廃品回収業
今日もゴミを拾う。ゴミと言ってもまだまだ使えるものばかり。銅線なら1kgあたり6ニューイェン。アルミだと10kgで8ニューイェンになる。
これがけっこうバカにできない。1ニューイェンで一食分相当。一週間分の食費が手に入るのだ。
家賃? そんなものを払ってるやつはこんな所にはいない。かっぱらってきたペーパーコンパネで勝手に自作した家を持ってる。勝手にと言っても好き放題できるわけじゃない。
地主に顔をつないで、年の始めに上がりをいくらか持っていって、やっと場所を借りられるのだ。端なら一坪1ニューイェン。雨風が入らない場所なら20ニューイェン。若けりゃ高くなるし、年がいってりゃ安く済む。
寝るスペースに荷物を置くスペースでだいたい一坪。内側に行けば行くほどあったかい。断熱も考えなくて済むから広く作れる。夏場はきついけどな。
でも寒いと死ぬ。
電気代は別。地主に頼んでデバイスを充電させてもらう。元はどっかから盗んでるんだろうけどさ。こいつがなけりゃ金属も売れないし、日雇いも受けられない。まさに生命線なんだ。
ここに落ちてくるやつはどんなやつでもデバイスだけは持ってる。前科持ちでもな。
これを持ってないやつは何かを売ってでもまず買うのがデバイスだ。次に社会保障アカウント。前科持ちや借金持ちはこれを買って履歴を消す。
カネ?
稼げばいいじゃねえか。地主の紹介してくれる仕事なら支払い前に会社が消えるってこともない。働けばその分払ってくれるよ。
中には一カ所に場所を定めない、渡り歩く連中もいる。建設現場の日雇いだと最前線はコロコロ変わるからな。昔は俺もそうだった。
ほかにもしがらみを作りたくない連中なんかも渡り歩く。連中に言わせりゃ「めんどくさい上下関係があるなら会社員と変わりゃしねえ」だと。正規雇用じゃねえだろうに。
きょうび、正規雇用がどれだけいるんだよ。先の見えねえ派遣職員ばっかりじゃねえか。
なんにせよここにいてそれなりに働けば普通に食えていけるんだ。ちょっとばかし物足りないかもしれないが。
病気はこわいよ。でもなるときにはなるんだからしかたない。
金をためておけば闇医者にかかることもできるけどさ。死ぬときには死ぬし諦めてるね。
おかげで身体はボロボロ。義体化する金なんかないから指も何本かは失ったし、自前の歯は半分抜け落ちてるけどな。