撤退
よーし、荷物は届いたぞ。
用心棒、退け!!
生き残ったドローンとヒシイのロボ兵士たちを重武装兵にけしかける。同時に用意しておいた煙幕を張る。ついでだ持ってけとばかりにレーザー水準器がランダムな光を放出。数秒後に爆発。
ヨロイに襲いかかったロボ兵士が次々と自爆。破片が敵兵士に降り注ぐ。
あれは隙間にベアリングボールを仕込んでやがったな。なんでも屋、一言もそんなことを行ってなかったのに。ARに残ったマガジンを捨て、最後のマガジンに入れ替え、全て吐き出させる。
転がりながら先ほどカバーにしたオートに乗り込む。滑るように走り出し、あたりをIRマスカーと煙幕がホワイトアウトさせる。
こんな状況でオートが自律走行できるのかと思ったがどうも問題ないらしい。都市部だったおかげか道路に埋め込んだビーコンを参考に指示されたコースを滑る。
毎秒、端末のプログラムがルートを変更し、何回か乗り換え。数秒後、トレーラーと合流。オートはそのまま別の場所に向かう。これも自動で何回も目的地を変えながらどこかに向かうはずだ。数分後には焼けた残骸だけが発見されることだろう。
「逃げ切った、のか?」
なんでも屋に問う。
「安心しな。技術屋が天の眼に偽画像を見せてるからつけられてるってことはないぞ」
トレーラーはそのまま企業国家を二つまたぎ、コンテナ街に入っていく。
ここは別の企業国家。といっても先ほど戦った企業国家の別都市だ。まさかの灯台もと暗し。いまごろは残骸からあたりをつけてヒシイの企業国家か、その子会社の企業国家に逃げ込んだと思っていることだろう。
「なあ、本当にここで大丈夫なのか?」
「大丈夫さ。トレーラーの出所も元々が通販企業の下請け配送からかっぱらってID偽装してあるからな。それに数も多く出てるモデルだ。追えやしない」
と情報屋。
「潜入屋はどこだ?」
「30分ほどずらして入国予定だ。元々の企業監査スケジュールがそうなってるからな。そっちから足がつくってことは、まあ数日は大丈夫だ。元のIDの持ち主は今頃身元不明の死体として別の国で見つかってるんだろうけどな」
そこらはさすがの情報屋。IDロンダリングもしっかりしてやがる。
「元々のIDの痕跡とかは大丈夫なの?」
弟子が当然の疑問を投げる。
「そっちも安心しな。ダミー代わりに適当なIDレスを雇ってそれらしく生活させてる。そいつらのIDも書き込み済み。しばらくは見つからんさ。というわけでわしと技術屋、潜入屋以外はID書き換えの時間だ。おまえらの金は事前に換金済みだから困らんはずだ」
この古狸は敵に回したらヤバい。
「数日後には報酬を受け取って元の国に戻れるんだよね?」
技術屋が問い。
「もちろんだ。報酬を受け取るまでは帰るつもりもないがな」
トレーラーに積載されたコンテナがノックされる。監視モニタにはゆらめく影。
「入りな」
外部スピーカのボタンを押しながらなんでも屋が答える。
陽炎がドアを開け滑り込んだと思ったらドアが勝手に閉まる。あいかわらず不気味だ。
揺らめく影がジワジワと人型に形を変え、特徴のない人物の姿に固まる。
「ブツは手に入ったよ。あとは用心棒の旦那の手術だけかな?」
戦闘に必死で忘れていた。面倒なことが残ってやがる。ヒシイの出張サービスを受けないとな。




