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異世界日本連邦  作者: YF-23
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第1話

 


 1975年5月20日、先の敗戦以降アメリカによる占領下だった沖縄が日本に返還されて3年が経ったこの年、小笠原諸島近海で操業中の漁船から不審な通報が海上保安庁第三管区海上保安本部に入ってきた。

 曰くその通報は『海の上に当然門が現れた』という要領の得ない不思議な物であった。

 この通報に対し海上保安庁はたまたま付近を航行中だった巡視船【のじま】を向かわせたが、【のじま】から第三管区海上保安本部に上げられた報告も『小笠原諸島西方100海里付近に門とみられる人工造物を確認した』というものだった。


 ここまでくると、この報告は海上保安庁だけで無く官邸にも上げられ、日米航路の重要性の観点からもアメリカ政府にも伝えられた。そして日本主導の日米共同調査が行われる事となり日米の優秀な研究者からなる調査チームが門に派遣された。


 約2週間に渡る日米合同調査は、この門の材質がコンクリートに似た材質で構成されてる事と、この門を潜ると地球では無い別の世界の海に繋がってる事の2点が判明したが、この門が何故現れたのかなどは解明する事が出来なかった。

 最も材質がコンクリートに似た物なのであって、コンクリートでは無い事や、波による侵食が確認できない事、そして既存技術では加工が不可能な事も判明したが、後者と比べるとこの事実は些事でしかなかった。


 6月に入ると日本政府はこの門の中に艦隊を派遣する事を決定し、海上自衛隊の護衛艦【たかつき】と【きくづき】の2隻が派遣される事となった。

 この艦艇が選ばれた理由としては当時の海上自衛隊としては有力な対空・対潜装備を有しており、主砲も2基備えており、ある程度の脅威に対処出来るからであった。

 最も、当時【たかつき型】護衛艦は海上自衛隊の主力艦艇であり、防衛庁はこの2隻を失う可能性のある派遣は反対だったのだが、有力な大型巡視船を保有していなかった海上保安庁を含む運輸省とベトナム戦争後の国内のゴタゴタで艦艇を出せないアメリカ政府からの要請を受けた外務省が、当時計画倒れする予定だった海自のCVH導入を大蔵省に認めさせるという省益により派遣が決定された裏話がある。

 ちなみに2隻の乗員や同乗する研究者達も二度と戻って来れない事を覚悟して来た志願者達を集めており、日本政府もとい防衛庁が如何に今回の派遣が危険であるかを理解していたか分かる。


 そして6月7日、2隻が門の中に進入を開始した。

 2隻がこちらの世界から消えると同時に2隻との通信も完全に途絶したのだが、これはあらかじめ予想済みだったので良かったが、問題だったのは日本国内だった。

 野党やマスコミなどが、『日本政府が海上自衛隊の軍艦を派遣したのは異世界を軍事侵略する為だ!』と騒ぎ始めたのだ。

 くしくもベトナム戦争による反戦運動からも時が経ってない頃だったので運動は激化すると思われたが、1週間後に無事帰還した2隻の調査艦隊からの報告で風向きが変わった。


『人の手が入ってない島とみられる陸地を発見した』『簡易的な調査の結果、複数の鉱物資源の埋蔵を確認した』『動植物も地球の物と遺伝子的に大きな違いは見受けられない』との事であり、日本政府はこの調査結果を大々的に発表した。

 この調査結果を受けこれまで政府を批判してきた野党やマスコミは手の平返しで政府を褒め称え、政権の支持率は鰻登りとなった。

 そして、これまで手助け程度の手伝いしかしてこなかったアメリカは日本に対し様々な手を使って新しく発見した島や世界に介入しようと動いてきた。


 更にアメリカだけでは無く、世界中の国々が現代のフロンティアとも言える新世界へ向けて動き始めていた。

 最も当時の日本は経済絶好調の時代であり、GDPは世界第2位、日本製品が世界中に輸出されており、経済的な支援などは欲していない事は明白であった。

 その為、世界各国首脳が頭を悩ましてる中、最も先に動いたのは意外にもロシアであった。

 なんとロシアは樺太全島を日本に返還するので、その見返りとして新世界での権益を融通するように要請してきたのである。

 これには日本政府も驚いたが、同時期に中華民国も日本との係争領土である澎湖諸島を日本に返還し、日本に対して求めていた台湾の返還を今後一切求めないと同時に台湾の領有権を放棄するとまで言い出したのだから、外務省は上から下までの大騒ぎであった。

