第3幕
「C! どこだ、C、おーい!」
旧校舎の中には淀んだ空気が立ち込め、足を踏み入れた従兄たちに重くまとわりついてきた。
「C! Cーっ!」
「待って、Kさん。Tさん、明かりをお願いします」
暗闇の中を一人ですたすたと歩いて行こうとする従兄を制し、Y先生は懐中電灯を手にしたTさんに声をかけた。
「うん。ちょっと待ってね」
そう言いながら、Tさんは暗闇の中、懐中電灯のスイッチを手探りで探す。
「あれ、あれ?」
「もう、何しているんですか?」
一向に明るくならないことに苛立つY先生の声が聞こえた。その声は、寒さかあるいは恐怖のためか、少し震えているようだった。
「よし、ついた!」
Tさんの声とほぼ同時に、辺りがぱっと明るくなる。従兄とY先生は、ほっと安堵のため息をついた。しかし、Tさんだけは、これでもかというほどに目をかっと見開いて、従兄とY先生を凝視していたのだ。
いや、違う。
あれは、従兄とY先生に向けられた視線ではない。その奥……二人の背後に向けられたものであったのだろうと、従兄はのちにそう言っていた。
「Tさん……」
Tさんの尋常でない様子に、Y先生は顔を引き攣らせながら震える声で呼ぶ。
「Tさん」
強い口調でY先生が呼ぶが、目を見開いたままTさんは動かない。
「Tさん!」
今度は、従兄がさらに強い口調で呼びかけた。すると、Tさんははっと我に返った様子で、
「あ……ああ……」
と、よくわからない声を上げていた。
「Tさん、どうしたんですか? まさか、何か見たんですか……?」
Y先生の声は明らかに震えていた。