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迷宮攻略

「そう言えば、初代はこれからどうするんだ? ずっと迷宮に潜ってる必要はなくなっただろ」

「あー、まぁ、そうだな。……つっても、地上にいても夜にはやることねえしなぁ」

「寝ろよ」

「俺と同じことが出来るならお前も寝ないだろ?」

「……いや、治癒魔法を使い続けていたら歳も取らないんだろ? それは勘弁だ」


 六年ほど治癒魔法を掛け続けていれば三人と見た目の年齢を合わせられるというのは魅力的ではあるが……まぁ、年齢が違うというのも捨てがたい。


 ロリコンと呼ばれるのは嫌だが、子供の彼女らと出会って好き合うようになったというのは大切な思い出だ。

 同じくらいの年齢というのも魅力的だが、今の関係もそう簡単に捨てたいものではない。


 出来ることなら同年齢かつ歳上で歳下がいい。……俺は何を考えているんだ?


「……まぁ、起きていられるのに寝るのもバカらしい。まぁ物資の補給や食事以外に戻ることはないかもな。とりあえず、60階ぐらいまでは連れていってやるよ」

「それはありがたいが……そういえば、迷宮って何階まであるんだ?」

「さあ、79階まではいったことがあるが……まぁあまり登るのには興味ないから分からないな。無限に続いてる気もするが」


 ……カルアの予想では生物の保全のためらしいので、無限というわけではなく限りはあるだろう。

 全身を汗に濡らしながら5階にたどり着き、ふたりに飲み物を渡して自分も飲む。


「……体力は回復してるから全然疲れていないが、熱が篭ってキツイな……」

「7階の河にでも浸かって体温を下げるか」


 頭から水を被ってから再び全力で走る。迷宮攻略というか、ただのマラソンになっている気がするが、効率はいいので無視である。


 またしばらく魔物を蹴散らしながら走り続け、何階層にたどり着いたところで空間把握を広げて危険がないことを念入りに確認してから俺とメレクは河に飛び込む。


「あー、生き返る」

「……体力が保つかどうかじゃないんだな。ただひたすらに熱がキツい……」


 河の冷たい水で身体を冷やしていると、初代は俺たちを見てため息を吐く。


「最近の若い奴はすぐに根をあげるな」

「いや、こんな暑いとは思ってなかった。あー、水が気持ちいい。……メレク、大丈夫か?」

「……身体がデカいとその分、熱が籠るんだよ。治癒魔法が効いてるから問題ないといえば問題ないが、冷えるまで休憩させてくれ」


 初代は「全く」と言いながら河に飛び込んで、男三人で熱のこもった身体を冷ましていく。

 ……せっかく河に浸かるならカルアとかシャルとかマスターとかと一緒に来たかったな。……服が濡れて透けた三人を見たい。まぁ、危険な迷宮に三人を連れてきたくはないが。


 河の水で身体を冷ましてから、上半身の服を脱いで、男三人半裸で走り続ける。迷宮の中で半裸の男が三人走るという異様な光景。


 しばらく走っていると、見覚えのある顔が目に入り、メレクが声をかける。


「おお、炎龍の翼の、こんな低階層で奇遇だな」

「ランドロスとメレク……それに【不眠不休】のグライアスか。…………なんで半裸なんだ」


 炎龍の翼のギルドメンバーと共に歩いていたダマラスは俺たちの格好を見て突っ込む。


「いや、走っていたら暑くてな。俺の魔法があるなら荷物は持たなくても大丈夫だし、初代がいたら不意に魔物の攻撃を食らっても治癒魔法があるか、問題ないしな。……あー、もしかしてそこの人がこの前言っていた奥さんなのか?」


 少し気の強そうなつり目がちの女性が小さく俺に頭を下げ、俺も同じように会釈をする。

 ダマラスに比べてかなり若く見えるが、どうにも距離が近く親密そうだ。


 ダマラスは頷き「妻のアラツだ」と半裸の俺たちにドン引きしている女性を紹介する。

 メレクが軽く握手をしようと手を伸ばすが、女性はシャーッとメレクに威嚇をする。……まぁ半裸だしな。


「わ、悪い。ちょっと人見知りでな」

「言うほど人見知りじゃなければ平気な状況か? 俺が言うのもアレだが、半裸の男が三人だぞ」

「……そうだな。自覚があるならちゃんと服着ろよ、ランドロス」

「そうだな、考えておく。じゃあまた」


 炎龍の翼の面々に軽く挨拶をしてからまた三人で走り始める。

 俺の前を走っている半裸のメレクに声をかける。


「……なあ、ダマラスって三十代中頃だよな、それで奥さん二十代ぐらいに見えたんだが……もしかして、俺と同じで歳の差婚なのだろうか? ダマラスと奥さんの方が歳の差ありそうだし、やっぱり俺は普通じゃないか?」

「いや、三十代と二十代と、二十歳と十歳では全然違うと思うが。いや、別に責めるつもりはないけどな」


 いや、しかし幼なじみと言っていたし、俺たちぐらいの年齢の時に、似たような関係だった可能性も……なくはないのではないだろうか。


「……そういや、メレクはサクさんとどんな感じなんだ?」

「どんな感じってもな。普通に仲良くやっているが」

「なんかルールとか決めてるか?」

「いや、別に……まぁ、月に一度はデートするとかだな」


 月に一度……クルルと逢引宿に泊まった時のことを思い出す。

 ああ、仲良くやってるんだな。


「ルールってわけじゃないが、個人的に気をつけているのはちゃんと礼を言ったりとか、なんかお洒落をしていたら褒めたりだな」

「……なるほど」

「褒めるか……」


 昼に帰った時に褒めてみるか。

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