表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と影のシンフォニア  作者: シャオえる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/70

ここは、楽しくて悲しい場所

「お話しするの?」

「うん、歩くの面倒だから、ここでいい?」

「いいけど……」

 アカリの返事を聞いて、その場にすぐペタンと座り込んだ女の子。うーんと背伸びをしている様子を見ながら、アカリも恐る恐る隣に座った。しばらく二人無言のままでいても、真っ白な視界は変わることのないまま。ふと、ニコニコとご機嫌で上を見ていた女の子に、アカリが顔を近づけて話しかけた

「ねえ、あなたお名前は?どこから来たの?ここはどこ?ヒナタどこ行ったか知ってる?」

 さっきまでの不安そうな雰囲気とは違い、グイグイと質問しはじめた

「待って。答える前に、ほら見て」

 近づいてくるアカリの体を押さえると、横に顔を向けた女の子。アカリもその方に顔を向けると、見たことのない親子が楽しそうに絵本を読んでいる姿が現れていた

「なに……誰?」

「あの人達はね、あの本棚にあった本の思い出なの」

 女の子がそう言うと、あちらこちらから楽しそうに遊ぶ子供の声やそれを見守る大人達の笑顔がアカリの周りに溢れだす

「みんな、笑ってる……」

「うん、ここは楽しい思い出だけを集めた本棚だからね。……けど」

 そう言って苦笑いする女の子に首をかしげていると、アカリの周りに聞こえていた楽しそうな声達が少しずつ消えはじめていた









「ねえ、どこ行くの?」

 アカリが女の子の隣に座って話をしているその頃、暗闇の中女の子に手を引っ張られ続けながら歩いていたヒナタ。何度、問いかけても返事をしない女の子に少し苛立ってきて、話しかけてた声が、ちょっとずつ大きくなっていく

「暗いし、お母様もアカリとも離れちゃいそうだから、あまり動きたくないの。だから……」

「ヒナタ。見て、ここ」

 足を止めた女の子の見つめる先には、一人うずくまっている男の子がいた。グスグスと泣いている声が聞こえてきて思わず、女の子と繋いでいた手をぎゅっと握り返した


「泣いてる……」

「うん、嫌なことがありすぎたんだって」

 女の子の話を聞くと繋いでいた手を離し、男の子に近づき肩に触れようと、そっと手を伸ばした瞬間、ガシッと強く腕をつかまれ驚くヒナタ。つかまれた方に振り向くと、女の子がゆっくりと顔を横に振っていた

「ダメだよ。あまり近寄ったらヒナタも悲しくなっちゃう。そうしたら、アカリにもう二度と会えなくなるよ」

「……アカリが、どこにいるか分かるの?」

「知ってるよ。でも私だけの力じゃ、今は会いに行けないの」

「教えて。イチカにも早く会いたいの。だから……」

 女の子に急かすように、思わず早口で話しかけるヒナタ。二人が話し合っていると、いつの間にか男の子が消えていなくなっていた。ヒナタが男の子がいた場所を呆然と見ていると、またグイッと強く腕を引っ張られ、少しよろけて転けそうになっても、女の子は気にせずヒナタの腕を引っ張ったまま、再び歩きはじめた

「もう少し歩こう。まだ見せたいものがたくさんあるの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