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近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
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献体

 私はほぼすべてを失った。文字通り。遺されたのは頭部と胸部腹部、そして簡易な生命維持装置だ。補助記憶媒体も壊されたが外部記憶に個人名義で借りている外部サーバは残っている。それもあと二年程度で契約が切れる。資産のほとんどはそこに保存した情報と電子マネーだ。大した金額ではないが。情報のほうは使い方次第、売り方次第。

 企業に献体に近い形で売り払われた私とその身体は実験のために切り刻まれ最新を超えた試験的な技術に置き換えられ、減価償却が終わったと同時に取り上げられた。残ったのが人間を構成する必要最低限の部品だけ。自力で動けず、声も出せず。最初期から装備されて癒着で外せなかった古い通信機器のみ。それを使って意思表示ができる外部モニターが首から下げられタクシーに放り込まれた。


「で、お客さんどこまで? 一応会社払いで受け取ってるから無茶な距離じゃなければ好きなところまで乗せていくけど。誰か、どこかあてはある?」


『この住所まで。ダメだったら別の場所にしてほしいから、到着しても精算モードにはしないで』

 と言って車載ナビに直接住所を送る。


 頼れる人間はほとんどいない。受け取り拒否されたらどうしよう?

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