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絶対に破滅する悪役令嬢に転生した私は軽音部に入部して破滅を回避し、青春を謳歌したい

作者: プルーム
掲載日:2025/10/07

 乙女ゲームの世界に転生した。よりによって『悪役令嬢』に。


 名前はシャーロット・クイーン。貴族の令嬢であり、王太子の婚約者。


――つまり、断罪イベント待ったなしの存在である。


 「……破滅フラグ? そんなもの、回避してみせますわ」


 悪役ルートを辿れば国外追放か牢屋行き。

 そんな未来、まっぴらごめんだ。

 私は真っ当に生きる。人をいじめない、ヒロインにちょっかいを出さない。


 そして――できるだけ目立たず静かに過ごす。


 ……そのはずだった。


 「新入生、部活動を見学していってくださーい!」「馬術部初心者大歓迎中でーす」「今なら先輩が優しく教えてあげられますよー」


 放課後、校内を歩いていると、活気のある声が聞こえた。部活の勧誘だ。様々な部活が新入生の勧誘に勤しんでいる。


 ゲーム内でも部活は存在していた。所属する部活によって、ストーリーや攻略する対象が変化する。

 ゲーム内で確認できたのは、馬術部、剣術部、魔法部、弓道部。

 どれもこれも平凡な人生を送ってきた私には難しい。

 馬には乗ったことないし、剣なんか触ったことないし、弓も同じ。魔法に関しては使えるかさえもわからない。


 転生してきて早々大きな壁にぶち当たってしまった。どうしよう。


 なんて考えながら歩いていると……――楽器を抱えた生徒たちがいた。


 「け、軽音部……?」


 転生前は趣味でギターを嗜んでいた。

 馬には乗れないし、剣と魔法も弓も使えない私であるが、ギターなら扱える。


 「見学希望ですか?」


 声をかけてきたのは、ベースを抱えた少女。

 淡い金髪に冷たい碧眼。気品のある立ち姿。


 「ええ。ギター……少々、弾けますの」


 悪役令嬢がギターを弾く――それはなんとも滑稽かもしれないけれど。


 「ふーん。貴族のシャーロット様が、ね。遊び半分で音楽されるつもりなら、お引き取りを」


 ……冷たい。

 でも、その瞳は真剣だった。


 「遊び半分ではありませんわ。ただ、やってみたいだけですの」

 「……勝手にどうぞ」


 こうして私は、軽音楽部に入部した。





 初練習の日。私はギターを持って音楽室に向かった。

 他のメンバーは、アリシア(ベース)、レナ(ドラム)、ヴィヴィアン(キーボード)。

 それぞれ癖が強い。


 「うわっ、本当に貴族様がギター持ってきたよ!」


 ドラムのレナが笑う。元気で庶民的な少女だ。


 「そのドレスじゃ、コード押さえづらくない?」

 「……これは正装ですの。音楽とは礼儀を伴うものですから」

 「いやいや、気合入りすぎ!」


 笑い声が響く中、私はチューニングを済ませる。

 弦をはじく。……悪くない。指もまだ覚えている。


 「次、合わせるわよ」


 アリシアが言う。

 曲は学園祭で披露する予定の『光の翼』。この世界の定番ポップソングだ。というか、乙女ゲームのオープニングである。


 ――しかし。


 合わせてみると、まるで噛み合わない。

 テンポがずれる。和音が濁る。アリシアが眉をひそめる。


 「……貴女、本当に弾けるの?」

 「い、いえ、少々ブランクが……!」

 「軽音楽は遊びじゃないの。やるなら本気で。やめるなら今のうちよ」


 その言葉は、痛烈だった。

 だけど――どこか懐かしかった。

 前世でも、似たようなことを言われた覚えがある。


 「……本気ですわ。必ず、音を合わせてみせます」


 私は頭を下げた。

 アリシアの瞳が、一瞬だけ揺れた気がした。



 それからの日々は、ひたすら練習だった。

 指先は豆だらけ。貴族の令嬢らしい白魚のような手は、もうどこにもない。

 でも、不思議と嫌じゃなかった。


 「そこ、もう少しテンポ落とそっか」


 レナがドラムを叩きながら言う。


 「了解しましたわ!」


 息を合わせるたび、少しずつ音が混ざり合っていく。

 ヴィヴィアンが淡々と指を動かす。

 アリシアも、少しだけ口元を緩めていた。


 ――そうして、迎えた文化祭前日。


 「やっぱり無理よ!」


 アリシアの叫びが響く。

 練習中、リズムが崩れ、音がぐちゃぐちゃになった。


 「こんな完成度で人前に立つなんて、恥よ!」

 「アリシア、もうちょっと頑張ろうよ!」

 「妥協はしたくないの!」


 空気が重くなる。

 私の胸の奥がチクリと痛んだ。


「……私、悪役令嬢ですもの」


 ぽつりと呟く。


「破滅を避けようと、ずっと逃げてきた。でも、音楽だけは逃げたくないんですの」


 ギターを構え、弦を鳴らす。

 アリシアが振り返る。

 私は静かに続けた。


 「この音は、わたくしの――生きている証ですわ」


 短いメロディが、音楽室に響く。

 それは未熟で、でも確かに私の音だった。


 アリシアが目を伏せ、少しだけ頷く。


 「……やるわ。違う。やってやる! 最後まで」


◆◇◆◇◆◇


 文化祭当日。人で賑わう講堂のステージ。

 緊張で手が震える。けれど、もう逃げない。


 「次の曲は、私たち――『ロイヤルコード』のオリジナルですわ!」


 客席から笑い声と拍手が起こる。

 レナがドラムスティックを鳴らし、カウントを取る。


 「ワン、ツー、スリー、フォー!」


 音が重なり、光が弾けた。

 アリシアの低音、ヴィヴィアンの鍵盤、レナのリズム、そして私のギター。


 初めて、心が一つになった気がした。


 ラストコードを鳴らした瞬間――

 歓声が、爆発した。


 「シャーロット様、最高でしたわ!」

 レナが笑う。アリシアも小さく微笑む。


 「……やるじゃない。悪役令嬢のくせに」

 「まあ。お褒めにあずかり光栄ですわ」


◆◇◆◇◆◇


 片付けのあと、ステージ裏。

 アリシアがぽつりと言った。


 「貴女のギター、好きよ」

 「……それ、ラブソングの台詞ではなくて?」

 「かもね」


 その笑顔は、ゲームのどのルートにもなかった。

 破滅フラグなんて、どこにもない。

 あるのは――鳴り止まない余韻だけ。


 「さあ、次の曲も作りましょうか」

 「ええ。今度は――もう少しロックに、ね」


 音楽室に笑い声が響く。

 悪役令嬢シャーロット・クイーンは今日もギターを抱え、

 誰よりも楽しそうに弦を鳴らしていた。

「悪役令嬢×ガールズバンドもの」という案がふと湧いたので殴り書き。

ブックマークやら評価が多ければ、しっかり書き直して連載予定。

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