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エンジェルゲート  作者: マーティー木下
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第4章ー19

 だからこの作戦はレミ自身も囮。彼女にはもう一つ駒があるではないかーーレミの部下である天使ミカ。


 本命はもう一人の天使を使った二重の奇襲だろう。いや、本命というより狙いはその奇襲と、イワンの力のもう一つの弱点をつく事だろう。


 イワンの弱点ーーそれは感情を媒体に力を使えるのは一度に一人までという事。複数の敵と戦う事に向いていないのだ。


 イワンは悪魔となり強大な力を得た。けれどその対象が一人という事に変わりはない。  


 だが、今のイワンには鋭利な刃物をも凌ぐ黒い爪、かつてとは非にならない程の瞬発性、圧倒的な肉体の戦闘力がある。現にあのレミの攻撃も不意打ちでもなければ擦りもしなかったではないか。しかし攻撃を受けた際は簡単に爪を切り落とされたのも事実。


 つまり初めの奇襲、もしくはそれ以外のレミの策を防ぐ事がこちらの勝利。その後はいくら二対一に持ち込まれても、


 今のオレの敵ではないのだ。


 


 カン、カン、カン。


 廊下に響く、けれど辺りに聞こえる事のない音が響く。イワンの剝き出しの黒い獣にも似た爪は廊下を歩く度に金属のような小気味のいい音を出す。そして渡り廊下を渡ったすぐ隣の教室にいる誰かにとって、この徐々に近づいている音は警告音や死へのカウントダウンにも等しいだろう。相変わらずそこに天使の反応はあり続けており、その場から動く気はない事が窺える。


 少年、今彼はどんな顔をしているのだろうか。


 恐怖?


 絶望?


 まだ蛍の死を嘆いている?


 それともオレへの復讐に燃えているのだろうか? いや、そうでなくては困る。


 そうでなくては、僕の作る悲劇は完成しないんだよ。


 渡り廊下を渡り切ったイワンは例の教室の前に立つ。ニヤリと卑下た笑顔を浮かべて、


 彼は扉を開けずに通り抜けて教室の中へと侵入した。


「イワン」


 やはり教室の後方、出入り口のすぐ裏に隠れていたのはーー少年、増田輝希だった。


「やあ、少年」


 ぎょろり、とした無数の目全てで少年を見下ろす。その瞳に写る彼の姿からはもう恐怖心は感じなかった。だがそこにあったのは復讐、殺意といった黒い感情でもない。もっと強い意志、前へと向かう覚悟、イワンを倒し蛍の事に決着をつけ、そして未来へと進んでいくという光を心に宿していた。


「いい、いいぞ、その明日を見る瞳、実に殺しがいがある……そして、」


 今すぐにでも殺してやりたい。その強い光を絶望に歪めたい。だが、その前に殺さなければいけない者がいた。イワンは後ろを振り返る。するとそこには、


「来ると思っていたよレミ」


 彼女が潜んでいたのは校舎二階の外壁だった。レミは廊下の窓ガラスをまるでそこに何も無かったかの様に通り抜けて校舎の中へ、そして勢いはそのままに扉を透き抜けてレミは教室に侵入。彼女はイワンの背後をとった。だがそれは完全にイワンの予想通りの展開だった。


「クッ!」


 短く呻き声を上げるレミ。ペーストを出す前にその箱を、彼の長い爪にレミの右手ごと押さえ込まれてしまう。そしてこの次の展開も、イワンの予想の範囲内だった。


「そしてミカもな」


 天井からの奇襲、突如現れたミカによりイワンの禍々しい頭部に振り下ろされる右拳。だがそれは空振りに終わり宙を切る。予測をしていたと言う事もあってだろうか、イワンはミカの攻撃よりも早く後ろへ跳躍し三人から距離をとる。


「むっ」


 眉をひそませ不快感を露にするミカ。真上の三階から床を潜るように透き抜けて来た彼女は二階に着地した。


「レミちゃん、どうやら読まれていたようですね」


「ああ。そのようだな」


 口ではそう言っているものの二人の感情から動揺は見られない。やはりこの奇襲はただのおまけといったところか。イワンはニヤリとした笑みを浮かべてレミの感情を逆撫でするように、


「ふふ。レミ。お得意の不意打ちはもう終わりかな?」


「別に得意としているわけじゃないがな……それにそれが目的じゃないさ」


「だろうな。狙いは二対一に持ち込む事そのものだろう?」


 ピクリ、とレミの感情が反応を示す。イワンは図星を指したと確信して、


「オレの力は最大一人までしか対象にとれない。確かにこうした多数を相手にするのはむかない」


 以前ならばこの状況はイワンにとっては警戒すべきところだっただろう。しかし今は違う。


「だがな、この悪魔となった事で得た肉体、俊敏性、殺傷能力、例え能力を使えなくともお前達二人に負ける事はないんだよ」

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