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エンジェルゲート  作者: マーティー木下
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第4章ー2

 珍しく言い淀む鈴木。そして彼は少し間を空けてから、


「死亡報告にはこう記されている。悪魔イワンに殺されて死亡とね」


「イワン! それに悪魔ってとこは!」


 悪魔。天界ではそれは天使を辞めたものの総称。悪魔、それは地獄の果実に、


「そう手を出したのだよ。彼は地獄の果実にね」


 地獄。それは天界の中央より遥か西方にある区域。そこは名前からよく誤解をされるが、緑が生い茂り木々の生える空気の奇麗な森林ではあった。ではなぜ地獄と呼ばれるのか? それは、


 そこは彼女達天使を狂わせるあるものが生まれる場所だからである。それは地獄の果実。そしてその正体はーー人の記憶であった。


 人間の魂は天界へと運ばれた後、蓄えていた記憶を全て剥がされリセットされるのだ。その後リセットされた魂はいくつかの工程を経てまた別の命へと吹き込まれていく。だがここで厄介なのがこの剥がれ落ちた記憶だ。これは自然に消滅するのを待つ以外には天使達にも消す事は出来ない。そして一日に数多と生まれる記憶を集めておく場所ーーそれが地獄と言われる所だ。


 だがこの記憶という物はただで朽ちてはくれない。想い出の塊故の生への執着なのか、真意はわからない、だがとにかく人間の記憶はもう一度形を変える。


 そう、魂からはがれ落ちた記憶は果実へと姿を変えて地獄という名の森林にその実を宿すのだ。


 種類にもよるが果物というのは誰かに食べてもらうため、そしてそうして子孫を残すために、より美味にみせようとする。この地獄の果実には種などない。しかし、誰かーーつまり天使に食べてもらうために彼女、彼達を誘惑するのだ。そして、その誘惑に負けたものは人間の記憶の断片を手に入れ、天使である事をやめてしまうのだ。この果実に手を出してしまうものには、人間への憧れが強い者、知的好奇心が強い者などがあげられる。つまりイワンもその一人だったという訳だ。


「つまり奴は悪魔に成り下がり、何らかの理由で赤土蛍君を殺して、装置の隠蔽をした。我々の目をくらます為にね」


「そして自分の手で生返らせたという事ですか」


「うむ……」


 彼女の身体は確かに死んでいた。なのにその身体が動いているのはイワンの力が関係しているのだろう。


「馬鹿者が」


 レミは吐き気と怒りを覚えた。イワンは彼女を殺した。そして自分の力で彼女を生返らせた、ゾンビとして。そしてそれをどこかで見ているというわけだ。完全な悪趣味、どんな理由があろうと許せるはずがなかった。


「長官、報告ありがとうございます。私は蛍を急いで探してきます」


 机から立ち上がるレミ。そんな彼女に鈴木は、


「うむ、大至急頼む、イワンの行方は未だつかめない。だがその赤土君の力を借りれば発見は用意なはずだ」


「その際イワンの方は、処分しても?」


 処分。悪魔になった天使はもう元には戻れない。つまり処分とは死を意味していた。


「構わん」


 果実に手を出してしまったのは完全な自己責任だ。だから彼女等は容赦しない。たとえ元同僚でも。


「了解、では」


 レミは回線を切った。そしてすぐさま天使状態へとシフト。見た目は和服のようなあの服のままで変化は特に見られない。だがこれにより彼女は下界において、触れるもの、触れないものを自由に選択できるようになったのだ。


 彼女は不可解な事に洋室の地面へと、まるで水中を潜るようにその中へ沈んでいく。


「ミカっ」


 彼女が出た場所は丁度リビングだった。そこには食パンにマーガリンを塗るミカの姿。彼女はレミが天井から現れた事に動揺。テーブルにつきながら椅子をガタッとさせて、


「レミちゃん! ビックリした! どうしたの急に!?」


 と言ったが細かい事を説明している場合ではなさそうだ。


「話はあと回しだ! 増田はどこにいる!?」


 強引にこちらの質問をするレミ。だがミカはその雰囲気で事態の緊急性を察したらしく、


「増田さんですかっ! 彼なら今朝出かけましたよっ」


「何をしにっ?」


「え、蛍さんとでかけるって言ってましたよ」


 蛍。という事は二人は今一緒にいるはずだ。なら好都合だ。早くこの事を増田に知らせて、そして蛍を保護しなければ。

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