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第6幕
「うあぁ」
呆然としていた従兄の耳に、Tさんの声が届いた。
見ればすぐ目の前にいたTさんが、何者かによって後方に引きずられているかのような動きで、ライターの灯りの届く範囲から消えたのだ。
「Tさん!」
従兄はTさんの消えた方向に向かったが、Tさんの姿を見つけることは出来なかった。
その後従兄は、一晩中Y先生とTさんを探したのだが、無駄だったのだと言う。
朝になり、警察と学校にそのことを告げた。
当然、立ち入り禁止の旧校舎に入ったことに関して、従兄は責められたそうだ。
警察も旧校舎をくまなく捜したそうだが、何も見つけることは出来なかった。
「絶対にあそこにいるはずなんだが……」
従兄はそう言った数日後、その姿を消した――