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引越し

 シャルは深く「はぁ……」とため息を口にして、買ったばかりのソファの上に俺とカルアを座らせ、L字型になったソファの横の方にぽすりと座る。


「あのですね。……僕ね、真面目に掃除してましたよ」

「……はい」

「そしたら、お二人がね、してたわけです。ちゅーを。約束していたことが全然進んでなくてですね」

「ごめんなさい」


 二人で頭を下げるとシャルはピシッと俺を指差す。


「さっき、カルアさんとエッチなことをするのは後にしたいって話してましたよね?」

「……はい」

「それが、なんです? 一日もしないうちにチュッチュしてるんですか。そ、それに、何か……その、変なことをしてましたよね」


 カルアが首を傾げる。


「変なことってなんですか?」

「そ、その……舌を、口の中に、入れて……ましたよね?」

「あ、そ、それは……あの、シャルさんはしてないんです?」

「し、してませんよっ! な、何をしてたんですか!?」

「ふ、普通ですからね。ああいうことは、恋人や夫婦ならするものです」


 シャルは顔を真っ赤にしながらパタパタと動かして俺の方を見る。


「そ、そんなおかしなことをするんですか? 舌を入れるなんて……」

「まぁ……嫌なら無理にとは……」

「……ど、どんな味がするんです?」

「え、ら、ランドロスさんの味がします」

「えっ、そんな味がするのか? ……ほとんど味がしないと思っていたんだが」

「まぁ……当然唾液なのでほとんど味はしないんですけど、なんか、味がするような気がしません?」


 しないわけでもないような、そうでないような……。興奮して感触とかに集中していてあまり覚えがない。


「と、とにかくですね。その、そういう行為についてはまた別としまして、反省、反省してください」

「ああ、悪い……。先に休んでいてくれ」

「いえ、僕もしますけど。早く終わった方がいいですし。ランドロスさんはお疲れでしょうし、夕方からミエナさんといくみたいですしね」

「……悪い」


 そうも優しく対応されると余計に罪悪感が強くなる。こんな子を一人働かせて、カルアとキスをしまくっていたのか……。


 急いで立ち上がって、テキパキとしていくが、異空間倉庫を使った作業や力作業以外では明らかにシャルの手際が頭一つ抜けている。


 考えてみれば戦いばかりの俺と、元お姫様のカルアが上手いこと出来るはずはないし、孤児院で色々と頑張っていたシャルがやはり手際がいい。


「……シャルさん、すごいですね」

「いえ……お二人が家事とかそういうのが苦手なだけかと。よし、と」


 シャルは新しく買ったベッドを設置したあと、寝室の窓の縁に小さな植木鉢をおいた。


「あれ、それは?」

「あ、ミエナさんからエルフ族の飲むお茶の若木をいただいたんです」

「ああ、孤児院でも育てていたもんな。……悪いな、持って来れなくて」

「えっ、し、仕方ないですよ。ああしないとダメな状況でしたし。でも、植物を育てるのは好きなので、ちょっと場所をお借りしますね」


 ミエナの部屋にあったものと同じ種類の木のようだが、手に乗るような大きさだ。

 俺が嬉しそうなシャルを見て和んでいると、カルアが「あっ、そうだ」という表情をしてシャルに言う。


「例の道具、育てるのにも使えるので、今すぐにでも大きく出来ますよ、それ」


 カルアの悪気のなさそうな提案に、シャルが「ええ……」と口にする。


「そういうのじゃないんですよ。カルアさん。そのですね、育てることが重要と言いますか……。それなら普通にお茶を買う方が早いですし……。そもそも元々孤児院では来客用に作っていただけですから、ギルドにいる以上はこの部屋にお招きすることはほとんどないので必要ないですからね」

