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第42話 レオと秘密の……

「おし、これでいいかな」


 ダンジョンで伐採した木をアルトナー家の前に置く。乾燥させるため、一週間程度だ。倒れないように紐でくくりつけるのも忘れない。


「やぁ帰ってきたんだね」


 木を並べている俺の背後から声がして、振り向くとそこにはレオがいた。


「おう、昨日のうちにな」


 作業を一旦止めてレオを向く。相変わらず爽やかな雰囲気を纏っている。


「そうだったのか。お昼過ぎまではボクもいたんだけどな」


「とりあえずありがとなレオ。ミアが世話になった。それとエミリーなら中にいるぞ」


「分かった。朔夜も外で弄るのはほどほどにね。ちょっと怪しいから」


 確かに見慣れぬ若い男が家の前でこそこそと作業をしていたら怪しく映るかもしれない。ご近所さんとはまだまだ仲が良いとはいえないからな。元気で愛想が良いアルトナー姉妹と違って。


「そうかよ。気を付けるよ」


「じゃ、お先に」


 レオは勝手知ったるといった感じでアルトナー家へと入って行った。


 それから俺も手早く作業を終わらせて中に入ると、リビングの楽しそうな談笑が玄関まで聞こえてきた。


 一度洗面所で手を洗ってからリビングへ移動する。


「でねでね、ミアの料理美味しいってお姉ちゃんとサクヤが!」


「ははは、ボクも食べたかったなミアちゃんの料理」


 レオとミアが同じソファに座り、エミリーは向かいのソファに座っている。レオの前で少し気まずいが、エミリーの隣へ腰を下ろした。

 でもそこしか空いていないのでしょうがない。


「レオくんはお昼に一緒に作って食べたじゃん!」


「それもそうか、あはは」


 レオとミアは本当に仲がいいな。

 将を射んと欲すれば先ず馬を射よという格言通り、ミアと親しくなってからエミリーに近づいたのかと一瞬考えるが、ダンジョンでエミリーに助けられたのが出会いだったと思い出す。


「そういえばレオくん、ダンジョンに行っている間、ミアの面倒を見てもらってありがとうございます」


 頭を下げるエミリー。


「朔夜からもお礼を言われたよ。別にそんな畏まらなくていいのに。ね、ミアちゃん」


「ふふ、うんレオくん!」


 ニシシ、と聞こえてきそうな表情で笑い合うミアとレオ。


 気にするなってことか。こういう嫌味のない感じもモテる秘訣なのだろうか。

 俺だったら言葉に詰まって、『大丈夫問題無い』くらいしか言えないだろう。


「ふふ、分かりましたレオくん。あ、そろそろお昼ですが、レオくんも食べていきますよね?」


「ありがとう。頂くよ」




 昼食を食べ終わり、自室へと向かう俺は後ろから声をかけられる。


「なぁ、朔夜。少しの時間でいい。ボクに付き合ってくれないか」


 レオから誘われるのは珍しい。

 俺としてはミアのこともあったし、協力は惜しまない。恩を返すのは当然のことだからだ。



 レオの後を追って王都を歩く。

 途中で気付いたが、彼が案内するのはダンジョンへと続く道だった。最初に会った時のような敵意は感じないが、あの時の決闘を思い起こさせる。

 道中、以前のように無言で歩いているのではなく世間話をしているのだが、一体この先に何が待っているのだろう。


 ダンジョンの一階層へと続く、ブラックホールのようなゲートをくぐる。


 少し歩いて、森の中の開けた場所で立ち止まった。


「レオ?」


「頼む。ボクと剣の稽古、いや、練習に付き合ってくれ」


「俺なんかでいいのか? 騎士団には他にもっと腕利きが……」


「正直に言おう。騎士団の協力は得られないんだ。ボクは強くなって……兄に勝たねばならない」


 レオは真剣だ。

 確かレオの兄は騎士団の団長で、非常に腕が立つなどと言っていた。だから兄が所属する騎士団の力は借りられないということなのだろうか。

 それに、何かを成す為に強くなりたいらしい。俺も自分の事をひた隠しにして生きている手前、ここは何も聞かずに協力しよう。アルトナー姉妹に関わると決めた以上、彼女達の周囲の関係も大切にしなければならない。


