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われドラキュラのごとし
「われドラキュラのごとし」
誰か欲りせざる 誰か求めざる
匂いたち かおりたつ 今がさかりの
この乙女子をまえにして
修道僧のごとく また今際の老人のごとく
眉だに動かさぬなど 笑止千万
若者なら その情欲のままに求めればよし
さあらぬわが身には せめてドラキュラのごとく 血に代えて 清新ないぶき 色香なりとも
せちに吸いこみ 我ものとせむ
すれば 寿命ものびようか 気なり若返らんか
知らず…
いかにもわれ ドラキュラのごとし
「白き若肌に牙をたて 延命の美酒 赤き血潮をば 吸い取り 飲みほさん いのち愛づればなり 若さ愛づればなり おお、白き美肌よ! 乙女子よ!
を狂わすはそなたなり をつくり給いし造物主なり この狂気を鎮めよ 甘んじて我牙を受けよかし 殺むほどにぞ汝を愛づる 主の僕とては 御業の仕舞い手つこうまつればなり」
かほど狂おしき男爵の云いよう 心もよう
今この年になりて判ずるとは…
そはわが心 わが思いにて違わず
しかしながらさりながら
こはすべて心のうち 胸のうち
見せるおもては 分別わきまえたる紳士顔
眉だに動かさざるが世のならい したがわざるや