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近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
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頭痛持ち


 頭が(いて)え。

 頭痛を抱えて身体を起こす。別に二日酔いって訳じゃねえ。ドラッグの副作用でもない。ただの持病だ。

 事故で大手術を受けた際になにかミスがあったのか、それともよくある副作用なのか知らないが、頭痛持ちになっちまった。


 原因を調べてもらっても不明。別の病院で精密検査を受けても不明。まだまだ人間の身体には不明な部分が多いらしい。これ以上の検査は保険適用額の限界になりますよ、と宣告され、諦めざるを得なかった。


 鎮痛剤を飲む。これでしばらくはマシ(・・)になる。この鎮痛剤も保険適用外。なのでバルクで買って安く済ませている。

 ギシリと安いベッドが音をたてる。クスリが効いてくるまでの不機嫌な時間も毎朝のことだ。シャワーを浴びて、着替えて。ポケットには端末(デバイス)と鎮痛剤を小分けにしたオレンジ色のケース。



「あいかわらずひでえツラしてるな」

「うるせえ、事故からこっち、このツラと付き合ってかなきゃいけねえんだ。代わりたいか?」

「お断りだね。不機嫌にしか見えねえんだ。もうちょい愛想ってもんを持てねえのか」

「現場に表情筋を置いてきちまったからな。そりゃ無理だ」

「ぬかせ。今夜、あいてるなら飯でもおごってやんよ。それで機嫌を直しな」

「機嫌は悪かねえが、おごってくれるならありがたく。でも酒は()まねえぞ」

「俺もしばらくんでねえ。うまい酒を出してくれる店がここらにゃねえからな」


 軽口をたたきながら職場のおっさんと始業の準備だ。



「だからB定食にしとけって言っただろ」


 おっさんがこっちを指差して片眉を上げる。うぜえ。


「いいんだよ、たいして量を食えねえんだから。おごりだからって無茶むちゃな量やバカ高いもんをたかられるよりマシだろ?」

「そりゃそうだけどよ。せっかくのおごりなのに値段が安い方でいいのかよ」

「いいの」


 割り箸を割りながらこっちにツッコんでくるおっさんを片目にこっちはプラスプーンを取る。


「今日は洋食の気分だったんだ」


 まだ()の扱いに慣れていないというのもあるけれど。


「ならいいんだけどよ」


 どうも職場では事故以来、腫れ物に触れるような扱いをされているが、このおっさんだけは態度を変えない。こっちも気楽だからいいんだけれど。

 ほとんどロボットにしか見えない完全義体になった女の私を、生身の頃と同じように接してくれるのは、このおっさんも義体化率が高いからだろうか。


「うちの娘も内臓疾患でずいぶん前に義体化してるんでな」


 と聞いたのは翌朝のことだった。


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