第一話「これもテンプレ?」
ひっそりとよろしくお願いします。ひっそりとね
歩き慣れた銀座の並木通りを、スマホを見ながら今日も今日とてテクテク歩く。
六本木のバーと銀座で鉄板焼きで
働いて働いて
数年前に
独立して銀座で
会員制鉄板焼きバーを始めたのだ。
買い出しも終わり、店に戻る途中だ。
「今日は仕入れた熟成肉に合うチーズも良いのが手に入ったし……」
独り言をつぶやきながら、数年経営している会員制の鉄板焼きバーへと近づく。
曲がり角を曲がった瞬間――突然の衝撃で吹っ飛ばされた。
「うわっ!? な、なに!?ヽ(`Д´)ノプンプン」
視界の端に、僕をひいたらしき人の影。
顔はよく見えない。
「oh, シット」
……いや、それ僕のセリフやん、と内心ツッコむ。
そして意識がスッと遠のいた。
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次に目を開けると――自分のバーのカウンターでうずくまっていた。
「え……? あれ?車に……ひかれたはずじゃ……?」
買い出しした食材がカウンターに置かれている。
誰か運んでくれた? 普通、病院じゃないの? 保険屋に電話とか、現場検証とか……?
モヤモヤしたまま営業準備を終え、
一息ついてコーヒーを飲む。
フードとお面を整え、特に痛みはないことを確認。
――なぜ鉄板焼き屋でお面にフード?
それな。今宵ハロウィンだからね。凝ったのよ。
え?普段?普段も実はお面を。
何故かって?
仮面つけてる方がネタにもなるし
話やすいしね。街中でお客様に会ってもスルーできるし。
たまに見なくて良い場面に出くわすからね。
特に銀座は。
それよりも、さっきの事故の後遺症とか……大丈夫かな?
「あー、もう営業時間だし、とりあえず店あけるか……」
モヤモヤを抱えたまま店内に目を向けた、その瞬間――
神々しいエフェクトが走り、床に魔法陣が浮かび上がる。
「いやいやいやいや……な、なにこれ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」
光が揺れ、全身にざわざわと鳥肌が立つ。
そして魔法陣から、3人組の“冒険者風”の人物が現れた。
戦士:鎧がギラつき、マントが揺れる。
魔法使い:杖の先が微かに光り、髪がふわりと舞う。
僧侶:小型の聖書を抱え、指で祝福の印を結ぶ。
「は? 今日ハロウィンだからコスプレか?」
心の中で自分につっこむ。
でも――魔法陣も衣装も、
どう見てもリアル。
凝るにしては出来が良すぎる。
いや、そもそも本物?じゃないだろ!?
それとも本物?
3人はキョロキョロしつつ
「くぁwせdrftgyふじこlp」
3人はわけのわからん言語でわーわー話しかけてくる。
「ちょ、ちょっと待って、どうやって店内に……?」
僕が恐る恐る言うと、
3人はまたわーわー話し合い、魔法使いらしき女性がスッと手を僕に向けた。
次の瞬間、光が体を包み、全身がじんわり熱くなる。
「な、何したんですかーーー!!」
震えながら叫ぶ僕。
3人は笑っている。
そして落ち着いた口調で――
戦士が言う。
「言葉わかるよね?すまんがここはどこだ?」
不思議なことに、
さっきまでのわけのわからん言葉が、
普通に理解できる。
「……ここは、銀座で僕のバー「葦原」ですが」
思わず口に出していた。
3人はふむ、と頷き、普通に席に腰を下ろす。
ん?
どういうこと?
ふむじゃないよ。
魔法使い風の女性が言う。
「なるほど…ゼンゼン知らん場所だ…クリック聞いたことある地域か?どう見ても魔法の転移テストの失敗か。チッ。」
僧侶っぽい男性が笑って言う。
「ギンザだっけ?知らんなぁ。とりあえず1時間で自動で戻る設定だろ? 下手に動けないしそれまで店にいさせてもらおうよ。」
僕はまだ固まったまま、水を一口飲む。
「……まさか、これが事故のせいとは言わないよね……非現実的だし。実は俺死んでる?ハハハ」
銀座の小さなバーに、異世界の冒険者3人組。
誰も素顔を知らない僕と、未知との遭遇。
今日も、
会員制鉄板焼きバー「葦原」の一日が
始まった。
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