 ちなみに当時の中華民国は北の中華人民共和国との対立により国内のリソースを澎湖諸島に向ける余裕が無かったので中華民国政府の決断は英断とも言える。


 さて、既にお気づきの方も居られると思うが、この世界の日本は史実の日本と少し違う。

 台湾は日本領であり、中華民国は大陸に領土を有し、朝鮮戦争は国連軍の完全勝利、更に史実で日本の国防を縛る憲法9条も戦力の不保持は記載されておらず、国防の為の最小限の戦力を持つ事を認めている。

 台湾が日本領なのはGHQが日本の植民地であった朝鮮及び台湾にて住民投票を行なったからである。

 当時のアメリカ政府はアジア圏に絶大な影響力があった日本の敗戦による力の空白、それによる混乱を危惧していた事もあり、戦力を有する事と台湾の領有を認めた。

 これは日本の占領がアメリカ1ヵ国により行われた物であり、多国籍で行われたドイツでは出来なかったであろう。


 最も当初の戦力は陸海空軍合わせて30万人と日本の国土を防衛する上での最小限の戦力であったが、史実で見送られた護衛空母4隻の供与が実現しており、この世界の自衛隊は史実より少し規模も装備も優れていた。

 その引き換えに史実では約4.5万人駐留している在日米軍は約1万人程であり、在日米軍の象徴でもあるアメリカ海軍第7艦隊空母の母港は横須賀では無く中華民国領の海南島である。


 そんな日本だが、戦後の道筋は史実と殆ど違いは無く、朝鮮戦争による特需とその後の1ドル360円の激甘レートによる高度経済成長による完全復興と史実通りであった。

 政治に関しても史実と変わらず1975年現在も自民党による55年体制の途中である。


 そんな領土と安全保障以外史実通りな日本だが、新たな世界への門の出現と調査艦隊帰還に対する日本政府の答えは異世界への進出とそれに伴う大規模な調査艦隊の編成であった。

 そんなこんなで1975年7月20日には発見した島が人の手が入ってない事が詳細な調査により判明し、翌8月7日には日本政府は発見した島々を領有を正式に表明、国際社会の承認を求めた。

 当初は難色を示した国際社会だったが、日本政府により領有を認めなければ門の通過を認めないという主張が出てきた事で認め始めた。

 現時点でこの世界に繋がる唯一の門は小笠原諸島の西方100km、日本の排他的経済水域内にあるのだ。

 つまりこの門は日本の物であり、その門を通過するには日本政府の許可が必要なのだ、各国は認めざるを得なかった。


 新たな島は新海島と呼ばれ、新海島とその周辺の島々は台湾と同じ扱いである特別自治州として扱う事が国会で決まった。

 この新海島、数ヶ月に渡る詳細な調査で面積は約12万4000㎢と北海道の約1.5倍もの広さがあり、島内は非常に自然が豊かであり、高さ4000m級の山もあり、降水量も多かった。

 1976年月4日に当初約500名でスタートした新海州という自治体は4年後の1980年には約80万人、14年後の1990年には約260万人、24年後の2000年には人口は560万人にまで膨れ上がっていたのである。

 最もこの人口の中身は日本人だけで無く海外から日本以外からやって来た人達も含まれており、人口における日本人以外の割合は約4割にまでなっていた。

 特に1981年と史実より10年早く発生したソ連崩壊により多数のロシア人が移民としてやってきており、その数は一説に約100万人とも言われている。

 新海州は日本なので公用語は日本語であるが、街中には日本語の他に英語とロシア語が併記されている所が多い、最も学校で教えるのは日本語と英語のみである。


 新海州の人口が増えるにつれそれに伴う社会インフラの整備も行われ、1982年には州都の新海市から新海州第二の都市扶桑市まで高速道路が整備された他、鉄道や港湾施設、空港まで整備されていった。

 新海州は日本以外の特に欧米の会社が多数進出して来た事もあり、街並みは日本の街並みというよりかは何処か欧米に似ていた。

 更に各企業は州政府の許可を得て多額のインフラ投資を行った為、新海州は各国、各企業の持つ最先端技術が投入され、新海州はかつてないスピードで発展していった。



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