「わかった。付き合うよ」


「恩に着る。早速だが――――」


 レオはアイテムポーチから木剣を二本取り出す。俺はその一つを受け取り、構える。

 剣道や居合道の経験など俺にはない。ただ、これまでゲームで培った経験と超人的な動体視力がある。

 モンスターは大きい物から小さい物まで、その他対人戦も沢山やってきた。

 打ち合うだけでもレオに得られるものがあればいいのだが。


「来いよ」


「その前に。隙があったら遠慮なく攻撃してくれ。では、始めるぞ」


 木剣を胸の前で構え、素早いステップで俺に接近するレオ。そして力の限り振り下ろす。騎士団独自の型なのか、素人目に見ても動きは綺麗で無駄がない。

 そんなレオの木剣を受け流し、一歩後ろに下がる。


 レオは追撃してこない。


 今度は俺から仕掛ける。

 レオの動きを真似た動作で近づき、正面から木剣を振り下ろす。彼の打ち込みより多少速くて重い一撃をお見舞いする。


「くっ!」


 レオは木剣を横に構えてガードする。だが重い攻撃に耐えられなかったのか、剣先は下に傾き、俺の木剣は受け流された。

 一歩下がり、レオを手招きすると、攻撃を放ってきた。


 それからしばらくレオの猛攻が続く。

 薙ぎ、払い、それらを全て見切って、受ける必要のないものは屈んだりして避けた。その途中も隙を見つけたら木剣で軽く突いていく。

 レオの攻撃を受けきったら、今度は俺が攻撃へと転じる。レオが反応出来るギリギリの速度で打ち込むのだ。


 この調子で俺のスピードと高威力の斬りつける攻撃に慣れたなら、いずれは常人の動きが遅く、軽く感じてくるだろう。

 細かい技術を教えることは出来ないが、レオの基礎能力は確実に伸びる。




「ハァ、ハァ、ハァ――――」


「これくらいでいいだろ」


 時間にして十五分程、俺達は打ち合った。一瞬でも集中が途切れると俺の攻撃は防げない。それを分かってか、気を抜かず集中し続けたレオ。

 量より質だ。密度の濃い練習が大切なのだと俺は思う。オーバーワークだけは絶対にやってはいけない。


「ふぅ、ありがとう朔夜」


 額の汗を拭い、薄笑いを浮かべるレオ。手応えがあったようだ。

 それにしても濡れた前髪が額に張り付いているのに、なんなんだこの爽やかさは。俺が汗をかいたら濡れた野犬みたいになるのに対して、レオは清涼飲料水のCMのようだ。


「まだ終わりじゃない。こっちだレオ」




 ダンジョンから出て、アルトナー家の方角へと進む。その途中にある大通り側の公園へと入った。


「レオ、この木にぶら下がって懸垂をするぞ」


 公園の奥にある林の中から一本の木を選ぶ。


「えっと、朔夜これは……」


「基礎トレだ。お前の攻撃は軽い。筋肉が無いからだ。だからここで、ふん、筋トレ、を、ふん、するんだ!」


 俺は早速手頃な枝にぶら下がって懸垂をする。


「君もやるんだね……」


「当たり前だ! 俺も筋肉が欲しい!」


 ハァ、とため息をついてからレオも懸垂をし始める。


「んっ、んっ」


 男にしては声が高いレオ。

 もれる吐息もなんだか色っぽい。だんだんこいつが可愛く見えて……。


「いかんいかん、集中集中!」


 視界に入るのは上下運動するレオ。血液が顔に集まっているのか頬が赤い。

 そんな彼を見ていると、ちょっとした嗜虐心が湧いて来る。

 俺は懸垂を中断してレオに近づいた。


「どうしたんだ朔ぅううっ!」


 レオは破顔し、声を荒げた。


 両手を上げている彼の脇腹を人差し指でつついたからだ。


「い、いきなり何をっ、くぅううっっ!」


「そうだ。どんな状況であっても目の前の事だけに集中するんだ」


 レオを応援したい気持ちと意地悪したい気持ちが複雑に絡み合った結果、俺は両方を尊重することにした。そこに丁度、ミアがレオの弱点だと言って攻撃してたのを思い出したのだ。

 やらない手はない。この、綺麗な顔を吹っ飛ばしてやるぜという気持ちでレオの脇腹を突く。


 こんな状況でも懸垂を止めないレオ。途中で投げ出さない、騎士道精神とやらがそこに見えた気がした。


「あと十回だ」


「ん、くっ、んっ……」


 脇腹をつつくたびに色っぽい声が漏れ、頬を赤らめるレオ。

 なんだろう。男同士だというのにレオから目が離せない。


「あのさ、ウチ屋上あんだけど……」


「きゅっ、さんじゅっ! ハァ、ハァ、終わったぞ。次はなんだ?」


「……いや、あ、ゴホン! 次は腹筋だ!」


 日が落ちるまで俺とレオは筋トレをした。途中おふざけも入ったが、基本的には真面目にトレーニングをした。

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