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最後のキスを

作者: 司川 えむ



この今の気持ちを、今自分が感じているこの感情を

どう表現すれば、どのように表現し、どのように

語り、言い表せば、自分以外の他人に、他者に

自分以外の誰かに、伝えることが出来るだろうか

共有することが出来るだろうかと考えた時に

その瞬間、考えたと同時に

それは不可能なことだろうと悟った。


私の中に今、芽生えたこの感情はこの想いは

私の中でしか成長しないし湧き上がらないし

私の中でしか劣化しないし風化しないし

私しか感じることが出来ない私が抱えるべき

思い重い想いなのだと悟ったのだ。


その人は言った。


好きな人がいるということ

私はその人の好きな人という感情が理解できないし

私は私が持っているモノサシでしかその人の感情を

測れないけれど、きっと私はその人の中では

もう好きな人では無いのだと悟った。


感情が私の中で爆発する

感情は私の中で爆発したはずなのに

感情は溢れ出し、私は涙で消火活動を行う

もちろん燃え広がる感情の炎は一晩の涙などでは

到底消え失せるものではなかったけれど

だけれど、なにかを消すことは出来た。


私自身は自分の中で何を消火し消化し昇華できたのか

私自身分からなかったけれど、だけどハッキリ言える

そんなことがあった。


もう一度キスしたかった


私はもう一度キスしたかった

関係を元に戻したいだとか、二番目でもいいから

傍においてだとか、復讐してやるだとか

そんなことは一切なかった

一切沸きあがることは無かった感情だけれど

これだけは、これだけはしたかった。


もう一度キスしたかった


これだけは譲れぬ感情だった

何をかもを抑え込むことが出来たとしても

この感情は自分の中でいちばん大切に思えた

たとえ他人に理解されなくともそんなことは

私はどうでもよかった、私の感情は

私のものであるし、私は私しかいないのだし

私の理解者は私なのだ。


私は最後にわがままを言うことにした

あの人に最後のお願いをしに行った

ねぇお願い、最後にキスさせてほしいと

それはもう土下座でもしてやろうかという覚悟

勢いであったけれど、その願いはすんなりと

いとも簡単にすんなりと、まるで手のひらを滑る

水がごとく、さらりさらりと受け入れられる。


ありがとう


接吻、唇と唇、体温と体温、人と人、女と男

舌と舌、唾液と唾液、血と血の味


私は唇に強く噛み付き、そこに全ての感情をぶつける

それはとてもとても気持ちの良いもので

どんな快楽よりもきっと気持ちよく心地の良いもの

そんなもののように思えた


気持ちいい、最高に、これ以上ない程の幸福


それを血の味で感じる、舌の上で幸福を転がす

舌で遊ぶ、甘美なものに思えた。


二度と味わうことの無い快感に

私は名残惜しさを感じながらも、それを飲み込み

そしてそうしてこれまでの私の苦悩、全てをも

同時に飲み込んだ。


これは私の感情で愛情、愛の形

ありがとう大好きでした。












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