います。
よろしくお願いします。