「ええ……でも、育てる意味ってあるんです?」

「……カルア、別に意味があることをする必要はないだろ。カルアも意味はないけど俺とキスをして時間を浪費するだろ?」


 俺がそう言うとカルアは不思議そうにコテリと首を傾げる。


「気持ちよくて幸せになれるからしてるんですけど……。えっ、シャルさん、気持ちよくなれるから草を育ててるんですか?」

「めちゃくちゃ外聞の悪いことを言うな。ヤバいものを育ててるっぽいだろ、それだと。普通に趣味だ、趣味」

「趣味で植物を育てる……。ああ、私が世界を救うみたいな感じですね」


 ……えっ、世界を救うのって趣味だったのか。

 ええ……と思っていると、シャルがぽすんとベッドに腰を落とす。


 一応、一通り終わったので仮眠を取る前にアルバムの整理をするか。

 そう言えばアルバムを買うつもりだったのに買い忘れたな。と思いながら今日撮った写真を入れていき、それを眺めて軽く微笑んでいると、シャルがペッタリと俺にひっつきながらアルバムを見る。


「ランドロスさんって写真好きですよね」

「ん、ああ、写真というか……写真の中にいる三人がだが」

「でも、僕たちが目の前にいても写真を見たりしてることあるじゃないですか」

「まぁ……本物はあまりジッと見たり出来ないしな」


 写真なら思う存分、胸や脚を見ることも出来るが……本物のシャルを相手にすると怒られてしまう。

 カルアは仕方なく許してくれるし、クルルはむしろ見せてくれるが……シャルは、三人の中でも一番肌が出ていなくて身体の線も見えにくい服装なのに、一番恥ずかしがる。


「見てもいいですよ?」

「……そうか?」


 言われたままにベッドに座っているシャルのふくらはぎを見て鼻の下を伸ばしていると、シャルは布団を引っ張って脚を隠す。


「あ、あの……その、顔の話ではないのでしょうか」

「……あ、顔のことだったのか」

「……脚、好きなんですか?」

「……まぁ……好きだな」


 出来たら触りたいが……そんなの頼んだら嫌われるしな。

 そう思っていると、シャルが外を見て「あっ」と口に出す。


「そろそろ仮眠をしないとですね。……あの、ランドロスさん、ひとりで寝れますか? 一緒にじゃないと寝れませんか?」

「……シャルって、時々俺のことを歳下の子供扱いしてるよな。……まぁ、一緒にいてくれる方が嬉しいけど」

「そうですか。仕方ないです。……カルアさんはどうしますか?」

「……ん、ちょっと買った服とかを整理しようかなと考えてます。そのあとはイユリさんと話しにギルドに行くつもりなので、後で起こしにきましょうか?」


 シャルは頷く。

 てっきりカルアも隣で寝るものだと思っていたので少し寂しく思うのと……シャルとふたりで寝るのが久しぶりなことに緊張する。


 まぁ少々エッチなクルルや、誘惑してくるカルアとは違うので、変なことにはならないだろうが。

 カルアが部屋から出て行ったのを見届けてからベッドに寝転がると、シャルに布団をかぶせられてポンポンとされる。


「じゃあ、おやすみなさい」

「……ああ」


 シャルと一緒だとやっぱり落ち着くな……と思っていると、シャルが布団の中にモゾモゾと入ってきて、俺に体を寄せながら、俺の手を取る。


 手を握りながら寝てくれるのかと思っていると、布団の中にある布地……おそらくシャルのスカートらしきものに指先が触れてスカートの裾を押しのけながら、奥に進んで、ふにゅりと柔らかい感触に指先が挟まれる。


「ん、んぅ……」


 とこそばゆそうにシャルが声を上げて、すりすりと俺の手を挟んだままそれが動かされる。


 布団の中でシャルのスカートの中のふとももに挟まれていることに気がついて一気に目が冴える。

 何でだ。何でこんなことに……!? と思っていると不意に先程のシャルの言葉を思い出す。「脚、好きなんですか?」それに俺は肯定の意を示して……。


 ああ、そうか、俺を喜ばせるために恥ずかしいのにこんなことをしているのだろう。

 ……嬉しい、めちゃくちゃ嬉しいが……下手に指を動かさないし、全然仮眠も出来ない。

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