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近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
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端末

 もはや端末のメーカーはニホン製など存在しない。国産ブランドを冠したモデルはあるが設計から製造まで諸外国任せだ。OSもステイツからの借り物で、見た目(シェル)だけローカライズさせて国内法準拠モデルに仕立てている。使える無線チャンネル、使える無線出力。GPSで取得した位置情報からそれぞれの国家、国内法に合わせたセッティングに自動で切り替わる。

 自分が使っている端末(デバイス)も旧世代の中華製。ニホン自治区向けのOSチューンを施したもの。ハードウェアはグローバル版とまったく同じだ。使うだけなら問題ない。

 ニッチな機能要求は適当にごまかして妥協の産物でなんとか形をたもっている始末。メーカーは「小さな市場のくせに要求だけは一人前だ」と愚痴をこぼす始末。それでもトップシェアを取れないブランドだからかミッドクラスの端末をニホン向けにチューニングして売ってくれている。ニホンの中、上流階級はほとんど隣国のハイエンドを使っているのだろう。もしくはOSメーカーの推奨高級端末。どちらにしろ製造拠点はほとんど極東アジア。

 自分みたいな裏家業の人間には手が届かないからしぶしぶ安物を使ってるのが現実。もっと安い端末もあるにはあるが、連絡と情報収集と一部の電子マネー取引にギリギリ使える程度で、いざという時には使い捨ててもさほど痛くないから仕方なく予備として持っている程度のものばかり。通信の機密性に問題がありそうだから、本当にいざという時しか電源を入れることはない。

 裏仕事(ラン)のメイン端末に使うには心許ない性能しかない。場合によっては数世代前のハイエンドに近い中古端末の方が高性能だったりする。それを修理して使う方がよほどマシだ。少々かさばるモデルが多いし数年落ちのバッテリーパックは交換が前提だが。

 しかしそういったものを仕入れて時間貸しの分散クラウドシステムにつなぎ、その処理能力に任せたターミナルとして使うと途端にやれることが指数関数的に増える。もちろん分散クラウドシステムを借りる金と痕跡消去の技術力があることが前提だ。

 技術屋は高性能だった型落ち中古端末をかき集めて独自の処理用クラスタとストレージをどこかのコンテナに構築しているという。裏で入手したオフグリッドソーラーパネルと衛星回線経由で独立した環境らしい。似たようなことは情報屋もやっているとかなんとか。

 自分は荒事メインなのでそういったことはなんでも屋任せだ。プラスティックで覆われたメタルフレームの遠隔システム処理がどうとか細かい事は分からない。技術屋に連絡が取れてスタンドアローンで動く戦闘用の遠隔義体(オルタボディ)が操作できればそれでいい。


「んで、今は何をやってるんだ」

 何でも屋に問う。

 何でも屋は作業台の前に座り、幾多の細かい電子パーツを弄っている。


「予備の端末を作っておこうかと思ってね」

 そういって電子部品のモジュールを一つ見せる。


「マザーボードか。産業用かなにかの?」

 適当な思いつきを口に出す。


「あたり。教育用の端末モドキだ。これにモニターと入力デバイス、バッテリーをつないでOSを書き込めばそれなりに動く端末のできあがりだ。簡単だろ?」


 俺にゃよく分からないがそういう物なんだろう。警備員をやってた時も似たような小さい端末を胸ポケットに入れてヘルメットのバイザーにいろいろ表示をさせていた。それの自作版だと思っておこう。これ以上の理解は不要だ。肝心なときに使えりゃそれでいい。


「予備ねえ。中古端末じゃだめなのか?」

 疑問を素直に口に出す。


「市販品は通信系の細かい部分に設定の限界があるからな。盗聴防止に一般的じゃないもんを使うのさ」

 今度は別の電子部品モジュールと無線機を持ち上げる。

「普通は無線LANでデータやりとりをするが、その機能は物理的に潰して無線機でやりとりするんだ。非合法な周波数帯だから普通は使われていないし、この国じゃ港湾エリア微弱な短距離通信しかないことは分かってる。ゴタゴタがあった時だけこれを使って、あとは無線機だけ潰せば足はつかない」


 そんな簡単に行くか? 表情に出ていたのだろう。


「安心しろよ。コンテナの電波暗室でテストしてるし、周波数帯の使用状況はこの国の主要道路を走り回ってスキャン済みだ。中継器も自爆装置を仕込んである。自爆ったってテルミットで基板ごと燃やすだけだからバッテリーかなにかのゴミが燃えたとしか思われないだろうしな」


 何でも屋がニヤリと笑ってみせる。

 そんなに上手く行くもんかね、と思っていると。外から金属の擦れる音。この小屋の前に停車するトラックが一台。

 無意識に銃を手にしてドア前を映すモニターを見る。


 小僧がダンボール箱を抱えてドアの前に立っている。


「開けてやれよ」


 俺の肩越しにモニターを見たのだろう。何でも屋が口に出す。

 銃をテーブルに戻し、モニター横のボタンを押す。古臭いブザー音と共に電子錠の重い音。

 小僧は背中でドアを押して入ってくる。



「ただいま。言われてた物以外は全部金属屋売っちゃったよ」


 見習いの小僧がダンボール箱を置いて、中から金属の箱を一つ取り出す。


「なんだそれ?」


 すると今まで身じろぎ一つしなかったエンジェルパックがビクンと動く。


『なんだとは酷い言い草だね。それのおかげで私がトラックを運転できるんだから』


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― 新着の感想 ―
ご無沙汰しております、そして続きを楽しみにしておりました。 極東アジアの何処かで作っているという時代も、そのうち消えそうな設定のような気がしますが。 でも経済属国になる可能性だけは、まだ否定できないか…
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