第二回ウムルテルア家会議
カルアは困惑した様子で首を傾げる。
「えっ、いや……ランドロスさんのご趣味に合わせるとそうなるのではないですか?」
「なんだよ、俺の趣味って」
「えっと、ハーレムプレイしたいんですよね? そうなると必然的に他の子にも見られることにはなるので、抵抗感の有無は別として必然性がありますし……」
「……いや、別にしたいとは思っていなかったが」
というか、そもそもそういうことを許してもらえるとは思っていなかったので考えすらしていなかった。普通に考えて、そういうのは嫌だろう。
俺からすれば天国だろうが……特にシャルとネネはめちゃくちゃ嫌がりそうだ。
カルアは他の人と感覚がずれているし、クルルは……まぁエッチな子なので性的なことはあまり拒否しない気がするが。
「……じゃあ、今日……してくれますか? その、他の宿などに行って」
カルアは緊張した面持ちのあと、わざとらしい上目遣いで俺を見る。
……っ、あざとい。自分が可愛いということを分かっていてこういう甘えてきている。分かっている、わざとこういうことをしているのは、それは分かってはいるが……可愛い。
思わず頷こうとすると、隣に座っていたシャルがきゅっと俺の袖を摘まむ。
「……今日、一緒にいてくれないと、泣いちゃいます」
こっちも可愛い……! それにシャルの両親と約束した手前、泣かせるようなことは出来ない。
「シャルさんは二日も独り占めしてたじゃないですか。一日ぐらいいいじゃないですか」
「よ、良くないです。それに、その、今日はランドロスさんは僕とそういうことをするって約束だったんですっ!」
「その約束は不正なものです、無効です、無効っ!」
シャルとカルアの口論が始まってしまい、俺はどちらに付くことも出来ずにオロオロとしてしまう。
嫁同士の関係の管理なんて俺にそんな器用なことが出来るはずもない。
基本的に流されるばかりだったせいでどうすることも出来ない。
「シャルさんはずるいですっ! 嘘吐きですっ!」
「だ、だって、ランドロスさんが好きなんですもんっ!」
「私の方が好きです!」
「僕の方が好きですもんっ!」
どうしようどうしようと慌てていると、クルルは灰色の髪を揺らしてトンと机に手を置いて立ち上がる。
シャルとカルアはその動きに口を止めてクルルの方を見ると、クルルはそのまま椅子に座り直した。
自分に注目を集める動きをすることで静止させたのか。上手いな。
俺が感心していると、クルルはちょんちょんとカルアの頰を触る。
「まぁまぁ、カルアもシャルも落ち着いて。カルアは前からシャルが遠慮しがちで無理をしているのではないかって心配してたでしょ? 今回のことって本当にシャルに怒ってるの?」
「……別に、そういうわけではないですけど」
「ね? じゃあカルアが怒ってるのは別の理由があるわけだ」
「……そんなことは」
クルルの目が俺へと向く。
「……ランドロス、性欲に負けちゃダメだよ?」
完全に否定しようのない正論である。
シャルの誘惑に負けて股間の赴くままに行動しようとした俺が悪いのは間違いない。今回の件は完全に俺の不徳だ。
それはその通りなんだけど……今、自分のスカートの裾を摘んで持ち上げようか葛藤しているクルルには言われたくない。
「とりあえずね、二人とも、今日すぐってなるとどっちを選ぶにしても禍根が残るだろうから今日はやめておいたら?」
「ん、んぅ……僕は、元々中止の予定だったので構わないですけど」
「……私は……その、そういうことなら、仕方ないので諦めます。これからの一生を一緒に過ごすのに、ギスギスはしたくないです。……シャルさんのことも好きですし」
一応丸く収まった……のか? クルルがまとめてくれたおかげで一触即発といった空気感は霧散されたが、だからといってこの問題がなくなったわけではない。
「とりあえずね、このまま私が仲裁をさせてもらうね。えーっと、まぁ話すことは二つかな、ランドロスとどっちが先にえっちなことをするかと……シャルが約束を破ったわけだけどルールを変えるかどうかだね」
「……ルールを変える?」
「うん。このまま放置していたらランドロスを誘惑しないってルールが形骸化するでしょ? 撤廃するならする、ちゃんと罰則とかを考えるならそうするでちゃんとしないとね」
「……ああ、そういうことか」
俺としては……どっちの方がいいんだ。やはりエロいことが出来る方がいいのか、それともそういうことばかりではなくちゃんと順を追って愛を育んだ方がいいのか。
「私はとりあえず撤廃でいいと思うんだけど。カルアだけ例外としてオッケーにしてたけど、ランドロスよりも歳上のネネが入ってきたことを思うと今のままのルールだと不自然だしね」
「……それはマスターさんがランドロスさんを誘惑したいからではなくてですか?」
「それもあるけど……。悪いことじゃないよね。好きな人と特別なことをしたいって、全部見せたいって」
シャルは自分が破った手前反論はしにくいのか「むぐぅ」と唸って俯く。
「私はどちらでもいいですよ。どちらにせよ許していただけるわけですし」
「……ん、んんぅ」
「でも、シャルさんにとっては邪魔なんじゃないです? 大人のネネさんを縛るのはルールとして不自然ですし、効力があるのはマスターとシャルさんだけなんですから」
「そ、それはそうですけど……風紀とか……」
シャルの目線はわざとらしくふとももを見せているクルルに移る。
「シャル、私はこれでもギルドの長だよ。ちゃんと自制は出来るし、えっちなことにハマって我を忘れたりはしないよ」
「……ルールを撤廃したら今日どんな格好で寝ますか?」
「……パジャマの下を脱ぐだけだよ」
「だから頷けないんですっ! マスターさんはエッチすぎるんですっ! すぐにランドロスさんを誘惑してっ!」
「す、好きな人に見てもらいたいだけだよ! 羨ましいならシャルもそうしたらいいじゃない! 別に私はランドロスに裸を見せるのに反対したりしないよ!」
…………やっぱり、俺の理性とかがもたなさそうだな。ルールなしだと。
ルールは必要だ。そうでないと我慢出来ずに襲いかかりまくってしまいそうだ。




