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近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
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用心棒の延命

 結論から言うと。

 俺の寿命はあと一年だった。


 こいつを延長するためにまだまだ戦わなくちゃならない。金が要る。そして俺ができるのは戦うことだけだからだ。

 金さえあれば代わりの内臓を買える。それまでは交換式のフィルターと電池のカートリッジをそれぞれ数年ごとに入れ替える。それもけっこうな値段がかかる。だが死ぬよりはマシだ。

 だから使用期限のある内臓で時間を稼ぎつつ金を貯め、時限爆弾を後生大事に抱えて生きなきゃならん。その事実を知った時のことを思い出す。


「痛みや不快感はあるかね?」


 ミハマのロゴが入ったアンプルを弄りながら技術畑、研究者らしい青白さと細さを標準装備した男がと問う。この陰気なヒシイ所属の担当医だ。かかりつけ医が向こう20年こいつだと思うと憂鬱になる。


「腹が減った」


 本能の欲求を口に出す。身体に痛みはない。鎖骨下のポートに刺さった点滴から鎮痛剤が逐次投入されているおかげ。


「それはよかった。食欲があるなら大丈夫だろう。代謝系が正常に働いている証拠だ」


 手にした端末を机に置いて、ベッドで寝転ぶ俺に向かい直す。


「これから年に一度、消耗品とバッテリーを交換すれば大丈夫。人工透析も必要ない」

 シェードグラスを拭きながら説明してくれる。


「けっきょくどこをどう弄ったんだい、先生?」


 これを確認しておかないと。退院時にでもまた説明してくれるんだろうけれど、やはり現状確認は必要だ。



「肺を新品の強化人造品に、心臓は型落ちだけど新品のやつ。腎臓は中古のリビルド人工品に交換。中古って言ってもベストセラーの定番品だから心配ないよ。堅実な製品を、ってあんたの相方が念押ししてきたからね。どうせうちの会社持ちなんだろ? テスト済みのいいやつを選んでおいたよ。

 定期交換が必要なのは年一でバッテリー。腎臓のフィルタは8年に一度、一つ12000ニューイェン、施工費用も入れると全部で128000。適合するかどうか分からない移植用の培養腎臓よりは確実だ。そちらの意向にそった施術。交換も次から3回の支払いはうちの会社持ち。いい身分なんだね。それとも相方が有能なのかな?」


 手腕を疑われるのは心外だとばかりの視線を俺に寄こす。俺はそんなに不機嫌そうな顔をしていたか?



 病院代わりの研究開発室を出てヒシイの関連会社のロビー。バッグの中身をあらためる。


 手持ちの(ポイント)はバッグに無造作につっこまれたシュリンク未開封のニューイェンコインと公共機関で使えるプリペイドマネーカード。

 着替え用か、未開封のパンツとTシャツに靴下が3セット。アウターにレインコートと作業ズボンにベースボールキャップ。それらが滅菌済みのステッカーがついたジップロックに詰め込まれている。

 そして鎮痛剤やら術後の定着剤やら。毎日腕に貼ったりポートから入れたりと面倒くさい。


 武器はどれだ?

 鍵付工具箱に入った安い年代物の折りたたみナイフに中古らしきコンパクトハンドガンと予備弾薬。ハンドガンのほうは銃把に巻いたウェットグリップがボロく劣化している。サビこそ浮いていないがどこに飛んでいくか、もしかしたら暴発もありそうな怪しい代物。ホルスターなんて気の利いたものは入れてくれなかったようだ。

 工具箱の底に電源の入っていない端末が一つ。メモが貼ってある。「電源投入は退院三日後以降。連絡を待て」


 これらを持って国を一つ跨がなきゃならない。しかも追跡されている前提で、だ。防犯カメラに写らず、車載カメラに写らず。地上を歩いたら衛星画像にも警戒しなきゃ。いますぐどうこうなるってもんでもないが、丹念に画像とデジタルマネーのメタデータを追いかけられたら居所はすぐにバレるだろう。


 さて、どこでどう時間を潰すかねぇ。

 


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