不安を取り除く言葉
「ヒナタは見つかったかね?」
「はい。街外れでご飯を食べているみたいです」
クロスとレイナの部屋に着くと、ヒナタを探すために集まっていた家政婦達に声をかけたクロス。少し緊張感のある部屋の中、一人ヒナタの居場所を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす
「それは良かった。本も一緒か?」
「はい。一緒にパンを食べていて楽しそうにしていますよ」
「そうか。ヒナタらしいな」
現在の報告を聞いてクスッと笑うと、部屋中にあるたくさんの本の中から一冊を取り出して、読みはじめたクロスを、困ったように顔を見合わせる家政婦達。ノアもクロスの様子を見ながら、ふぅ。とため息ついて壁に持たれた
「アカリ様はどうしますか?ずっと、探していると言うのもさすがに……」
「今からレイナと街に行くと言っていたから、今は何も言わずにいるように。レイナには、なるべくヒナタと逆の方向に捜索するように伝えておかねばな」
本を受け取り、そう話すクロスにノアや家政婦達は何だか浮かない表情。それに気づいたクロスが少し首をかしげた
「どうした?」
「あまり、ヒナタ様にもアカリ様にも良くないのでは……」
「そうだな。本当なら……」
と、話をしていると突然、コンコンと扉を叩く音が響いた
。慌てて持っていた本を背中に隠した家政婦達。その直後、そーっと部屋の扉が開くと、アカリが寂しげな表情で扉の隙間から覗き込んできた
「お父様、まだお話続きそうですか?」
しょんぼりとした声で話しかけるアカリ。その声と表情を見て、アカリに思わず駆け寄って抱きしめた
「ごめんね。もう終わるよ」
レイナや家政婦、ノア達が見守る中、抱きしめられてお返しにともっと強くクロスを抱きしめるアカリ。少し顔を上げて、じーっとクロスの顔を見た
「お父様。ヒナタは見つかりましたか?」
「いや。でも、もう少しで見つかるかもしれないよ」
「……本当に?」
「ああ、だから悲しい顔をするのは、もうお止め」
クロスの言葉に少しずつ笑顔が戻ってくアカリ。クロスから離れて、レイナの所に走ってぎゅっと抱きついた
「うん、早くヒナタ見つかるといいな!」
笑顔のアカリを見て、頭を撫でて微笑むレイナ。二人の様子を見て、クロスが部屋の扉を開けた。それに気づいたレイナがアカリの手を引いて部屋を後にした。それに続くようにノアも部屋を出ると、同じく部屋を出ようとドアノブに手をかけたクロスが、ふぅ。と一つ深呼吸をすると、部屋に残る家政婦の方に振り向いて声をかけた
「すまないが、後を頼む。何かあればすぐ報告を」
 




