第4幕
「何かって、僕たちの後ろに何かいたんですか?」
そう言いながら従兄が振り返ろうとした時、
「振り向くなっ!!」
Tさんの怒鳴り声にも近い声が、旧校舎内に響き渡った。従兄が、Tさんを知るY先生にあとから聞いた話では、これほどまでに激昂したTさんを見たのは初めてだったという。
「あの……」
しばらくは無言で旧校舎内を歩いていた従兄たちだったが、Y先生が突然に話し出したので、従兄もTさんも歩きながらY先生に目を向けた。
「どうして、今さらだったのでしょうね」
「何がですか?」
従兄が尋ねる。
「警察ですよ。普通、子供が3人もいなくなったなら、すぐに捜索するんじゃないですか?」
「うん……」
「3人の親御さんは、みんなして警察に届けを出さなかったのかしら。でも、どうして……?」
「すぐに戻ってくると思ったからじゃないですかね? いなくなってすぐに警察沙汰にして、実はちょっとした家出だったということもあるかもしれないから」
「でも、1週間ですよ? 小学五年生の子供が3人、1週間も行方知れずなんですよ? 1週間経って捜索に出た親御さんも行方不明になって、ようやく警察が動き出すだなんて……行動が遅くはないですか?」
「まあ、田舎ですからね。住民も警察も事件慣れしてないんですよ、きっと」
その時、懐中電灯の明かりが大きく揺れた。
「どうしたんですか、Tさん?」
Y先生は震える声で尋ねる。
もともと、旧校舎に行くことを提案したのはY先生だ。そんなY先生には、霊や暗がりに対する恐怖心などないのだろうと従兄は思っていた。しかし、旧校舎に入ってからのY先生は、ちょっとしたことに過敏に反応し、常に落ち着かない様子だった。