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近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
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未登録銃メーカー

 相変わらず拳銃をポケットに忍ばせ、ミリタリーコートを羽織って街を歩く。


 けっきょくあの会社は辞めてしまったが、街には居座っている。

ビルのオーナーが死んで、継ぐやつがいないとなったときに名義を貸して居座った。

 国に取られるよりは、と地域の人間が手回ししてくれたのだ。自分もせっかく設置したセキュリティを撤去して引っ越しするのが面倒くさかったというのもあるし、他の住人も引っ越したがらなかったというのも大きい。


 今は加工機械を買って未登録銃を作ったり、機械類を買い取って転売したりと小銭稼ぎ程度の仕事をしてつつましく暮らしている。


 今持ち歩いている銃も流出未完成パーツを自分で組み上げた一丁だ。


 加工元のフレーム内側は全部作業済みだが、あくまで製造工程ではね(・・)られた不良品あつかい。実際は流出品にするためにわざと作業途中で別の箱に放りこんだんだろうな。全体の数パーセント程度の不良率なら、まあ納得できる範囲。特に品質管理にうるさいメイドインジャパンならちょっとの傷やズレでもアウトだ。

 そういう言い訳で流出品をでっちあげてアンダーグラウンドに部品を横流しして稼いでいるんだろう。下請けの工場ならよくあること。一昔前の中華工場かと嘆く向きもあろうが、コピーメーカーよりはよほど良心的ってなもんだ。


 愛用品はM1911系のサブコンパクト用フレームに三インチほどのバレルを乗せて全長18cm以内に抑えたモデル。

 スライドは四角く、削り出す前のまま。サイトもなし。角をちょっと削っただけの金属ブロックだ。グリップも短く、人差し指以外は指二本と半分のサイズ。弾一発分くらい短くなっている。9mmモデルなので八+一発のキャパシティ。グリップを細く握りやすくしたかったのでダブルカラムのフレームは選んでいない。クラシックでシンプルなサブコンパクト1911クローン。


 ポケットの中で気楽に持ち運べる銃で八発装填済みというのは十分実用的だろう。他の連中はグロックだのなんだのと、ポリマーフレームの軽い銃でダブルカラム、一七発も持ち歩いているが、護身用途ではそんなに撃たないだろう。ヤクザやチンピラの抗争でもあるまいに。


 重くて細くて小さい銃。メーカー純正のちゃんとしたものを買えば実売1000ニューイェン程度の銃だが、パーツで集めて自分で組めば500ニューイェンを切る。もちろん手間はかかるし、パーツのすり合わせやこまかい調整も必要。時間をかけるか金をかけるかのトレードオフってやつだな。

 元から機械いじりは好きな方なのでパーツから組むほうを選んだ。フレームも不完全品を買うことで登録を回避する意味合いもあるけれど。工作機械が必要になるのでマニアか凝り性(アーティスト)気質のやつばっかりしか手を出さない。もしくは登録したくない犯罪者だ。

 犯罪者が未登録銃を気軽に買えるか、というと難しい。ショップは基本的に部品は売ってくれるけれど組み込みとなるとそれなりに高い技術料を取る。完成品のほうが安い。それに未登録フレームへの組み付けはやってくれない。

 同じ型の登録銃を持っていてスライド側だけ組んでもらうというのも可能なのだろうが、やはり高い手数料を取る。それに作業が発生したら記録を残す。もし犯罪に使われたら売ったがわもそれなりに面倒くさいことになるからね。


 中古銃の廃棄は登録してあるフレームを専門の工場で壊して廃棄証明をもらわないといけない。中古で売ることも可能だが、ショップにはしっかり記録が残る。


 アンダーグラウンドマーケットでも扱うのは基本的にパーツ単位。出所の怪しいパーツでも普通に売ってくれる。完成フレームを除いて。完成したフレームを売る場合、ID登録の義務があるし販売免許が必要になるのだ。

 なので未完成フレームの出番。80パーセントフレームとか呼ばれる代物だ。鉄の塊から削り出した謎の部品扱いだがピンを刺す穴などがわずかに未加工となっている。これを自分で穴をあけてやればパーツが組み付けられる。そして銃器の自作は「自衛する権利」(修正第二条)に関わる法律によって、この通販企業国家では合法。ステイツ出身企業の多くがそれに準拠しているようだ。


 厳密にはステイツにある会社とは別会社になっているらしいが、詳しいことは知らない。要は「自衛のために銃を撃たせろ、警察に頼むつもりはない」ということだ。そして城下町全体が企業の土地ということになっているため、自前の警察組織を持っている。あくまで警備会社という(てい)だが。

 なので庭で銃をぶっ放しても「気をつけてね」くらいのセリフで済んでしまう。路上強盗に襲われそうになって銃を撃って殺してしまっても、数メートルごとに設置してある防犯カメラの映像をチェックして正当防衛だと認められれば「大変でしたねえ。怪我けががなくてよかったですね」で終わり。特に相手がID無しだとなにもなかったことになる。そして多くの住民はIDをちゃんと持っているし、多くのチンピラはID無しか密入国で仮IDしかもってなかったりする。


 いいかげんなものだが、市民IDを持っている人間としてはありがたい。誰はばかることなく自衛できるのだから。


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