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ランドロス

 どうしようかと思っていると、クウカはトンと余っていた席に座りだす。


「あのね、みんなロスくんのことが好きで自分を一番に思ってほしいとかさ、自分がロスくんの初めてをほしいってのも分かるよ? でもね、ロスくんの気持ちもあるしね。ちょっと落ち着こう?」


 ……ストーカーが一番マトモなことを言い出した。留置所にいたガルネロに説教されたとき以来の衝撃だ。

 いや、そりゃそうなんだけど、お前が言うのか……?


「ロスくんもね、あまりベッタリじゃないネネちゃんを除くと一番年上でしっかりしないとダメな立場だよね? なのに半分ぐらいの年齢の女の子相手に押し負けたりするのはどうかと思うよ」

「い、いや……それは否定出来ないが……」

「どうしても性欲が我慢出来ないなら私がしてあげるから、ね?」

「いや、それはいらないが」


 何故俺達はストーカーに仕切られているのか……。普段なら比較的ハッキリと言うカルアに少し元気がないせいかもしれない。


「元々ルール自体が作られた当初から形骸化してたんだよね。カルアは元々ルール外、クルルは隙あらば、シャルもいけるときはいく、という具合でね。そもそも、三人しかいないのにひとりだけ例外って言うのは無理だよ」

「そ、それはそうかもですけど……。でも、ランドロスさんの赤ちゃんが欲しいというのはとてもよく分かりますから止められないです」

「それは分かるけどね。その感情と、自分が一番愛されたいって気持ちは矛盾してるよ」


 シャルは言い負けて「うう……」と口にする。


「でも、それならどうしたらいいんですか? 両方本当の気持ちなんです。ネネさんは積極的ではないですけど、積極的でとても綺麗な人たちですから……」

「一律禁止や全部オッケーみたいに極端に考えるからダメなんだよ。いつなら良いとか、こういう状況ならいいとか、そういう守ることが出来るルールを作るのが大切なんだよね。そもそも、家庭内のルールみたいなのが全体的に雑だよね。家事とかの振り分けとか金銭の管理とか雑だよ。お嫁さんとお嫁さん候補が私含めて五人もいるのに、普通の家庭よりも適当なのは流石に破綻するよ」

「……そうですね、四人もいるのに」

「五人ね」


 怖い。あとストーカーなのに正論はやめてほしい。

 まぁ……そういう話し合いは大切か……。

 宿が壊れていなければ、今頃シャルとイチャイチャしながら色々なことが出来ていたはずなのに……。


 正直なところ、長年望んでいたことが頓挫したことや話し合いは得意ではないことで少し気が落ち込んでいるが、このまま何もしないというわけにはいかないか。


「……家庭内のルールですか。一応、この前、話はしましたよね?」

「まぁ雑というのは確かじゃないか? なんだかんだシャルに家事の負担が寄っているとは思うしな」

「家事と言っても、ご飯は作ってないのでお洗濯とお掃除ぐらいですよ? 僕ひとりでやってるわけでもないですし」

「……誰かがランドロスさんの赤ちゃんを身籠ったらそういうわけにはいかなくなるので、確かにちょっと考えた方がいいかもですね」


 今の家事の割合は主にシャルが担っていて、他の人が時間があるときに代わりにやったり一緒にしたりという具合である。

 洗濯だけは俺にはやらせてくれないし、四人分も洗うとなるとかなりの時間がかかり体力を使う作業である。


 それでひとり動けなくなったら問題だ。


「まぁ……性的な問題は後として、家事の分担は変更というか是正した方がいいと思う。あと、やっぱりシャルが自由に使える金がないのも」


 俺がそう言うと、シャルは首を横に振る。


「僕以外はみんなお仕事をしていますし、僕のお手伝いまでしてもらってます。お買い物も一人ですることはないですからお気遣いは必要ないですよ」

「いや、やっぱり俺ももう少し家のこともしないとな。カルアが言うように迷宮に行く量を減らしたら時間も余るしな」


 シャルはじとりとした目を俺に向ける。


「そう言って、服とか下着とかを触りたいだけじゃないですか?」

「……いや、そういうつもりじゃなく。……そもそもなんでシャルはそんなに頑なに金銭を持つことや余暇を持つことを嫌がっているんだ?」

「なんでって……必要がないですし……」


 いや、ないってことはないだろ。

 クルルに目を向けると頷いたのでとりあえずシャルの意見を却下することに決める。


「そう言えばネネは別のままだよな?」

「そうだね。お金の話なら私も別だよ」

「無理に一緒にする必要もないが、一応後で意見を聞く方がいいか。拗ねるかもしれないしな」

「拗ねはしないと思います。……家事をするお手伝いさんを雇ったりしますか?」

「子供とか出来たらそうなるか。……メレクのところとかどうやってるんだろうか。メレクに生活能力とかなさそうだが」

「えっ、メレクさん、時々寮のお掃除とかしてますよ。高いところは自分がやった方が早いとか言ってました」

「ベランダに洗濯物を干しているところとか時々寮の下で見ますよ」


 ……マジか。ええ、あの豪快そうな見た目で普通に家事とかのするのか。あの筋肉隆々な姿で……。

 いや、まぁ……当然一人で生活していた時期もあるわけだからな。


 俺が内心驚いているとクルルは小さく笑みを浮かべる。


「家事が出来ないのはミエナの方だね。メレクが結婚する前は、メレクに溜め込んだ服を洗濯させたり、汚した部屋を掃除させたりこき使ってたよ」

「今更だが、アイツらよく一緒にいるけどどういう関係なんだよ」

「普通に友達じゃないの?」


 普通の友達がそんなことをするのだろうか。まぁ詮索とかをするつもりはないが。妙な関係ということはないだろうしな。


「それはそうとして、しばらく一緒に生活して思ったことは、ランドロスは急な用事が入ったりして家事を任せるにはあんまり安定しないよね。シャルはギルドのこととかも頑張ってるから、そっちを少し減らしたら対応出来ると思うよ。あと、何かあった時のためにお金は持っておいた方がいいかなお金なかったら、プレゼントとかしたくなっても買えないでしょ?」

「確かにプレゼント……でも、ランドロスさんからもらったお金でランドロスさんにプレゼントするっておかしくないですか?」

「いや、選んだりすることに意味があるんじゃないかな」


 シャルは納得したのかしていないのか分からないが不思議そうに頷く。

 そのあとカルアが今までの話を簡単にまとめながら提案する。


「とりあえず、ランドロスさんにお洗濯はさせられないので、シャルさんがメインで、シャルさんが出来ない時や私やマスターが時間がある時は時間がある人がする。ランドロスさんは暇なときにお掃除をする……ぐらいですかね?」

「え、えっと……それだと僕のすることが……」


 反対しようとしたシャルにクルルがニコリと笑みを浮かべる。


「お料理とかに興味あるんだよね。そういうのはランドロスも喜ぶと思うよ」

「そ、そうでしょうか?」


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