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リディアの魔法学講座  作者: 高瀬さくら
1章 大学授業編
20/330

14.キーファの魔力値

 続いてリディアは、キーファが測定器に並んでいるのに声をかけた。


 [E : 350mp/s, V : 400mp/s, A : 400mp/s, F : 450mp/s,T : 500mp/s, O : 500mp/s]


「――って、高っ。測定器が上限五百だから、高度測定器で精密に測ればもっといくんじゃない?」


 T(土属性)、O(金属性)は、絶対五百を超えている。他だって正確に測ればもっと高値になるだろう。


 リディアの値なんか、もう目も当てられない。教員としての立つ瀬がない。これは、上級魔法師マスターにすぐ認定されてもおかしくない。


 だけど、キーファは寂しげに笑うだけだ。


 何も言わずに、掌を魔石盤に載せる。即座に全ての魔石が発光する。


(反応もいい。というか、全ての属性との相性がいい、反発し合うものがないって――)


 それこそ、おかしい。


 通常は火属性が高ければ水属性は低くなり、その逆もしかり。数値でみれば、水属性の方が低いから、彼の値はおかしくは思えないが、魔石の反応でみると全ての属性が同じだけ強く反応するなんて、彼の中の魔力は――どうなっているのか。


(それこそ、六属性の上位の――)


 ――不意に魔力の上昇を予感し、背後からの敵意に振り返る。

 風が頬を掠めた。


 リディアは、振り向いて頬に手を触れる。チリリとした痛み。

 指に、赤い血がついていた。


「まどろっこしいんだよ、アンタ」


 階段状に並ぶ席の最上段。扉を背にして立つのは、銀色の直毛、エルフ独特の長い耳、眦に赤い刺青を入れた青年が指をつきつける。


 彼の指先に、僅かに魔力の残滓が漂う。攻撃系の魔法だ。


「――マーレン・ハーイェク」


 リディアはその名を呼んだ。


(ようやく出て来たわね。――殺戮王子)


「アンタ、殺し合い集団にいたんだろ? そんな機械じゃなくて、殺し方見せろよ」


 彼の後で、あわあわしているのが従者のヤン・クーチャンス。


「殿下、先生に攻撃をするなんて! ああ先生、すみませんっ」


 リディアは従者兼生徒のヤンには構わず、マーレンに目を据える。


「この授業では、魔力測定を目的にしています。私の実演は予定していません」


 このやんちゃ王子様は赤い刺青もあいまってか、とても目つきが悪く見える。


 ――マーレン・ハーイェク・バルディア。


 攻撃系の魔法が好みで、昨年度の学年別対抗戦では広範囲の殺戮系魔法を敵味方関係なく連発。ついたあだ名が殺戮王子。


 停学になっていたはずなのに、なぜ進級できたのかは謎だ。


(――教授が点数稼ぎに引き受けたのかもしれない)


 リディアが知るのは王国魔法師団の時の情報。


 彼の国のバルディアがとても好戦的なこと、そして十八人いる王子達が、王位継承を巡ってお家騒動を起こしていること。


 バルディア国で魔獣被害が多発した時に要請をうけて、グレイスランドの魔法師団として派遣されて、バルディア軍と一緒に行動をとったことがあるが、この五番目の王子様を見たのは初めてだ。


「殺し合いじゃ、敵の魔力属性なんてわかんねえんだよ。使えねえ授業してんじゃねぇよ」


(でも、授業に出てきたってことは、興味があるってことよね)


「ようは、『かまってちゃん』ってことかな」

「あ? やるか、テメェ」


(やばい、やばい。失言すると、すぐ訴えられてしまう)


「――いいでしょう。実演はなしと言いましたが、今回は予定を変更します」


 頬を拭う指についた赤い血を見下ろす。


(――誰に喧嘩を売ったのか、思い知らせてやろうじゃない)


 リディアの中の好戦的な血が騒ぐ。



 ――舐められないようにするには、初回が肝心。それは鉄則だ。



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