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リディアの魔法学講座  作者: 高瀬さくら
2章 魔法実戦実習編
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18.魔獣事情

「よし、もう見てもいいぞ」


 リディアは、瞼に張り付いていた大きな筋ばった手を引き剥がして、その手の持ち主のディックを睨み上げた。暴れたが、本気で大きな手で塞がれた。


「あんな汚ねーもん、お前は見ちゃ駄目」

「あのね、私は生徒をしっかり見てなきゃいけないの」

「っても、お前はまだ未成年で、オマケに処--」

「いいえ、成人になりました」


 ディックはリディアの視線に怯んでとある言葉を呑む。ウン、それ以上は言わないでね。


「ああ、そうそう、成人……成人かあ」


 ディックは腕を組んで、んーと首を傾げた。


「でもまだお前には、全然早い。絶対ダメ」


 リディアは、背後を振り返り映像部に声をかけた。


「今の映像記録、あとで私の個人端末(PP)に送って。生徒の対応、もう一度見ておかないと」

「修正いれろよ、局部は映すな」


 リディアの言葉に重ねるように命じるディックに、リディアは眉根を寄せた。


「あれ、ミミズでしょ? まさかほんとに――」

「わかんねーよ。最初に作った奴は、鶏とミミズと合体させたみたいだけど、いつのまにかジジイも混ざったな。いろんな生物を取り込むアメーバ遺伝子も持ってるかもな」

「うええ」


 なんでオヤジ顔になったのかは、考えないようにしよう。


 砂漠は不埒な研究者のキメラの捨て場所になりがちだ。コカトリスは自然に産まれた生き物じゃない、魔獣というより実験生物の成れの果て。キメラだ。けど、あの合体はひどい。


「しかも、あれ触手だよね」

「触手を捨てる奴も多いからな」


 触手は、生き物ではなく人間の製造物。最初は偶然か、欲望かでマッドサイエンティストが作った触手は、性業界に利用価値を見いだされ、あれよあれよと人気道具になり、一般人でも飼えるように合法化(エロ議員め!)されてしまった。


 しかし、意思を持たずただ増殖を繰り返し肥大化する触手に一般人が困り捨ててしまうのは、最近の社会問題だ。主に警察と消防が対処しているが、いろんな機能をつけて販売した性産業の頑張りのせいで、魔獣のように欲望に忠実になって、悪さをするようになると、魔法師団の出番になる。

 ちなみに今回のはミミズ型だろう、一般的にはイソギンチャク型が多い。


「私、触手嫌い」


 意思はないくせに、女と見ると本能で襲いかかってくる触手には、女団員は狙われやすいため任務は免除されることが多い。本領発揮とばかりに相手は興奮して手強くなるし、男性団員も捕獲された女性を見ると色々むらむらしちゃうらしく(なんかキモい)、リディア触手退治はほとんど免除してもらっていた。未成年だったし。


 だけど、別の任務中に偶然奴らにぶち当たったことは、何回かある。目もないくせにロックオンされると怖気が走るし、嫌がると余計にアイツラ興奮するのだ。


(でも、アイツがチャスに執着していたのはなんでだろう?)


 触手や魔獣が誰かに執着するのは珍しいのに。


「映像で見るにはいいんだけどな、実情知ると萎えるよな」


 リディアの冷たい眼差しにディックは笑う。


「お前はしらねーでいいからな。けがれんなよ」


 でも、私はあなたが金髪の巨乳が好みだと知っています。枕の下に雑誌を隠してあるのもね。ディックには、それを知っていることは言っていないが、子どものころから共同生活しているといろいろ見てしまうのだ。


 ちなみにディアンは、ブラウンの髪の知的なグラマラス美女が好みなのも知っている。スーツ姿の色気弁護士とかお姉さま系。昔、ベッドの上に雑誌が放り出されているのを見た。


 リディアは全く当てはまらない。……別にいいけど。


「私、そろそろシリルと合流する」

「ああ、俺はガキについて街路を張るわ」


 リディアは、仮本部のテントを抜ける。

 中にはモニターがあり、随時生徒の様子を映し出していた。

 

 フードを下ろして、遮光強度を上げる。

 ここは、グレイスランドから内陸奥の東に位置する部族連邦国にある黄色砂漠だ。この砂漠はリディアの知る南東砂漠よりも岩が多く、歩きにくい。


 ソードの庭ともいえる南東砂漠は巨大な不毛地帯だ。その砂漠を超えると魔界とのゲートがあり、そのため砂漠には魔獣が多発し、おまけに好戦的な南の隣国が常に砂漠越えをして領地を広げようと狙っている。

 

 リディアもそこで育ったようなものだが、久々の砂漠の太陽光と乾燥に肌が悲鳴をあげている。水の防御膜を厚くする。

 

 久々の砂地に足がよろめいたが、だんだんと歩き方に慣れてくる。

 

 砂山を幾つか越えて、岩山を登ると、ライフルを構えるシリルの姿があった。


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ありがとうございます。楽しんでいただけますように。
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