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リディアの魔法学講座  作者: 高瀬さくら
2章 魔法実戦実習編
99/330

21.魔法陣2

 魔法陣を描くウィルがモニター越しに写る。

 リディアは魅入られたように凝視していた。


 ウィルが躊躇なく円を描く、慣れている。危なげない手つき。だが、東を向いた円頂にウィルが描いた印章を見て、リディアだけでなくシリルも驚きの声をあげた。


「大胆だな」

「非常識だけど――」


 東には、東の主の印章を描かなくてはいけない。なのに、その位置には別の――西の君の印章をウィルは描く。別の存在を描くのは、怒りを呼び起こし失敗を招く。


「止めるか?」

「でも、東の主への敬意のリュミナス古語も描いているし間違えたわけじゃない、意図的だわ」


リディアは、この魔法陣を見つめて頷く。


「あいつ、慣れてるみたいだな」

「確信犯ね」


 魔法陣に慣れ親しんだウィルだからこそ出来る離れ業。というか、こんなに魔法陣に秀でているのに、なぜ魔法陣学科に行かずに、魔法学科こっちにきたの?


 ――魔法陣の一番の利点は、たくさんの魔法術式を込められること。人が脳裏に術式を描くには限度がある。

 魔法陣は予め関連した方位に魔法術式と印章を置くことで、複合効果や時間差で魔法を発現させることができる。

 けれど、何でも描けばいいというわけでもなく、効果的な術式を整理して描くこと、効果的な印章の選択と配置、なによりも方位を守る存在に対しての敬意を示すお作法がけっこうある。


 魔法陣が東を向いているのは、東の主への敬意を示し、ここから魔法が始まるという意味である。けれどウィルは魔法陣の正面上位、本来東の印章を描くべきところに西の君の印章を描いた。


 魔法はすべて魔法相関図の通りに右周りに影響を与える。ウィルは、最初に西の君の支配効果である火の魔法を発現させたいから、西の君の印章を書いたのだろう。


 そして東の主への敬意を示しながらも、方位逆転の印章を描くことで、東に西の印章がある矛盾を強引に打ち消し、さらに内側の魔法陣に水と風の魔法である風化作用の魔法術式を描き、二重魔法陣とすることで時間差のある魔法を一つの魔法陣にまとめてしまったのだ。

 

 ぶつぶつとウィルの魔法陣を読みながら、リディアは唸る。


「うまいなー。うまいなー」


 ちょっと悔しい。魔法師団で趣味の魔法陣愛好会を作っていた血が騒ぐ。


「リディ、ちょい危ういぞ」


 シリルが示すのは、はるか遠方の空。沢山の影が上空から廃墟のオアシスに向かっている。リディアは眉を潜めて立ち上がる。


「――出るわ」


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