第十二話「や、久しいね」
「早く」
ドクン。
ドクン。
ドクン。
ゆっくりとお面を被り、フードを羽織る。
怖いんですけど
心臓の鼓動が、足音のように跳ねる。
めっちゃ怖いんですけど
入り口に近づく
ドクン。ドクン。ドクン。
ドアをそっと開ける――
ドクン。ドクン。ドクン。
エントランスホールが暗くて
よく見えないが何かが
勢いよく、飛び込んできた!
「toくぁwせdrftgyふじこlpイレ」
人?
ひぃ、と小さく悲鳴をあげ、思わず目をつむり、後退る。
足音がけたたましく奥へ走る。
バタン、ドアが開いてバタン、閉まる。
僕は奥の足音がした方を恐る恐る見ると――
「にゃんだ」
ミャウリが横から声をかけてきた。
僕はさらにひぃと悲鳴をあげ、ミャウリを見る。
「おま、お前のいたずらか?酔ってるのにもほどが」
ミャウリが僕の後ろに視線を向ける。
「?」
ミャウリは何を見てる?
僕が振り返ると、そこには――
見覚えのない、長めの真っ白なあごひげの初老男性。
アメカジファッションで、どこか洒落た雰囲気を漂わせている。
「いやーすまん、すまん。いたずらが過ぎたかのう。だが、さっき入ってたやつはおぬしの客じゃてのう、ミャウリ」
奥に走っていったのは客だったのか?
ミャウリと知り合い?
「……そやつはお主をひいた神にゃん」
「や、ひさしいね」
神が手を上げ、にこりと笑った。
いや知らんし
僕的にハジメマシテですが?
頭が追いつかないし
こわいし
その瞬間、奥のドアが再び開き、人が現れる。
ひぃ
僕はまた悲鳴を。
「ごめーん、この辺コンビニトイレ貸してくれなくてさー、あ♡葦原近くじゃんと思ったんだけど、バッテリー少なくショートメッセージで送ったんだけど、わかったw?」
以前のキラキラ二人組の丸の内OL系の美人さんだった。
……なぜ神と一緒に?




