第5幕
「どうもね、懐中電灯の接触が悪いみたいなんだ」
「悪いって、どういうことです?」
「もしかしたら、もうじき消えるかもしれない」
「消えるって、それってどういう……?」
Y先生の問いかけの直後、辺りは一瞬にして闇に包まれた。
「いやあああああっ!!」
Y先生の叫び声が、けたたましく響き渡る。
「ちょ……Y先生、落ち着いて! 今すぐ、明かりをつけますから!」
従兄も恐怖を感じてはいたが、それ以上に怖がっているY先生を見て、なんとか冷静さを失わずにいられたらしい。
「Tさん、懐中電灯はつきそうにないですか?」
「ああ、こっちは駄目だな」
「えっと、何かないかな……」
従兄は、暗闇の中で自分の体を確認する。すると、指先が何かに触れた。それは、ガス式のライターだった。
キンという金属音を奏でながら、火を灯す。橙色の優しい光が、その場を照らし出した。
「あれ……?」
従兄もTさんも、すぐに異変に気がついた。
「Y先生……?」
そう、Y先生が消えていたのだ。つい先程まで、声も枯れんばかりに叫んでいたY先生が、ライターの火の明りが届く範囲から、音もなく忽然とその姿を消したのだった。
3人の子供とその親が失踪した原因を突き止めるため、旧校舎を訪れた従兄、Y先生、そしてTさん。
この時、従兄とTさんはさらなる犠牲者を生んでしまったかもしれないという恐怖を感じ、しばらくの間、ただその場に立ち尽していることしかできなかったのである――