表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元オーガの英雄譚~人間に生まれ変わった元魔獣は前世の友人に瓜二つな皇女様を守りたい〜  作者: ヨドミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

18話 五百年前(5)

 何度夢に見ても胸糞が悪くなる。

 思い出したくない夢を見させるのは、どこのどいつだ。

 この後の結末を目にしたくなくて、俺は声にならない声をあげるも、五百年前のあの日が迫ってくる。


 アルティミシアがクソ鳥の討伐に出てから数日後。

 俺は餌を求め、森をさまよい歩いていた。

 すると、音もなく、七色に光る鳥の羽が視界を横切った。


 俺が唯一喰いたくない生き物だ。

 目にするだけで虫唾が走る。

 羽を追い払おうと腕を大きく振った。羽が粉々になると同時に、目の前がまばゆい光りに包まれる。


「――っ」


 光をかき分けると、柔らかい何かに手が埋まった。

 馴染みのある感触。肉に爪をねじ込んだときのそれだ。

 光が晴れた先に、アルティミシアがいた。驚きに青い目を零れんばかりに見開いている。

 そして口から血を吹いた。俺の爪が彼女の腹を貫いている。


 森にいたはずが、俺は砂埃舞う荒野にいた。数メートル先が霞んでいる。

 四方八方から聞こえるのは、魔獣、人族入り乱れた悲鳴、罵声、雄叫び、意味のある言葉はない。

 血や肉が焼ける臭いにはじめて吐き気を覚えた。


「……俺は森にいたはずなんだが。どういうことだ……?」

「君の言葉を借りるなら、クソ鳥どもが、私の思考を読んだようだ。やられたね……」

   

 アルティミシアは俺の腕を掴み、腹から抜こうとする。俺はアルティミシアを胸に抱え込んだ。


「離してくれ」

「黙ってろ」


 アルティミシアは血まみれだった。

 腹の他にも、足や腕に深手を負っていた。俺が爪を抜けば、血が噴き出し、止まらなくなる。

 アルティミシアの血に誘われ、魔獣たちが集まってきた。

 俺は牙を剥き威嚇する。


 魔獣どもは身を低くし名残惜しげに後退した。

 無謀にも俺に飛びかかってくる馬鹿を噛み砕き、肉塊にする。

 普段であれば、力の差を見せつければ、魔獣どもは逃げていく。それなのに、今回は勝手が違った。

 次から次へと魔獣どもは俺たちに襲いかかってくる。

 有象無象がいくら挑みかかってこようと問題ない。俺はアルティミシアを抱えたまま、ひたすら死骸を増やしていく。

 囲いを突破できそうになった直後、背中がずしりと重くなった。

 ゴブリンどもが喚きながら、俺の背に乗り、棍棒を何度も振り下ろす。


「俺の背に乗るとはいい度胸だ」


 俺は上半身をねじった。その勢いにゴブリンどもは振り落とされる。地面に這いつくばったそいつらを俺は遠慮なく踏み潰した。

 その後も、魔獣どもは狂ったように俺に襲いかかった。

 上位魔獣暴喰公(グラトニー・ロード)である俺がそばを通っただけで、失神してしまうような下位魔獣ですら、俺の腕や脚に齧り付いてくる。


 どいつもこいつも目の焦点が合っていない。

 視界の端に虹色の羽が舞っていた。


 すべては虹色の羽のせいだ。

 クソ鳥どもは何が何でも俺を殺したいらしい。

 もしくはアルティミシアか――。

 簡単に死んでたまるかと、俺はアルティミシアを片手に抱え、魔獣を喰らい続けた。


「下ろしてくれ」


 アルティミシアが小さな声で言葉を発した。

 俺の胸元は彼女の血で濡れている。

 貫いた腹から伝わるあたたかさが段々と感じられなくなっていた。


「シア。すまない」

「何を謝る。君は私を懸命に守ってくれた。君は、私の英雄だ」


 アルティミシアは口の端から血を流しながら微笑む。

 突如、砂埃の先から風切り音がした。俺は咄嗟にアルティミシアに覆い被さる。

 背に何度も衝撃が走った。じくじくと至る所が熱をもつ。


 アルティミシアの傷に比べれば、なんのことはない。俺は魔獣だ。人族と桁違いに頑丈である。

 アルティミシアの瞳から輝きが薄れていく。


「アルティミシア、死ぬな」


 俺をひとりにしないでくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