闇医者と始末屋と小娘
六割の闇と三割のブルーグリーン、そしてコーションを告げるイエローとオレンジの明滅。
それが視界を埋め尽くす。
電子街が放つELライトよりはずいぶん落ち着いた世界だが、それでもひどく視界にうるさい。
廃墟同然の空きビル、その一室。コンクリ打ちっ放しの殺風景の中。部屋の隅にターポリンで区切られたエリア。隙間からはゆるく空気が流れ出している。陽圧が維持された簡易の滅菌ルーム。
「じゃあ埋め込み機材をスキャンしますね」
闇医者が一言。小娘が専用ベッドに寝かされている。薬が効いているのか、ピクリとも動かない。
センサーが山と詰め込まれたスキャナリング。回転しながら頭頂部からつま先に向かって滑る。
数秒後。
カツカツとモニタを叩きながら。
「これシールドが効いてますね。チップも読めないし機能までは分からないな、こりゃ」
「技術屋に分析させろ」
「すでに分かる分のデータは回してますよ。数日どころか数週間でも終わらないでしょうけどね。それより端末との通信を読んだ方がマシかもしれません」
「なんかある気がするんだけどな。バッテリーだって市場に出回って一年かそこらだろ。それが二年前から埋まってるんだ」
「それは……確かに奇妙ですね。企業が開発中だったサンプル品なのかな」
「ミハマがその手の機械を扱ってたって話はないよな?」
「自分が知る限りは。あそこはバイオケミカルか医療系がメイン商材でしょ。新規に手を出したっていうならエンジニアの動きがあるはずですし。そういうのは情報屋にでも聞いてくださいよ。ミハマの薬品は使ってますけど専門じゃないんで」
「一応聞いてみただけだよ。……知り合いの情報屋も技術屋も連絡がつかねえ。ニュースを流してくれ。なにか事件があったらそっちに出張ってるかもしれん」
だまって壁面モニタをつける。速報として通販会社の社屋で戦闘のニュース。
「これに絡んでるのかね。ちょうどあいつらの活動範囲だ」
「ふたつ隣の国の事件でしょ。顔の広いことで」
続報はない。インピクチャーでなにかが爆発するシーンを繰り返している。
医者がひとりごちる。
「……そういえばミハマの提携先に、たしかヒシイ系列の医療デバイス専門があったな。埋め込み時の適合用薬品がミハマから提供されてたはず」




