45.シルビスの謎
「リュミエール人……」
キーファは呆然としていた。
「待ってください、確かに創世記では光の主を模したリュミナール種族に魔法を授けた、とありますが……リュミエール人とは」
現在、人間の種族分類は多岐にわたる。例えば、身体的特徴からの分類、それから宗教的、時には人種差別的な分類方法もある。
いずれにしても社会的構造から生まれたものが大きい。
創世記にあるリュミナール人種というのは、光の主の恩恵を受けたもの、という宗教的かつ光の主の魔法を授けられた人種という意味合いで、北・中欧諸国連盟に多く、グレイスランドも四割がリュミナール人種であると言われている。
「リュミエール人とは、神代の時代から他の種族の血を入れていない神の魔法そのものを操る人々と聞きましたが……」
キーファ自身も多くのグレイスランド人と同じようにリュミナール人種であるが、千年以上も前の大戦で国どころか地形も大きく変わり、人種も入りまじり、わかっていることは、自分たちはリュミエール人ではないということだけだ。
リュミエール人は、伝説上のものだと思っていた。
「だから純血にこだわって……いや、彼ら自身はそれを知っているのでしょうか?」
それならば、もっと声高に国際社会で主張しているはず。あれだけ歴史の古さや聖地としての選民意識に溢れているのに。
まして、それならばなぜ魔法の教育が進んでいないのか。
“――さてのう。あれほど気位が高い奴らが、自慢せぬ理由は我も知らぬ”
キーファは考える。少なくとも、王族が知らないわけがない。
では、リディアの兄はどうだろうか。
(彼が、リディアを利用する理由はどこだ。どうやって使う?)
実の兄であるアレクシスが、リディアを利用するなど考えたくない。だが、あの男は迷いなくそうするだろう。
画像は キーファとニンフィア・ノワール《黒睡蓮》
FA提供 汐の音さま。
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